マガジンのカバー画像

流転の宴 (るてんのうたげ)

43
身近な自然と日々の生活で感じたことを記しています。ふとした合間にご覧いただければ幸いです。
運営しているクリエイター

#詩

邂逅

邂逅

一塊に身を潜め
無明を飛翔するあなたは
此岸に降り立つ

月明かりの砂丘に
目覚めた佳人の
緩やかで誇らしい歩み

見上げた無辺の星空に
再びの変転を映し出す

マダガスカルジャスミン

マダガスカルジャスミン

窓辺に佇むマダガスカルジャスミン
白い花を蔓の先へ次々と咲かせ
香りをそっと放し続ける

初夏の青空に香り立ち
それでも故郷は遥かに遠い

春の午後

春の午後

川裏の草むらに腰をおろし
青空を見上げ
覚えたばかりの (‥‥君が袖振る) を呟く

晴れやかな心地のまま
湧き上がる希求はうねり
まだ形づくることもなく彷徨う

光の春

光の春

ふいに朝日が差してきた
昨日とはちがって

そうだ、低く巡っていた太陽が
やおら背を伸ばし
隣家の屋根を越えてきた

窓際のサツキやゼラニウムも気が付いたらしく
いつの間にか花を咲かせている

陽は春のオープンを告げたばかり

森のロッジ

森のロッジ

ダイヤモンドダストが
キラキラと流れ
連なる微かな響きは
オレンジ色に灯る
ロッジのつららが
そっとハグしあう音

日勝峠

日勝峠

あの日の峠では
多くのトラックが
ペケレベツ岳を横切るときに
トナカイ橇のようにそっと飛ぶらしい

クリスマスの夜は
歓喜の歌に満ちた清水の町から
峠を超える照灯が
稜線に連なり見える

風車

風車

夜半の水平線に雲が湧き
雷鳴が静寂を突き破る

西風が潮を蹴り
風車の櫂を漕ぎだす

眠りに落ちた海辺の町を
やがて嵐が通過する

北極星

北極星

見上げれば
視界は満天の星

酷寒に輝く北極星は
カイラスの空にも在り

一隅の祈祷旗を照らし
ただ示すのみ
人知れず風にたなび続けるを

つきさっぷ

つきさっぷ

つきさっぷ
あおいあおいよる
こがらしのつきさっぷ
ふさふさしっぽのきたきつね
みあげたきんいろひとみに
りゅうせいぐん

雲の丘

雲の丘

丘陵を雲の影が駆け
羊は黙々と草を食む

鴉は翼を広げ風に乗り
旋回しながら
界隈のお社を遥拝す

空高く渡る陽は
遍く四方に降り注ぐ

すすき野原

すすき野原

木枯らしが背後から
肩先を軽く踏み越え
鱗雲の空高く翔け上がる

集く虫の音に
ふと見渡せば
揺れるすすき野原が遥かに続く
ただひとときの秋

ゆうらっぷ川

ゆうらっぷ川

ねこやなぎが芽ぶき
瀬にたゆとう小石の
かすかにふれるめざめの囁き

夏に
ゆたかな藻をはみ
早瀬に躍る

秋に
新たな命をそっと託し
抗う力もなく静かに流れに落ちる

高く見えるすじ雲は
紛れもなく
遠い記憶に広がるゆうらっぷの空

白神沖

白神沖

漁り火が揺れ
うねりを照らす

巻き上げられた烏賊は
飛沫を上げ
甲板で身を捩る

その流線体に浮かぶ星々の集散
投象は激しく変化し
太古の記憶を次々と

電波塔

電波塔

車窓から見える高台

灼熱が沈む夕景に
電波塔が立っている

その向こうには
海があるのだろうか
町が続いているのだろうか

流れる景色のなかで
電波塔はいつまでも見えている