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表現の力:自分を表現するとは

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アートに見られる自己表現からパブリックスピーキング、日常の会話まで、自己表現の根源について探る。
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自分の声を聞くと相手の気持ちがわかる

何かの講演に行って、内容は素晴らしいのに、惹きつけられるものがなかったり、内容はそうでもないのになぜか大いに感動したり、共鳴したりしたことはありませんか?人に何かを伝える時に、声のトーン、ピッチ、質感、音量、声色などが、その人の印象を全く変えてしまうことがよくあります。その人が伝えようとする内容以上に、一人一人の声のもつ様々な要素が相手に影響を与えるためです。 声にはその人間の深み、感じ方や考え方、知性が如実にでるだけでなく、その時々の心身の状態があらわになります。私の接

一日を感謝から始める

皆さんは朝起きてまず何をしますか?コーヒーを飲む人、ヨガをする人、スマホを見る人、トイレに行く人。いろいろあると思います。今日私はあることを試してみました。 朝イチで人に感謝したのです。前の夜に、コンサートのチケットを購入したのですが、2枚続けて買ったので、ホールの人が間違っていないかどうか電話してきてくれたのです。 大変親切な人たちだなあと思って、お話ししました。 「わざわざご心配いただいてありがとうございます。とっても感謝してます。」「いえいえ。ご確認いただいてありが

心に残るスピーチの秘訣

以前、パブリック・スピーキングを教えている、ニューヨークでも名の知られる学校に見学に行って、驚いたことがあります。      体がない! 心が感じられない! スピーチの内容は政治のことや自分の体験など、大変面白いのですが、観客を引き込み、「聞かせられる」人が少ないのです。その原因を具合的にあげると、目線を合わせない、声が届かない、体の動きが少ない、中の衝動が外に現れてこない、などなど。彼らのほとんどは、ステージフライトを克服しようとしてクラスに来ているので、上にあげたよう

プロセスの質がプロダクトを決める:アートと食事

私は、’ソマティック教育やスピーチコーチング、アートといった分野に携わっていますが、栄養士の資格も二つ持っていて、食材選びに勤しみ、自分で発酵食品を作ったり、野菜を育てたりすることも大好きです。よく、「なぜ食べ物や食事療法にそんなに興味があるのだ」と聞かれることがありますが、実は食べ物とその人が創り出すアートや、日常での行動や言葉の選び方などが、深く関わっていると思うからです。私にとっては、食べ物を考えることは人生を考えることで、アートを考えることは食べ物を考えることなんです

中が外に滲み出る

ふと目にとまった、ニューヨークのある化粧品店の看板。 "Looking Good Feeling Good" 「外を磨くと中も幸せになれる」「いい気分になりたかったら外見をカッコよく」とか言う意味なのですが、なんだかおかしい。本当にそうでしょうか? 確かに、綺麗な服を着たり、髪や化粧で身なりを整えれば気が上がるということもある。でも、気分が晴れない時、外見をいくらがんばって飾っても、心の中にある心配や不安の元は消え去りません。それどころか、輝く外見と沈んだ中が

オリジナリティとは何か〜アルベルト・ブッリの作品に出会って

何年か前に、グッケンハイム美術館で出会ったアルベルト・ブッリの作品は、衝撃的だった。 ブッリは、その物質感、立体感のある作風で知られるイタリアの抽象画家。軍医として第二次世界大戦に従軍後、アメリカテキサス州の捕虜収容所で1年半の抑留生活を送る中、与えられたキャンバスと絵の具、絵筆を使って独自のコラージュを創作し始め、戦後は医者をやめて50年間画家として活動し続けた。彼の作品に向かう時、「何を言おうとしたのだろう?」とか「何の意味があるのだろう?」などと言う問いかけは微塵