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短編

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2023年3月の記事一覧

大人のための少年漫画

 第7ゲーム。もはや鹿島勇気は絶対絶命だった。あと一つポイントを取られたらそこで終了だっ…

14

何を見ても何も思い出せない

 線路の向こうに見える海はあなたにとっては大事な思い出かもしれない。  だけど私にとって…

18

俺と付き合ってくれ

 と私の隣の同僚が私の目を見つめて言った。彼の目の中には私の顔がハッキリと写っている。彼…

12

読者感想文

 中学三年の頃国語の授業で読書感想文の発表会があった。教師が宿題として提出された感想文の…

26

抱一と北斎

 年号さえも忘れるほどの遠い昔。江戸時代も半ばを過ぎた頃の江戸吉原である。夜を迎え活気づ…

18

無駄にシリアス

 昔ある女がいた。と話を始めなきゃいけないのは悲しい事であるし、辛い事である。その女は早…

17

花山さん

 花山さんはとある田舎町の銀行の出張所の受付をやっている。花山さんは非常に優秀な女性で彼女がいなければ銀行は回らないと言われているほどだ。いや、言われている程ではなかった。実際にこの出張所は彼女一人でどうにか持っていた。勿論花山さんの他にも行員はいる。だが皆彼女のようにお金を数えられず、書類も作成できず、それどころか電卓さえ打てなかった。銀行でも花山さんが一人で働いているそばで一日中職場の同僚同士で、あるいは順番を待っている客たちと話しているような有様だった。こんなことじゃこ

世界はシティポップに夢中

 改めてここに書く必要はないが今世界中の人々がシティポップに夢中になっている。なぜ世界の…

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卒業シーズン

 もうすぐ高校を卒業する。卒業したら大学に進学するためにここから出て行かなくちゃいけない…

11

小説家

 別に自慢するわけではないが、私の生まれ育った環境は非常に文化的に恵まれていた。大手出版…

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グーグルには絶対に載らないうどん屋六選

 私が無類のうどん好きである事は普段私の記事を読んでいる人ならとっくにご存知のはずだ。こ…

51

ある本の物語

 僕の親はいわゆる転勤族でしょっちゅう引っ越しをしていた。小学校では四回ぐらい引っ越しを…

25

核融合

「もうくだらない対立なんてやめて一つになる事を考えるべきなんだ。原子力エネルギーだってだ…

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カビの生えた自画像

 久しぶりに見た亡き友人の未完の遺作は驚くほど変わっていた。その絵は彼の自画像であるが、絵の中には白カビらしきものが生えていてそれが顔らしきものを形作っていた。吹き出したようなカビはまるで生前の彼の無表情な顔を荒々しい筆のタッチを思わせるようにキャンバスの中をうねっていた。この絵の作者であり我が友人ヨハン・クラウスは十年前に自殺した。自殺の理由は理想と現実の相剋といったありきたりで古めかしい理由だ。彼は画家になりたかったが、今君たちが目にしているこの自画像が示すように才能など