西直紀 最期の自由律俳句集『現金輸送車をじっと見る』
日々の『自由律俳句』が溜まってきたらこの記事に追加していきます。
表面張力の海
不幸を誰かにこぼせる幸せ
豆柴なのか柴なのかは一旦忘れよう
轍ばかり気にするなよ
あの店も あの店も あの店も もう無い
恋人だった時間よりずっと長く思ってた
小籠包に穴開けたくらいでそんなに怒るとは
ほんの少しの会話で報われる
自分探しの旅で見つけた『自分』に期待し過ぎじゃないか？
死んだ時悲しんでほしくないから嫌われたい
此れ見よがしに空を跨ぐ虹だ
仲良くなったら裏切られてみたい
あの子から聞いた内緒話をお前の口からまた聞くとはな
「今ならもっと」と言えたらいいのに
何を忘れてしまったのかが分からない
現金輸送車をじっと見る
言葉の暴力 vs 言葉の刺股
毎月五月病
大の字でうたた寝
ミサンガで手足パンパン
恋はいつも過去形
鯉はいつも過呼吸
でんでん太鼓で眠らせてくれ
妄想なんかじゃない という妄想
半透明だから本物の幽霊だ
スノードームをバーテンダー風に振る
なんて刺さる呪詛なんだ
くしゃみと屁 奇跡のハモリ
『俺の長所』が誰の口からも出てこないまま30分経過
どれだけ旅をしてもそいつは旅人でしかない
理屈抜きで理屈っぽい
リードが長過ぎて犬が見えない
負け犬ロードは今日も快晴だ
ならカッコーの巣では何が育っているのか
嘘じゃない ほぼ嘘なんだ
キツツキって脳挫傷とか大丈夫なのかな
忘れ物コーナーにあった俺からのプレゼント
仏壇の扉をノックする母
18禁 飛び出す絵本
気持ちで持っていかれたあの夏のサヨナラワイルドピッチ
タラレバだけが人生さ
意味の意味がよく分からない
キスもまだなのに組サボテンだなんて
近所迷惑な母のうがい
爆睡後の爆二度寝
少しずつ狭くなるトンネルに入って１時間
こんなに倒れないジェンガ初めて見た
ふかふかの絨毯でホチキスの針を見失った
新年会で完全黙秘
夕日をバックに“魅せる系”の土下座
孤独は最愛の人が連れてくる
好きが高じて嫌いになってしまった
マクドナルドで「いつもの」に挑戦
安全マージンを取りすぎて部屋から出ず
生前葬に誰も来ず
『ぜんぜん無いこと』あるある
遠慮なく嫉妬させてもらうね
闇に紛れておしるこをすするような人生
乾布摩擦の向こう側へ
野球歴8年 ずっとイップス
冷やしホットミルクをホットで
だまらっシャイニング！
知る度に興奮しなくなる病
井戸端会議専用井戸
地球温暖化対策か就活か
宇宙の果ては今日も薄暗い
また煩悩を愛でてしまった
秘技… 居合切らず
全身全霊をかけて飼い殺されてやる
死ぬほど生きる
テロテロがツルツルを兼ねている
便秘クエスト3日目 そして出血へ
この世のものとは思えないくらいの凄まじい猫なで声だな
こぼれ話がこぼれ過ぎている
好きすぎてサヨナラ
除夜の鐘を無心で乱打
ゴキブリが何をしたっていうんだ
万引かず
チラリズムからのポロリズムからのプルルズム
乳母の母乳は誰のもの
怒りを通り越してピカリ！
コモンセンス無き時代を足掻く凡人になりたい
痛くも痒くもないけど超ヌルヌル
ニホンザルですらカタカナなんだからもう諦めろ
罰ゲームから逃げた罰ゲーム
分かり合うために狂い合おう
大妥協したのに即失恋
届け 不届き者
狭い地形で待ち伏せされている
一人四役の麻雀に飽きる
散髪屋へ行く勇気
『相手の嫌いな所しりとり』もうやめないか？
夢占い師が起きるまで待っている
全力で無力
人類に無断で地球独立宣言
ギラついた眼光で傍観している
天才甘えん坊は今日も誰かをいい気分にしている
キミの舐めたリトマス試験紙が見つからない
無駄こそ人生
金婚式で「ずっと生理的に無理だった」と告白される
『理詰めのセンス』とはこれ如何に
イヤイヤ期をこじらせて今に至る
おととし来やがれ
全員が自称少数派であるという煩わしさ
エコー強めで罵ってくれ
徳を積み過ぎて孤立
『豚箱』って表現 豚蔑視すぎる
身振り手振りの禅問答
さりげなく歯型をつけた芋羊羹をキミに
もうあんなことしないなんて言えないよ実際
止まらないんだ 好きだから 倒置法が
グレーゾーンから1歩も動かない胆力
その大輪が最後の花火なのかどうかを僕たちはいつも知らない
目の前にいるのに見えないほど遠い
背徳感に興奮するなんて当たり前じゃないか
本棚に難しい本を並べてるけど読んだことはない
僕の濁した言葉を君はすぐに浄化してしまう
リンゴが落ちたのか地面が浮いたのか
下品な陰口を流れるように発したい
パリピのくせに悩むのか
訳が分かるように訳が分からない事を言うのは難しい
常軌を逸した正気
行間を読みすぎてまだ1ページ目
空に放した風船みたいに遠くへ遠くへ消えていく
地球は今日も淫らに回っている
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