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『トスカ』について

今日はブログじゃなくてnoteに投稿してみようかな。

プッチーニのオペラ『トスカ』について。
中でも有名な「歌に生き恋に生き」という曲があるけれど、学生時代に声楽のバックで演奏した思い出があります。たしか、映画『サンローラン』のショーでも使われていた曲。
大学の頃(当時音楽学部)オペラ演習を選択していたので、色々伴奏してきたのです♪ 指揮者の先生がめちゃくちゃ怖くて、毎回大大緊張の恐怖授業だったな~。もう受けたくない~。

当時使ってた「歌に生き恋に生き」スコア


で、今度の夏期の通信大学のスクーリングで(今回は文学部💦)、フランス文学を元にオペラを絡ませながら教えていただけるという、なんとも魅惑的な科目を選択しています。そのテーマのひとつに『トスカ』が出てきます。

『トスカ』は舞台がイタリア、登場人物もイタリア人、オペラもイタリア語、もちろんプッチーニもイタリア人ですし、イタリア文学な感じもしますが、原作者サルドゥはフランスの劇作家だし、フランス革命の流れを受けたイタリアなので。

ということで、予習も兼ねて『トスカ』の原作であるサルドゥ『ラ・トスカ』を読もうと思って探してみました!

探してみたところ…、邦訳は出ていない??
えーーうそーー!? こんな人気オペラなのに??
さすがに全文フランス語はきついよ~。無~理~。もちろん、オペラの対訳はありますけど(こちらはイタリア語)、舞台映えするように書き換えられてるので原作とは異なりますよね。大まかには一緒だけど、歴史的なことやトスカの生い立ちなど背景がひじょうに薄いです。

調べた限りでは第五幕までの邦訳はなさそうなんですけど、、、どなたかご存知ですかね…💦?
んー…ということは、スクーリングでもやっぱり原書を使うのかな…。ついていけるかな…。

今回読んだ本など


こちらは有名なオペラでもありますし、以下よりネタバレ含みますのであしからず🙇

『トスカ』は史実に基づいたストーリーであり、ヒロインのトスカはとっても情熱的な女性。美貌と美声を持ち華やかな舞台に立つ大物歌手ではありますが、元々は田舎出身の牧歌的な少女なのです。

今回改めてオペラ対訳(坂本鉄男訳)を読んでみて、トスカは三島由紀夫作品に出てきそうな女性だなあというイメージがしました。そしたら、三島由紀夫は文芸座公演の「トスカ」の潤色してたんだって~。
調べたら『鹿鳴館』の下敷きが『トスカ』なの??

でも、私が思い浮かんだのは、『愛の渇き』の悦子、さらに『憂国』の麗子でした。二人は相反する女性だけれど、トスカにはこの二つの要素が感じられるのです。
悦子の嫉妬深さと狂気的な情熱性、そして麗子の献身性と土壇場においての冷静沈着な強さ。

トスカは、ある事情により警視総監を刺し殺してしまうのですが、人を殺した後にあんなに冷静な行動ができるのは、深い信仰心だけではないはず(ストーリー詳細は省略)。嫉妬に狂う一面を見せておきながら、土壇場に於いての冷静さ、したたかさも感じてしまいます。

対訳とはいえ、ドラマチックな世界に引き込まれ一気読みしてしまいました。最後は大悲劇で終わるうえ、頭の中で鳴る音楽も相まって、ドキドキしちゃいました!
しかし、その後、三島由紀夫全集から三島が「トスカ」について言及している文を読んだら、若干興ざめしてしまいましたが…😅

「ラ・トスカ」は、浪曼劇としては末流の作品で、悪く言へば、技巧に溺れた「これでもかこれでもか」芝居である。

「ロマンチック演劇の復興」より

戯曲「トスカ」は文学的には二流の本だが、そのシアトリカル(劇場的)な効果は絶大の本である。

「トスカ」上演について


「二流の本」か~。。 だから邦訳がないのかしら…?
しかし、原作とオペラとの両方を見据えてトスカを冷静に分析しているので、なるほど~とも思います。

私はトスカという女を、オペラの写えるあの崇高壮大な女人像とちがって、実に可憐な、無知な、自ら意識しない野生の力によって、人を滅ぼし己も亡ぶ、そういう一人の女として見るようになった。〔…〕彼女が革命派のシンパの画家なんかに惚れ込むのは、もちろん彼の男振りに惚れたんしても、実は彼の偏見のない精神が、彼女の野趣ある美質をそのまま素直に受け入れてくれたからである。そこでトスカは、ここを先途とますます男に惚れ込み、真裸の純愛をぶつけるが、彼女が真裸になれば、持って生まれた野生の力もの野放図に働き、惚れこんだあまりの常軌を逸した嫉妬が、逆に愛する男を墓穴へ導くことになる。

(「可憐なるトスカ」より)

オペラでのトスカは、上流階級の歌い手である姿がメインに出されているけれど、元々は田舎娘。野性的な姿と華やかな姿、そんなギャップを持ったトスカをそのまま受け入れて愛してくれた人(革命派の画家)がいて、彼女はそんな男性に惚れこんじゃったんですよね。
トスカは、愛する人を原因として、権力者である警視総監に全力で反抗、果てには刺し殺してしまいます。政治的な圧制への抵抗とも見られるけれど、単に、愛する男性への献身的な思いの行動だったということですね。
うーん同感!(原作読んでないけど…)

あと、気になった点は、トスカは信仰厚いカトリックという部分。それはいくつかの会話や死者に対する行為にも表れるので分かります。
そんな信仰厚いトスカですが、最後は身を投げ自殺します。愛する人を失い将来の希望を見出せなくなったトスカは、もはや選択肢が死しかなかったのかもしれませんが、自殺は大罪といわれますよね。やっぱり、信仰心を揺るがすほどの恋だったということなのかな?
・・・あ、人もひとり殺しましたね。
「歌に生き、恋に生き」どころじゃなくなっちゃいましたね❣

Vissi d'arte, vissi d'amore,
non feci mai male ad anima viva!
Con man furtiva
quante miserie conobbi aiutai.
私は芸術(歌)に生き、恋に生きた、生あるものを傷つけたことはない!人知れず手を差し伸べ多くの哀れな人の不幸を救ったことか。

「歌に生き恋に生き」より

来月見に行くオペラも楽しみ~♪

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