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時間"感覚"を取り戻せ―『YOUR TIME』 | ワンポイント・ブック・レビュー③

「時間がない」は言い訳じゃないし、生産性を上げるためにすべきことは他人のジャーナリングを真似ることでも、タスクを詰め込むことでもない。
世の中にはびこる時間術は間違いだらけだ。


こんにちは、なつぐれです。
今日もお読みいただきありがとうございます。

現代人はとにかく時間がないと言っている人が多いです。子育て、副業、勉強、部活、残業……それぞれが原因だと語るものは違いますが、時間が余りすぎて困っているという人はほとんどいないでしょう。

「若い人はタイムパフォーマンス―いわゆるタイパを求めている」というのも最近では耳タコな話題ですよね。TicTokやYouTube Shortsのような3分以下の動画が流行るのも、短い時間で満足や情報を得られるからだそうです。

仕事を頑張っている人なら、本やYouTubeで紹介されている時間術を試したことがある人も多いのではないでしょうか。
ジャーナリング、ポモドーロテクニック、タイムログ、ToDoリストなど様々ありますが、見たことがあるテクニックはありますか?
私はすべて一度は手を付けたことがあります。続いているものもあれば、すぐに止めてしまったものもあります。

このように時間効率を上げようと人類は必死なのですが、「それって意味あるの?」と根本の問題に気づかせてくれるのが『YOUR TIME』という本です。


時間が足りないのではなく、時間に関する予測と記憶を誤っている

時間術とは予期と想起を正し、幸福度を高める技法である

時間というものは自然には存在せず、「今」の状態から主観的な予期と想起によって時間という概念をあなたが後づけする。時間というのはあなたの錯覚である。

……哲学的な言い回しですが、古代の哲学者アウグスティヌスや科学界の奇才アインシュタインの言葉を出発点に、筆者がたどり着いた結論はこのようになります。

予期と想起の定義は、この本の中では次のとおりです。

・予期→未来に起きることへの確率の見積もり
・想起→過去に起きたことへの確率の見積もり

実際に起きる・起きた事実とこれらへの見積もりの誤差を修正してくれるのが時間術というわけです。

時間術について抱きがちな3つの誤解

時間術の多くは科学的根拠に基づいていない手法が多いそうです。

多くの時間術と仕事のパフォーマンスの相関を調べた調査では、r=0.25しか効果量が確認できませんでした。
このrという数値は1.00が最大値で、0.5以上なら大きな関係があるとみなされます。0.25だと「無意味じゃないけど、効果を実感できないことも多い」というラインです。

特に時間術について次の3つの真実をおさえない限り、正しい時間管理はできません。

1.時間術を駆使しても仕事のパフォーマンスはさほど上がらない。
2.時間の効率を気にするほど作業の効率は下がってしまう
3.「時間をマネジメントする」という発想の根本に無理がある

YOUR TIME ユア・タイム 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術

時間術が効く人と効かない人がいるのはなぜか?

とはいえ、実際に時間術を活用したら人生が変わるレベルで仕事が捗るようになった人がいるのも事実です。そして、この時間術を他人に教えると続かなかったり、「効果ないじゃん」と文句を言われたりします。

なぜこのような差が生まれるのでしょうか。

その理由が先ほど挙げた「時間術とは予期と想起を正し、幸福度を高める技法である」です。

たとえばTo Doリストの場合、「未完了のタスクを書き出すことで頭の中が整理され、やり残しや優先順位に関する不安を軽減してくれる」ことに効果を発揮します。決して、To Doリスト自体が仕事のパフォーマンスを上げてくれているわけではありません。
予期が多すぎて「あれもこれもやらなくては」とタスクに圧倒された結果パフォーマンスが下がってしまう人、もしくは想起が否定的すぎてタスク完了に関してネガティブな想像をしすぎてしまう人がTo Doリストを使うと時間感覚が改善して、結果的に目の前のタスクに集中しやすくなるのです。

タイムログの場合はわかりやすく、時間に対する想起の誤りが大きい人、特に想起をポジティブな方向へ見誤っている人に効果を発揮します。
想起の誤りよりほかの時間感覚の誤りの比重が大きい人が、タイムログを取ってもいまいち効果を発揮できません。

時間感覚を改善するためにすべきこと

①時間感覚タイプテストで診断する

先ほどから「予期が多い」や「想起の誤りが大きい」などの用語を出していますが、あなたの時間予期・時間想起のタイプは「時間感覚タイプテスト」で診断できます。
これは本を購入していなくても以下のリンクから診断できますので、ぜひやってみてください。

ちなみに私は、

  • 容量超過=予期が濃くて多い

  • 怖がり=想起が正しくて否定的

でした。

②時間感覚タイプに合った改善策を実行する

診断ができたら、時間感覚別の改善プランを実行します。

当たり前ですがタイプ別でやるべきプランは異なります。有名な時間術が合う人もいれば、この本で初めて出会うような時間術もあります。

私の場合は遊びの予定をあらかじめ入れておく「プレコミットメント」や、認知行動療法でも使われる「ネガティブ想起改善シート」がメインのプランになります。

③そもそも時間効率化という考えをやめる

予期や想起を改善したら、根本的な問題として「時間効率化しようという考え自体をやめる」ことが必要になってきます。

短い時間で成果を上げるようと意識すると、むしろ生産性が低下しメンタルが悪化します。

また、「短い時間で仕事を終わらせれば余暇が増える」というのは幻想で、実際には余裕が出た分だけ別の仕事が降ってくるので、結局のところ忙しさは改善されません。

それよりも時間を忘れさせるほど没頭できる「生きがい」を見つけたり、少しくらいの遅延や遠回り、退屈を楽しめる「認知の耐性」を身に着けたりするほうがはるかに幸福になれると筆者は説いています。

時間感覚を改善して、退屈を突き詰める

私も含め、現代人は多くを持っていることを神聖視しているところがありますが、限られたリソースに多くを詰め込もうとする姿勢は改めないといけません。

それよりも時間感覚を改善し、認知の耐性をつけ、退屈を積極的に楽しむことで幸福を得られるようにしていかなければなと思いました。

秒単位で電車を運行している私としてはかなり難しい課題なのですが、この本とともに「忙しいという感覚」の改善に取り組んでいきたいと思います。


📖✨️巻末のおすすめ記事のコーナー✨️📖

今日のおすすめ記事は風山 文さんの記事です。

この試行錯誤してる感がいいですねぇ(笑)

私も読書時間を毎日たくさん取れているわけではないので非常に共感できる内容でした。

風山さんにはぜひこの記事と、朝散歩×読書の記事を読んでいただきたいです。参考になるかもしれません。(隙あらばなんとやら)

1万文字の大作である風山さんの記事も、ぜひ読みにいってくださいね!


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