見出し画像

【D2Cブランド戦略】パーソナライズヘアカラー「COLORIS」急成長の裏側

こんにちは、はじめまして。
COLORISブランドマネージャーの稲葉菜月(@nau3uki)です。

カラリス発売から約1年半。会員数は3万名を突破し、少しずつ事業の成長を感じられるようになってきました。

ありがたいことに日々の取り組みについてご質問いただくことも増えてきたので、これまで私がやってきたことを振り返りたいと思います。

※こんな人に読んでもらいたい!
・ マーケティングに興味のある人
・ ものづくりに拘るD2Cブランドを始めたい人
・ ブランド力で事業を拡大していきたい人

はじめに

私のミッションは「カラリス」というブランドをどう生み出し、どう育て、どう知ってもらうのかを日々考え実践することです。

昨今は「ブランディング」という言葉が乱立していて、ブランド=高価格帯や、デザインや世界観がかっこいい、といったような間違えた捉えた方をされることも多いように感じます。

ブランディングが強固であるかどうかは、「自社ブランドをどう知覚されたいか」という理想像と世間からの認識の一致度合いであって、それは一朝一夕で作り上げられるものではありません。

画像21

 
1.Product 

コンセプト策定とポジショニング

カラリスでは「大人の女性は敢えて家で髪を染める」という新しい日常の価値観を目指しています。

画像20

創業当時、海外のマディソンリードイーサロンというパーソナライズヘアカラーサービスを参考に事業計画を策定していました。

但し下記2点を理由に、パーソナライズ文脈でのブランド作りではなく、独自の戦略が必要であると考えました。

・日本人は欧米人のように髪質が大きく異ならないこと
・全国に25万店舗以上(コンビニの約4.5倍)の美容室があること

日本では、美容室でヘアカラーをする割合は20代が最も多く、30代以降は徐々にセルフカラーの割合が増えていきます。

また、ヒアリングを重ねる上で、美容室ユーザーがセルフカラーを検討するタイミングは「白髪の生え始め」もしくは「転勤や出産などライフステージが変わる瞬間」でした。

画像16

※参考:サロンユーザー調査2020年版

当時の私はまさに0歳と2歳の子育て真っ只中。
ライフステージの変わり目は、環境や自分自身のリミテーションが大きく変化することを肌で感じており、実際にヘアカラーは大きな悩みの種でした。

大人の女性が、妥協せず、前向きに選択できるセルフカラーを作りたい

その想いから、「上質なプロダクト」「個々のライフスタイルに寄り添うサービス」を実現するブランドを作ると決め、既存ヘアカラーの代替品ではなく「ライフスタイルブランドの製品」としてブランドを位置づけました。

画像2

 

ー 認知されやすいブランド名

COLORISの由来は「Your color is...」
つまり、あなたの色は…?という問いかけ。

カラリスを通して、「自分らしさ」とは何かを改めて感じてほしいという想いが込められています。

ネーミングで意識したポイントは2点。

1.一見して何のブランドかイメージできること
ヘアカラーとまでは分からなくても、色に関連するブランドであることが分かるワーディングを意識しました。ブランド名からサービス内容が伝わりやすいことは、マーケティングの費用対効果を向上する一因になると考えています。

2. シンプルで覚えやすいワードであること

見た目や発音した時の感じを考慮して、記憶に残りやすいワーディングにしました。また、シンプルなブランド名は、SNS等で検索しやすいというメリットもあります。※検索面で1位が取れそうか、UGCが上がりやすいか等も合わせて確認しておくと良いです。

 

ー 初回の商品設計に拘る

カラーアイテムの開発は、膨大なSKUがまず第一の壁。SKUが多いと開発だけでなく在庫管理や物流も難易度も上がるので、立ち上げの際は留意すべき点です。

カラー剤ならではの難しさだと感じたのは下記3点。

1.医薬部外品なので生産できる工場が少ない&申請期間が長い
2.SKUが多いので初回生産ロットの消化に時間がかかる
3.商品評価の変数が多い(元の髪色や髪質で発色がかなり左右される等)

商品改善を短スパンで繰り返すことは難しいけれど、最初から拘って作りきることで、競合優位になりうると感じています。

  
<製造メーカーについて>
OEMは数社検討したものの、ヘアカラーを作れる工場は多くないため、高品質と安全性、圧倒的な実績という点で資生ケミカル株式会社さんにご協力いただきました。

国内サロンヘアカラーの生産シェアNo.1工場でありながら、スタートアップである私達の細かな要望にも真摯に向き合ってくださり、商品テストを何度も繰り返しました。

<カラーバリエーションについて>
日常的に染められる8トーン前後のベーシックカラーの展開に集中しました。ビビットカラーやハイトーンカラーは、コンセプトに合わないため、敢えて展開していません。

画像21

ブラウン1色においても、色構成の違う処方を何パターンも試し、パーソナライズの組み合わせも加味して少しずつ調整する日々。

毛束

(サンプル確認中の私、楽しそう。笑)

iOS の画像 (9)

(当時は人頭チェックが間に合わず、私が週1で髪を染めている時期もありました・・・笑)

 

ー 商品価値を高める同梱物

上手く使っていただくこと=商品価値を何倍にもする

という考えのもと、使用感を向上するための同梱物に拘り、その他は最小限に抑えて、予算をプロダクトに集中させることを徹底しました。


カップや刷毛は、塗りやすさを追求してサロンと同クオリティのものを同梱していますが、「美容師さんになった気分!」「薬剤を混ぜるのも楽しい」等のお声をいただいています。

また、1人ひとりに合わせた手書きの染め時間カードは、最少原価でパーソナライズ感を伝える工夫から生まれ、UGCのフォトポイントになりました。

カード

 
ー 上質なパッケージデザイン

パッケージデザインの役割は、視覚的に商品のベネフィットを伝え、手に取ってもらうこと。「セルフカラー」を妥協ではなく前向きな選択肢にするために、上質なパッケージデザインは必須でした。

市販品の不満足理由 第3位
「パッケージに対する心理的ハードル」

パッケージデザインとメインビジュアルはホルバルーンの伊藤さん・安瀬さんに手掛けていただき、納期や予算など様々な制約がある中で最高のデザインに仕上がりました。

画像6

iOS の画像 (10)

(色校中の写真。チップの色を合わせるのが至難の業・・・!)

前職の大先輩である伊藤さんは、ブランドコンセプトを理解された上で、私達の思考が足りない部分は一緒に議論してくださり、デザイン以外の様々な面でも商品完成まで伴走していただきました。

現在もお二人と一緒にブランドの根幹となる制作が進行していて、お披露目する日が待ち遠しい、、、!


2.Price

ー 「提供したい価値」を妥協せず届ける価格設定

現在の都内美容室のヘアカラー施術は平均5,000~7,000円程度、市販カラー剤500~2,000円程度。カラリスはその中間価格帯(定期3,980円・通常4,980円)で販売しています。

画像16

昨今は、ダイレクトマーケティングの普及により適切なプライシングが崩れつつあるように感じています。「良いものを安く買いたい」とお客様がリクエストすることは当たり前ですが、安価にしすぎるデメリットもあります。

例えば価格を抑えすぎることで商品開発への投下資金が減少し、結果として中長期でお客様への還元ができなくなることなどです。

私達は、安さで買ってもらうのではなく「提供したい価値」を妥協せず届けられる価格設定が大切だと考えています。

また一方で、イメージ戦略で高価格に引き上げるはせず、届けたい人にちゃんと手に取っていただける価格帯を守っています。

※但しカラリスの場合、現在は市場に同様のサービスがなく、値段で選んでもらう商材ではないという前提であるので、値引きしない戦略には適切な市場選択とプロダクト設計が必要です。

  

3.Promotion

どう認識されたいのか

優れたブランドは一貫したコミュニケーションのもと作られますが、フェーズや外部環境によって、認知の切り口を適切に変えていくべきだと考えています。カラリスは下記のようにキーワードを変えてきました。

画像21

■ローンチ直後

まだ誰にも認知されていない状態。メディアPRを中心に行っていたので「日本初」「パーソナライズ」などキャッチーな言葉を随所で使用していました。

PRは日常のちょっとした出来事や施策を1つ1つ丁寧に拾ってニュースを作り、毎月プレスリリースを出し続けました。(PR経験はないので、企画内容よりもとにかく数!という感じでした笑)結果として、ローンチ後の半年間で20媒体以上に掲載され、雑誌「&ROSY」では月間ベストコスメ1位をいただきました。

画像19

社内リソースが少なく自社でニュースが作れない場合は、他ブランドとのタイアップで権威性を借りることもおすすめです。

※ブランド初期のリリース(一部)


■コロナ渦

「美容室にいけない」ことを理由に初めてセルフカラーを必要とし、検討する人たちに向けて「サロン品質」という言葉を随所で使用していました。

認知施策はYoutubeを主軸にして、様々なタイプのクリエイターを起用し、ターゲットの年齢層を広げています。

セルフカラーはスキンケアやサプリと比べて、「どう使うのか?」「使用感はどうか?」を具体的にイメージできる人は少なく、実態以上に複雑に捉えられています。その点で、動画での訴求は相性が良く、オーガニックへの跳ね返りもありました。

しかし、Youtubeは1本毎が高単価な上に、評価の変数が多くPDCAが回しづらいことや、解約率や単品比率なども考慮すると、獲得施策として実施するのであれば継続は難しいと感じました。


■ローンチ1年後~現在

ダイレクトマーケティングを開始するにあたり、LTVの高いコアターゲットを明確化しました。それに伴い、「サロン品質」という訴求の具体化=「パーソナライズ処方のセルフカラーで、傷まず艶やかな仕上がりを実現すること」をプロダクトベネフィットとしました。

顧客アンケートでの好評価項目や、コンセプト調査結果を参考に策定していますが、次のブロックで詳細をお伝えします。

 

ー コアターゲットの明確化

カラリスは市場に類似商品がないため、立ち上げ初期は広くターゲット定義していました(=ユーザーの不満を細分化していなかった)。

画像15

※市販品、サロン品にそれぞれ不満を持っている層

画像16

※サロンに行けない理由である「時間」と「経済」
参考:三菱総合研究所

しかし、既存ヘアカラーへの不満(負)の実態が曖昧であるとクリエイティブコントロールが難しく、意図していないネガティブ訴求やデザインになることが多々あります。

社内の共通認識も甘く、

「つまりCOLORISは時間がないママ向けブランドってことでOK?」
「いやそういうことではなくて※△%□・・・」

というやりとりを、COOの近藤(@shogo__0308)と100回以上繰り返していました。(笑)

ブランドに関する施策の一貫性を生むためには、社内メンバーはもちろん、様々なオペレーションを支援してくれている取引先にも共通認識を持ってもらう必要があります。

ターゲットの解像度を上げるために、顧客ヒアリングを通じてヘアカラーに対する価値観を深堀りしました。

画像16

COLORISのターゲットは、図の左上に属しており「身だしなみ」をいう観点で「頻繁に髪を染める」層です。

・ダメージのない綺麗な髪色を維持したい人
・効率的な消費を好むが、質には妥協しない人

これを元に訴求を見直し、各施策に落とし込みました。

訴求例:before
「いつでも私の思い通りの発色」
「トレンドカラーを自宅で」

訴求例:after
「ダメージのない艶やかな髪色へ」
「染めた後も指通りサラサラ」


ー ラストベネフィットを伝える

「私のためのブランドだ」という深い共感は、ファンを生み、長くご利用いただけるきっかけとなります。

カラリスのラストベネフィットは「COLORISを使うことで生まれる"余白"のある生活」。直接的な表現で伝えることは難しいため、下の図のように、それぞれタッチポイント毎に表現しています。

画像16

 

ファネル別コミュニケーション設計

「どこで何を伝えるか」はチャネル別ではなくファネル別で設計することで、訴求内容が明確になり、施策の精度が上がると考えています。

例えばインスタグラムをチャネルで捉えると、ブランドアカウントとUGCの目的が混合してしまう場合がありますが、ファネル別で捉えると下記のように必要なコミュニケーションが変わるはずです。

認知層=インフルエンサー投稿(綺麗な仕上がり)
潜在層=公式アカウント投稿(COLORISのある生活、コミュニケーション)
検討層=ユーザー投稿(リアルな使用感、商品設計、使い方など)

上記を踏まえて、公式アカウントでは投稿毎のEGM率を、UGC施策ではインスタ経由のCVRを指標にコンテンツのPDCAを回しています。

画像15

COLORIS公式アカウントの事例

①2019/9~
・自社素材が少なく、ユーザー投稿をリポスト
(UGCとブランドアカウントの役割が一緒になっていた)

②2020/6~
・モデルを起用して「COLORISのある生活」を表現
・ブランドサイトの情報を画像にまとめて投稿
(ex.ヘアカタログ、商品のこだわりなど)

③2020/12~

・見ている人自身が「COLORISのある生活」をイメージできる写真
・あえてモデルは映さずに商品のみ
・自社撮影はせずインスタグラマーに撮影委託
・季節の小物などを添えて、その時々の暮らしの工夫をプラス


画像13

#カラリス 投稿の事例

①Before
・髪色写真を表紙にして投稿することを推奨
・自撮り投稿のハードルが高く投稿数が伸びない
・同梱チラシで投稿をオファー
 
②After
・投稿条件無くした
・レビュー投稿が得意な方にモニターを依頼
・素敵な投稿は公式LINEを通じてユーザーにも共有


ー ファンによるUGC創出

カラリスのUGC施策のテーマは「共感」です。セルフカラーはいわゆる「映え」商材ではない為、スイッチャーの「こんな商品使ってみました」という投稿にはあまり相性が良くありません。また、投稿キャンペーン等のオファーも効果がみられませんでした。

30代以降のユーザーが多く、その年代の女性が髪色を自撮り投稿することはとても高いハードルです。私自身が「自分なら投稿できないな」と思うものはユーザーにも強要したくありません。

※参考にさせていただいているエルモさんの記事

時間はかかるけれど、ブランドストーリーに共感して好きになってもらうことで、自発的に発信してもらう。その価値が分かったからこそ、ローンチ1年半後の今、ブランドブック等も作成中です。

カラリスブランドムービー
ー 定期ユーザーのSerinaさん(@serimash) 出演

 

ー コミュニケーションで解決する

商品設計のブロックでも記載していましたが、カラリスでは上手く使っていただくことが商品価値を増幅させると考えています。

なので、CRMでは「お客様に正しく使っていただく」というテーマのもと、教育コンテンツを主軸に展開しています。

画像19

カラリス公式LINE

また、解約希望者に対して金額オファーは一切せず、満足に至らなかった原因毎に適したコミュニケーションを行い、商品のパフォーマンスを改善することを意識しています。

・思った色にならなかった → カラー変更の提案
・ムラになった      → 染め方の提案
・美容室に行きたい    → お届け休止の提案
・ダメージが心配     → ヘアケアの提案

例えば、セルフカラーは1回目は難しくても、2回目以降は思った以上に簡単に染められます。自分に合った染め方が見つけられるよう、動画コンテンツを追加したことで、実際に初回使用直後の解約率が改善しました。

また、Q&Aなどは自動化する一方、カラー相談はすべて有人対応をしています。前職同期でCS担当の酒井(@rina_coloris)が1件ずつ丁寧に対応し、私自身も毎月ランダムにユーザーヒアリングを実施しています。

昨今は様々なツールによってコミュニケーションの最適化が可能ですが、お客様の生の声を聞くことが何よりの学びになると考えています。

 

4.Place

ー チャネル選定と今後の展開

「WEBでヘアカラーを買う」という体験はあまり日常的でない為、公式サイトよりも購入ハードルが低い大手モールへの出店も検討しましたが、現時点では「無し」としています。

モール出店にあたり懸念されるのは、顧客体験の複雑化です。現システムでは、パーソナライズ処方を実現するために一度モールでチケットを購入していただき、再度ブランドサイトでお申込みいただくような複雑な導線となってしまいます。

パーソナライズ処方の価値を本気で提供しているからこそ、無理にチャネルを拡大せず、より良い顧客体験を最優先としています。

但し今後の展開としては、より多くの方に価値を届けられるよう、モールやオフラインなど様々なチャネルにチャレンジしていきたいと思っているので、この辺り詳しい方がいれば是非情報交換させてください・・・!

※モール出店によるブランドイメージの棄損について議論されることがあるが、出店自体では大きな棄損は起こらないと考えています

画像22


おわりに

カラリスを企画していた当時のノートを見ると、「自分自身のリミテーションを理解し、"ありたい姿"に向かってイニシアチブをとれる女性」とメモしていました。(ブランドターゲットのイメージとして書き記していた)

私は、これまで商品開発もマーケティングもCRMも全く未経験でしたが、日々思考と実践を繰り返す中で”ありたい姿”に少しずつ近づいているように感じます。ここまで任せてくれた代表(@ume0308)には心から感謝しています。

今年は新商品やサービス拡張を複数仕込んでおり、より一層速度を上げてブランド拡大していきます。また、拡大に必要なマーケの仕込みや組織体制なども、COO近藤 (@shogo__0308)を中心に急速に整えています。

※近藤のNOTEはこちら

たった4人ではじめたカラリスですが、少しずつ仲間が増え、ご支援いただくパートナーの皆様にも支えられ、日々全速で進んでいます。

これからのカラリスの展開にご期待いただけたら幸いです。

個人的には、D2Cブランドの立ち上げ~ブランド拡大について、意見交換をしてくださる方も大大大募集です。お気軽にご連絡をお待ちしております!
twitter : https://twitter.com/nau3uki



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?