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【東京百景】鶯谷とASIAN KUNG-FU GENERATION

「ASIAN KUNG-FU GENERATION」(以下、アジカン)と「見慣れぬ土地を散歩すること」との相性の良さに驚愕しています。

普段特別アジカンを聞くとかそういったことはないが、好きな人が邦ロック狂で、特にアジカンが好きなので、いつの間にか私もシャッフルでアジカンが流れるとニンマリしてしまう体になってしまったのです。

逆に言えば、好きな人が好きなバンドだからっていうだけのはなし。

それ以外何ものでもなかったのだが、鶯谷駅近くの路地裏の猫と睨み合っていたとき、映画『横道世之介』の主題歌『今を生きて』がイヤフォンから聞こえてきました。

途端にどっかの方角からカメラを向けられている気分になったのです。なんでもないこの瞬間が映画になってるという自意識が生まれ、ニンマリしました。

このニンマリは、自分が高良健吾かなにかになったと思っているニンマリ。

鶯谷の街並みは昭和っぽい。木造建築が多いし、もっと言えば建物のタイルなんかがバブルみたい。こんなご時世なのにおっちゃんが屋台で焼き鳥を焼いていて、そこでピンクのトートバッグにネギが刺さっているおばちゃんや、杖をついたおじいちゃんが足をとめています。学習塾と書かれた看板のある小さな家の引き戸のガラスから猫が首を垂れて外にある何かを集中した様子で凝視しています。なんだろうと思って私も視線の先を見るけれど、何もない。猫あるある。

『今を生きて』の次は同じくアジカンの『稲村ヶ崎ジェーン』が流れました。

場所は鶯谷だが、アジカンの気だるげな声(めちゃくちゃ褒めてます)が見知らぬ土地の散歩の質をえげつなく上げていくのです。

日常なんてこんなもんでいいのかもしれない。「こんなもん」というのは、特に深い意味なんてものはなくて、つまりなんでもかんでも深い意味を持たせようとしなくてもいいのかもしれないということです。

今、映画を撮られているかもしれないっていうアホみたいな自意識過剰で、それでいて立派な遊び心のフィルターをかけてみると、理不尽だと嘆いてばかりいる自分の人生がいっきに「まあいいか、こんなもんだべ」になります。

鶯谷とアジカンを調合させてみて良かった。好きな人に教えてあげよう。


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