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気が付けば異性装で生きていた

梅雨の合間のよく晴れた日。今日は暑いくらいだった。
行き帰りのために薄手のカーディガンを羽織っていたけれど、日中はそれを背もたれに掛けて昨年買ったネイビーのオープンカラーの半袖シャツだけで仕事に勤しんだ。
結局退社間際まで掛けっぱなしになったカーディガンを指先で拾い上げて、「お疲れ様」とフロアに言い放つ。

そうやっていつも通りNEWERAのリュックを背負い仕事場を後にした。

リュックを背負う前に羽織ったカーディガンを、「着なくても大丈夫だったなぁ」と腕まくりしていると、閉店した居酒屋の暗いガラスのドアに自分が映っているのが目に入った。

いつから当たり前に、オフィシャルな仕事着もメンズのシャツを着るようになったんだっけ。

 

僕は身体の性は女性だけれど、心の性は定めていないセクシャルマイノリティだ。

メンズのファッションアイテムが好きだし、似合うと思っている。上に書いたように、仕事着にもメンズのシャツなんかをよく着ている。

 

入社時の面接はレディースのスーツだった。たぶんスカートだったと思う。自分らしさよりも平凡さを求めていたし、そこに抵抗するよりも従順に職を得る方を選んだ。かといって屈辱感もない。単純に拘らなかったんだと思う。
無難だから、入社後もレディースファッションで出社した。決まってパンツではあったけれど、トップスは明らかにレディースとわかるものだった。その頃メンズファッションは、休みの日に楽しむものだった。

明確なきっかけはもう忘れてしまった。
だけど、平日と休日の服を明確に分けてしまうと、とてもコスパが悪いと感じた。
勝手に仕事着にメンズを着てはいけない気がしていたけれど、誰にもだめなんて言われていないことに気付いたのがきっかけだった気がする。僕が思い込んでいただけというか。
そう感じたのはちょうどユニクロのメンズTシャツを女性が着る、というのが流行った時期だ。
このブームを有難がった僕は堂々とメンズ服に手を伸ばした。流行りものに敏感ではなかったけれど、このブームには喜んで飛びついた。

それまでは休日用であることが明らかな、少し派手なデザインを買うことが多かったけれど、普段使い出来るベーシックなデザインのものがクローゼットに増えていった。
その普段使いのメンズ服が、仕事着になっていった。

仕事着で着ていても、誰に何かを言われたことは殆どない。一度だけ、会社の飲み会の時に女性陣が揃ってベージュのトレンチコート風の上着を着ていた中で、僕だけがメンズのジャケットを着ていたときに「個性的だ」と言われたくらい。
そもそもでジェンダー関係なしに、お揃いの中に進んで入っていくような性格でもないのだから、そのことも言われて気が付いた程だった。

もしかして僕は子どもの頃から男の子の格好で育ったのではないか?
というくらい、今では好きなメンズファッションが身体に馴染んでいる。
レディース服を買うのはボトムスとブラジャー、靴下くらい。なんならボトムスもメンズが履ける時はメンズを買うから、実際はブラジャーと靴下だけかもしれない。

アラサーにもなって、と言われるかもしれないけれど男子大学生とか若い男の子のファッションが好きだ。
かわいいな、着たいなと思うし素敵なコーディネートの男子を見つけるとお手本にしたくなる。

生まれ変わったら、ぜひかわいくて格好いい男の子に生まれたい。
でもちょっと待てそうにないので、僕はメンズ服(異性装)で生きていく。

 

 

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