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心に残るスピーチの秘訣

以前、パブリック・スピーキングを教えている、ニューヨークでも名の知られる学校に見学に行って、驚いたことがあります。
   

 体がない! 心が感じられない!

スピーチの内容は政治のことや自分の体験など、大変面白いのですが、観客を引き込み、「聞かせられる」人が少ないのです。その原因を具合的にあげると、目線を合わせない、声が届かない、体の動きが少ない、中の衝動が外に現れてこない、などなど。彼らのほとんどは、ステージフライトを克服しようとしてクラスに来ているので、上にあげたようなことを課題として取り組んでいるんだなと思っていました。クラスを教えていらした先生は、きっと何かこのことに関しておっしゃるに違いないと、フィードバックを聞いていましたが。。。え!??体の使い方に関して、何もコメントがない!「今日は緊張の度合いは1から10までの数字でどれくらいかな?」とか、スピーチの内容とかについてはコメントしますが、「呼吸をしなさい」とか、「足を感じなさい」なんて言わない。

これは、パブリックスピーキングのクラスなんだから、「いかに人に伝えるか」が焦点ですよね?もっと言えば、「そのスピーカーが」「いかに」「言いたいことを」「聞いている人に」伝えるかが重要なはず。まず、「そのスピーカーが」、つまり自分がそこに存在していなきゃ始まりません。それには身体感覚を磨くことです。

何かを喋り出す前から、体はすでに言葉を発しています。その場にいる人はあなたを感じているんです。自分の呼吸を変えれば、気の流れが変わり、場の空気感や観客との関係も変わります。立ち位置を少しずらして、目線を少しあげるだけで、自分の中の気持ちも変わりますし、言葉にエネルギーをもたらすことも可能なのです。

人前で話し慣れない人は、確かにあがると思います。ちゃんと喋らなきゃとか、印象よくしなきゃとか、いろんなプレッシャーもあるでしょう。あがってて良いんです。不安で良いんです。そのあがってて、不安な自分から正直に発信すれば、人は絶対に聞いてくれます。ロボットみたいな完璧に作られたスピーチなんて、面白くもなんともありません。肝心の本人を晒(さら)さずに表面上はうまくできた言葉で塗り固めても、全く独創性がありませんし、信憑性に欠けます。

 あなたがこのスピーチを通して、あなたという人間を通して、人に語りかけているのです。不完全な凸凹な自分から発信する言葉だから、魂に響くのです。それには、まず自分を「晒して磨く」ことです。

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