前芝尚子

体を通して心を変革、ソマティックスや演劇の経験をもとに、一人の人間の持つ可能性を最大限…

前芝尚子

体を通して心を変革、ソマティックスや演劇の経験をもとに、一人の人間の持つ可能性を最大限に引き出すソマティックコーチ、スピーチトレーナー、パフォーマーとして活動。米在住35年。日米を行き来する葛藤の最中で、自分の自然を生きる術を探り続ける。naokomaeshiba.com

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  • 自分を通して社会を見る

    自分は社会をどう思うか、何が問題なのかを、日米両法の社会で生きてきた経験をもとに探っていく。

  • 究極のスピーチトレーニング

  • 表現の力:自分を表現するとは

    アートに見られる自己表現からパブリックスピーキング、日常の会話まで、自己表現の根源について探る。

  • 自分を探る〜前へ進む

    使い古されたセルフイメージを捨て、マインドの虜から自由になって、前へ進む方法。

  • 体、感覚、想像力 ー 人間の持つ可能性

    一生で使う脳のキャパシティは3%。なぜ脳をフルに使うことなく一生を終えてしまうのか?もう一度、体に戻って思考する。

最近の記事

大統領選を通して思うこと(その二)ケン・ウイルバー、思想の二層構造

二十一世紀のアメリカを代表とする思想家、ケン・ウイルバー氏によると、アメリカの思想は、下の渦巻きのようなイメージに見られるように、下から上へと推移してきています。一つ一つの色には違った思想が代表されます。 Ken Wilber: The Intellectual Dark Web, an Integral Conversation? の中で、彼が強調するのは、特にAmber(琥珀)ー> Orange(橙) ー> Green(緑)への推移、そしてTeal(ティール)への移行で

    • 大統領選を通して思うこと

      日本では7月7日に都知事選が終わり、来年の国選は、誰もが気にしているところですが、日本と密接な関係にあるアメリカでは、今年の11月5日に大きな選挙、大統領選挙が迫っています。バイデン氏の撤退やカマラ・ハリス氏の民主党候補の台頭、ロバート・ケネディ・JR氏の無所属候補表明、そしてトランプ氏の暗殺未遂や裁判の行方など、今年の選挙も前回に劣らず様々なドラマが繰り広げられています。政治のドラマのみならず、投票者間のドラマでもテンションが上がってきているようで、Facebook投稿にも

      • 子供の教育〜言葉と株と性

        しばらく日本にいない間に、日本語が変わって、知らない言葉が増えたのに驚いている。「忖度」って、何度聞いても使い方や意味を調べないと忘れてしまうし、「メンヘラ」とか「アタオカ」とか「ツンデレ」も、日本人特有の4文字縮語で、やっぱりわからなかった。でも、最近言葉で一番驚いたのは、私の英語の生徒で中学2年の子が、「それって承認欲求ですよね。」と言った時。そんな言葉、子供が使うん?って思った私は、カルチャー面でも浦島花子なのだろう。 言葉から少しズレるが、今の小学校、中学校で習って

        • 自分の声を聞くと相手の気持ちがわかる

          何かの講演に行って、内容は素晴らしいのに、惹きつけられるものがなかったり、内容はそうでもないのになぜか大いに感動したり、共鳴したりしたことはありませんか?人に何かを伝える時に、声のトーン、ピッチ、質感、音量、声色などが、その人の印象を全く変えてしまうことがよくあります。その人が伝えようとする内容以上に、一人一人の声のもつ様々な要素が相手に影響を与えるためです。 声にはその人間の深み、感じ方や考え方、知性が如実にでるだけでなく、その時々の心身の状態があらわになります。私の接

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        記事

          学校は人間を育てるところか?(最終回)~ 人間を育てる学校

          今まで、人間の成長を育てない学校の仕組みについて書いてきましたが、それでは、「人間の成長」を中心に据えた学校では、何を教えたら良いのでしょうか?  この最終回では、自分が、こんな学問を学べたら良いなあと思うものを書いてみることにします。全ての科目は心身を通して理論を学び、実践を伴い、演繹法で進めるものとします。すでにある知識を学ぶだけでなく、それを使って実践し、発見し、新しく創造していく方向性です。 『自分学』~  自分について徹底的に学ぶ。セルフイメージ、自分軸、ブロッ

          学校は人間を育てるところか?(最終回)~ 人間を育てる学校

          学校は人間を育てるところか?(その七)~ 繋がることの大切さ

          このシリーズ、(四)~(六)までは、アメリカの教育に焦点を当ててきましたが、今回は、私自身の体験から、もう少し日本の教育を考察してみたいと思います。 私が通っていた当時の小中高の教育では、学校で習う学問に「興味」や、「好奇心」を、あまり持ったことがないような気がします。小学校では授業を聞かずに、すぐ側にあった本棚の本を取り出して読んでいましたし、中学は、テスト前に習ったことを覚え、テストが終わったら頭から出して、次のテストの前にまた頭に入れるというサイクルを繰り返していま

          学校は人間を育てるところか?(その七)~ 繋がることの大切さ

          学校は人間を育てるところか?(その六)~ 自分の価値が評価されていない恐怖

          大学に勤め初めて、8年ぐらいたった時、なんかおかしいなと思い始めました。皆忙しそうに、充実しているかのように働いているけど、そして、車や家を買ったり、子供を育てたりしているけど、充実しているように見えるけど。。。皆、大変疲れています。幸せそうじゃないんです。思い起こせば、自分が大学院生だった時の先生達も、目の下にクマつくって、いつも疲れ切っていました。無理もありません。常に恐怖に晒されているんです。 クライシス・マネージメント。なぜこんなに色々と事件が怒るのかと思うほど、ク

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          学校は人間を育てるところか?(その五)~ 生産性を上げる?

          前回は「競争意識」と「結果思考」についてお話しました。今回はその源を探ってみます。 長年学校教育に携わってきて、学校という機関の一番の目的は、生産性をあげることであるのに気づきました。先生達は、常に学校から「結果をだすように」「教育水準の高さを証明するように」言われています。卒業した生徒が有名になれば、学校の株が上がる。その生徒を育てた先生の株が上がる。先生はそういう可能性のある生徒に、より時間と労力を注ぎ込もうとすることになりますね。私のいた演劇科だと、例えば、有名になり

          学校は人間を育てるところか?(その五)~ 生産性を上げる?

          学校は人間を育てるところか? (その四)~ 競争意識と結果思考

          さて、「知識を身につけて人としての成長を測る」のがリベラル・アーツ・カレッジの本質ですが、その本質を脅かすものが二つあります。 一つは、「競争意識」大概の学校には、成績というものがあり、ABC評価で、Fは落第です。つけた成績は、上の教育委員会に提出しなければならず、あまりAが多いと、成績をつける基準がしっかりしていないのではないかと思われ、基準を細かく正確にするように言われます。私の知っている先生は、一つのクイズは5ポイント、その基準はこれ、プレゼンは10ポイント、その基準

          学校は人間を育てるところか? (その四)~ 競争意識と結果思考

          学校は人間を育てるところか? (その三)~ 自由民として学ぶ

          夢と希望を抱えて1989年に渡米。その後、7年間大学院で勉強し、修士号を獲得、そして17年間、大学で教鞭をとりました。アメリカで言われるところの、リベラル・アーツ・カレッジです。 リベラルアーツ・カレッジ。 日本の一般教養とは違い、もともと古代ギリシャで提唱された概念です。自由民と非自由民に分けられていた時代背景での、自由民として学ぶ技術のことです。プラトンは、よき哲学者、よき統治者、社会をよくするリーダーとなるための必須の学問として文法、修辞学、論理学、算数、幾何、天文

          学校は人間を育てるところか? (その三)~ 自由民として学ぶ

          学校は人間を育てるところか?(その2)~ 私は誰?

          大学に入った私は、悶々としていました。生きる目的を失っていたのです。希望を持って入った、楽しいはずの大学生活は、私にとって、陰鬱なものでした。とりあえず皆がやるように、クラブ活動や英会話やバイトをして、なんとなく過ごしてはいたものの、私の心はいつも沈んでいました。 「何のために生きているの?」「自分がやりたいこと」って一体何?「私は誰?」 そんな疑問がグルグル頭の中の同じ場所をまわりますが、行き着くところがないい。何をしていても生きている実感がなく、充実感がない幽霊のよ

          学校は人間を育てるところか?(その2)~ 私は誰?

          学校は人間を育てるところか

          日本とアメリカと両方の国で、長年教育を受けてきて、ずっと疑問に思ってきたことがあります。 学校とは、人間を育てるところなのだろうか? まず、日本の学校。27年間も通った割には、私は学校が苦手だったようで、小学校一年生の時には、授業中、横にあった本棚から本を取り出して読み始め、親が先生に呼び出されたり、高校では規制の制服を来ていかないでブラックリストに載ったり、とにかく、学校が楽しいとか、行くのが楽しみなんて、ほとんど思ったこともない。上から来るルールが、とても堅苦しかった

          学校は人間を育てるところか

          そのためだけに、何かをする練習

          「そのためだけに」何かをする練習。昔は大の苦手でした。目的を設定して、ゴールを達成する為に行うことだけを、自分に許していたんです。そうでないことをやっていると、頭の中で、「そんなことやっても、どうせ何にもならないから無駄」とか、「そんなことしていられる身分か」なんて声がかけめぐるんですね。それで自分を止めてしまう。ところが、パンデミックを通ってきたせいもあってか、最近私の周りには、今まで出来なかったことを楽しむ人が増えて来ました。私も、目的もゴールも設定せずに、自分が楽しいか

          そのためだけに、何かをする練習

          色を感じる

          最近、夏の片付けをしていて、ふと周りを見回すと、文具や服などに今まであまり使っていなかった色が増えているのに気づきました。 ピンク、オレンジ、青、黄色、紫。私の主流の色はずっとモノトーンでしたが、最近内にこもることが多かったせいでしょうか、明るい色を周りに置いて、気持ちを変えたかったのかもしれません。 誰にでも、この色を身につけると、気持ちが引き締まる、楽しくなるなどの体験があるかと思います。近年では、カラーセラピーなどにも人気が集まるように、色、色と感覚、心理、身体

          色を感じる

          質感と質感はひかれ合う

          「質感」という言葉は、日本語で私が大好きな言葉の一つです。 谷崎潤一郎の『陰影礼賛』に、「羊羹の漆黒」とか「日本の古い家の薄暗い灯」などの細やかな質感の描写が多く出てくるように、西欧文化に比べ、日本文化では「質感」が特に大事にされるようです。日本語に「ひらひらと舞い散る花」「雪がしんしんと振り続けた」のように擬態語や擬声語が豊かなのも、細やかな感じを表わすことが美徳とされているゆえんでしょう。 「質感」には、”物の性質の違いによって受ける、印象や感触などの感じ。”(国

          質感と質感はひかれ合う

          光と影のミステリー

          私たちの心身は、知らずのうちに光と影に影響を受けています。ニューヨークのような都会では、高い建物で太陽の光は遮られ、歩いて何歩かごとに光と影がめまぐるしく変わる体験をすることもしばしばです。太陽が出ているのに、なかなか当たることができない体験をして、光と影に伴う自分の気持ちの変化に敏感になりました。 太陽がサンサンと照る日に、光をいっぱいに吸い込むと、楽しいような、嬉しいような、開いた感覚になり、影の中をずっと歩いていると、内省的になるんですね。また、天気が変わりゆく時、そ

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