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エッセイ

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#どっころ日記部

半分このわたしたち。

半分このわたしたち。

朝、わたしのアラームで、彼のほうが先に目を覚ました。朝と夢の間をさまようわたしをよそに、少し暑かったのか、彼が窓を開ける。梅雨特有の冷たくて湿った空気が部屋に流れこんでくると、彼は再び眠りについた。そうか、彼は今日休みと言っていたなあと、ぼんやりした意識のなか思う。

だんだん少し寒くなって、寝ている彼の腕の中に潜り込んだ。わたしは寒がりで、彼は暑がり。そんな彼の腕の中は案の定、ほかほかに暖かくて

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そらいろ

そらいろ

10時20分ごろの空が一番好き。11時だと白すぎて、9時もまだ違くて。10時20分の空の色が、大好きなんだよね。

とあるインタビューを読んだとき、わたしの心はどうしようもないくらい揺れた。

言葉の主は、わたしが10年以上恋をしているアーティスト。
恋、と言うと語弊があるかもしれない、憧れと言ったほうがスムーズなのかもしれないけれど、本当にわたしは、彼の作る言葉や歌声や音楽に支えられ生きてきた

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わたしの「生きる」は食卓に

わたしの「生きる」は食卓に

ここのところずっと体調が悪かった。
そのせいで一週間仕事に行けず、飲みたくない薬を飲まないと熱と寒気で夜も眠れず、病院に行っても原因がはっきりしない。痛い痛い、とひとりで喚いても症状が改善するわけもなく、名前も付かず、いつまで続くかもわからないこの状態に、ネガティブなわたしは完全に気が滅入っていた。

このままずっと仕事に行けなかったらどうしよう。
お金がなくなったらどうしよう。
何か怖い病気だっ

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逃げこんだ先に出会った人

逃げこんだ先に出会った人

『好きかどうか、もうわからない』

あの夏、わたしの心が、わたしに告げたこと。
一緒にいると安らぐし、笑っていてほしいし、こんなに愛してくれる人、きっと他にいないのに。でも、それでも。

わたしは逃げるように、一人イタリアへ旅立った。

たくさんの人に出会った。
涙が溢れる景色にも、おいしくて感激したジェラートにも。

そしてなによりわたしは、あの夏のイタリアで、日本に残してきたはずのあなたに会っ

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