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流転の宴 (るてんのうたげ)

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身近な自然と日々の生活で感じたことを記しています。ふとした合間にご覧いただければ幸いです。
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2023年12月の記事一覧

風の子

風の子

 出勤時、ビル風に遭遇したときにふと思い出した。
 かって、子どもたちがワイワイと日が暮れるまで遊んでいられたころを。近所の子どもたち、下は5、6歳から上は10歳くらいまでの男女、といっても男子は男子だけ、女子は女子だけで遊んでいた。男子は、近所の広場だけではなく、裏山などの斜面や里山の細い道を探検気分で遊んでいた。
そのような時に吹いてくる風は、子どもだちの声を遮ったり、投げたボールを逸せたり、

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徐行

徐行

夜8時発の特急に乗る。翌朝の会議に出席するための前乗り。1月は積雪も多く、鉄道の運行は心強い。新得駅で札幌行きに乗車すると、間もなく動き出した。窓外は、車内の明りが積雪を次々に流れるように映していく。自販機で買った熱い缶コーヒーを飲むと、温かさが身を包んでくれる。車内の暖房もあり、ホッと一息つき、間もなく心地よさでウトウト。広内信号場はもう過ぎたのだろうか。上り坂はまだ続くのだろうか。列車は軋

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日勝峠

日勝峠

あの日の峠では
多くのトラックが
ペケレベツ岳を横切るときに
トナカイ橇のようにそっと飛ぶらしい

クリスマスの夜は
歓喜の歌に満ちた清水の町から
峠を超える照灯が
稜線に連なり見える

風車

風車

夜半の水平線に雲が湧き
雷鳴が静寂を突き破る

西風が潮を蹴り
風車の櫂を漕ぎだす

眠りに落ちた海辺の町を
やがて嵐が通過する

北極星

北極星

見上げれば
視界は満天の星

酷寒に輝く北極星は
カイラスの空にも在り

一隅の祈祷旗を照らし
ただ示すのみ
人知れず風にたなび続けるを

つきさっぷ

つきさっぷ

つきさっぷ
あおいあおいよる
こがらしのつきさっぷ
ふさふさしっぽのきたきつね
みあげたきんいろひとみに
りゅうせいぐん

雲の丘

雲の丘

丘陵を雲の影が駆け
羊は黙々と草を食む

鴉は翼を広げ風に乗り
旋回しながら
界隈のお社を遥拝す

空高く渡る陽は
遍く四方に降り注ぐ

すすき野原

すすき野原

木枯らしが背後から
肩先を軽く踏み越え
鱗雲の空高く翔け上がる

集く虫の音に
ふと見渡せば
揺れるすすき野原が遥かに続く
ただひとときの秋

ゆうらっぷ川

ゆうらっぷ川

ねこやなぎが芽ぶき
瀬にたゆとう小石の
かすかにふれるめざめの囁き

夏に
ゆたかな藻をはみ
早瀬に躍る

秋に
新たな命をそっと託し
抗う力もなく静かに流れに落ちる

高く見えるすじ雲は
紛れもなく
遠い記憶に広がるゆうらっぷの空

ナイタイ高原

ナイタイ高原

広がり続く山すそを
風が吹き渡り
霧が駆け下る

冷涼な大気に
牛は点々として紛れ
斜面の草を食む

美瑛

美瑛

刷毛引きされた畑が
波打つ丘の連なり

斜面は大きなうねり
牧草ロールが漂い浮かぶ

陽が落ち
丘陵の空高く
星々が瞬き拡がる

白神沖

白神沖

漁り火が揺れ
うねりを照らす

巻き上げられた烏賊は
飛沫を上げ
甲板で身を捩る

その流線体に浮かぶ星々の集散
投象は激しく変化し
太古の記憶を次々と