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下北沢の本屋B&Bにて、3/12(日)19時より開催。トークイベント「音楽家の言葉から世界を観る」吉原真里×林田直樹

インタビューって何だろう、とときどき思う。
基本の取材形態ではあるけれど、どの雑誌にもあふれかえっている、最も安易な記事の作り方になってしまっている。
もっとはっきり言うなら、インタビューとは、単なる宣伝対応の形態にすぎない。少なくともその動機においては。

それでもインタビューが面白いのは、誰かと実際に会って話をするという興奮を伴うからだろう。
人と人が会う。本来これほど重要なことはないのだ。

今回の本『そこにはいつも、音楽と言葉があった』は、これまでのエッセイや評論のアンソロジーなのだが、その中にはアルヴォ・ペルトやフィリップ・グラス、ヴァレンティン・シルヴェストロフ、湯浅譲二ら作曲家らと実際に会って話を聞きだしたインタビューも収められている。
その取材当時を思い出してみると、限られた時間と条件のなかで、彼らの音楽を長年聴いてきた思いが凝縮された究極の問いを投げかけることができたと思うし、彼らもそれに対して最大限の深い言葉で答えてくれた。それはオリジナルな、貴重な証言になっているからこそ、できるだけたくさんの方々に共有して欲しいというのが本書の趣旨のひとつにもなっている。
思えば、本書のメインとなっているエッセイや評論も、その多くが誰かと出会った体験から始まっている記述が多い。

いまネットで検索すれば何でも調べられる世の中になって、家から一歩も出なくとも、ある種の嗅覚さえあれば、二次情報や引用の集積によって、誰でも立派なジャーナリスト的な態度を取れるようなった。
だが取材の基本は、やはり人に会うことである。

吉原真里さんの『親愛なるレニー』を読んで特に心を打たれたのは、資料を調べ、徹底的に読むことから始まっているこの本が、最終的に「人と人が会う」ということの重要性を最大限に尊重した作りになっていたことである。バーンスタインに会えばいいというものではない。こういう取材の仕方によってバーンスタインを間接的に描くやり方もあったのだ。
本書のテーマは、バーンスタインと深いかかわりをもった二人の日本人について、あまりにも微妙でプライヴェートな心の領域にかかわることなので、下手をすればゴシップ的な記述へと堕ちかねない危険性もある。
それを最大限にノーブルな精神的問題として丁寧に扱い、ついには二人の日本人からも全幅の信頼を得たところが、吉原さんの取材者としての非凡さを表している。

3月12日の下北沢B&Bでのトークイベントで、私は初めて吉原真里さんとお会いする。いまから確信を持って言えることだが、バーンスタインのみならず音楽と言葉にまつわるあらゆることを、きっと二人で熱く語り合える、かけがえのない機会になることだろう。
ぜひその場に一人でも多くの方にご一緒いただき、当事者になっていただければうれしい。

【3月12日(日)19時@下北沢・本屋B&B】
吉原真里×林田直樹「音楽家の言葉から世界を観る」
『親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語』(アルテスパブリッシング) 、『そこにはいつも、音楽と言葉があった』(音楽之友社) ダブル刊行記念イヴェント開催
詳細はこちら
https://bookandbeer.com/2023/03/12/



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