第6号(2023年8月10日)ロボット兵器が前提化する米英中韓露宇(6月期)
第6号は第5号に引き続き、6月期の話題と論文についてご紹介します。
また、今号からは「量産型カスタム氏」をお招きし、彼の専門であるネットワーク、人工知能、ドローン等の話題を中心とする技術的コメントを掲載いたします。
ロシア側によるFPVドローン攻撃の様子
概要
Rob Lee (https://twitter.com/RALee85/) に6月10日に投稿
要旨
ロシア軍が競技用のFPVドローンにRPG-7の弾頭を搭載し、即席の自爆ドローンとして運用しており、その映像が公開されている。動画ではT-72といった戦車やハンヴィーといったウクライナ側の車両が攻撃されている。
コメント
低コストで運用できるFPV自爆ドローンはウクライナ側が最初に導入し、以前も紹介したようにロシア軍への攻撃で使用してきた。
今回はロシア軍がそうしたウクライナ側の技術開発に、戦争中にキャッチアップしてきたということを示している。戦争中にでも、相手の戦術に対してアジャイルに技術を開発、戦術として運用していく柔軟な開発姿勢が必要である。 (以上NK)
実は戦争中だからこそ、相手国の技術開発とも常に戦うことができるのかもしれません。太平洋戦争中の日本においても、物資の不足にあえぎながらも多数の兵器や戦術が開発されました(かつての戦況の不利は、倫理を無視したひどい開発にも繋がった訳ですが…)。
逆説的ですが、時間的にも、物資的にも、優れた人的戦力にも恵まれているのは平時である今なんですよね。しかも今は皆がメディアを通じて「観戦武官」的な活動ができるわけです。感情ベースの活動も人類の営みとしては大切なことですが、このチャンスを生かせた国が戦わずして勝つ国になるのではないでしょうか。 (以上S)
韓国海軍による有人アセットと無人アセットの協働デモンストレーション
概要
Xavier Vavasseur (https://twitter.com/xaviervav/) に6月10日に投稿
要旨
韓国海軍は、釜山海軍基地内でMUM-T(有人アセットと無人アセットのチーム化)デモンストレーションを行い、その様子がツイートされている。
コメント
韓国海軍は、2040年代までに戦力の45%までを無人化するといった目標を掲げ、戦力の無人化を推し進めており今回のデモンストレーションもそうした動きの一環のように思われる。
アメリカは既に無人アセットで構成される初の任務部隊TF59を、中央軍下に設立している。無人の海上戦力はISR任務だけでなく、追加の弾薬庫としても活用可能であり、海上戦力の無人化で達成できることは多い。
(以上NK)
今回展示されたアセットにはもちろん開発中のものや、実用試験中のものもあると思います。しかしながら韓国軍が目標を妄想にしないために着実に研究を重ねてきた成果の表れであることは確かです。
「先行きが不透明なものに投資はできない」というのは製造業の投資コストや原材料の高騰等を踏まえると当然のマインドです。しかし、考えて、作って、使ってみて、改良して…といったサイクルを繰り返さないことには、何も始まらないのは自明です。韓国軍と韓国企業等の積極的な姿勢は見習うべきだと思います。また、もしも実施しているようであればその事実を(保全を考慮しつつも)ある程度は公表し、戦略的にメッセージを発信していくべきだと考えます。 (以上S)
英海軍は空母でのドローン運用を見据えて、空母の改修を計画している
概要
The Warzone (https://www.thedrive.com/the-war-zone/) に6月2日掲載
原題 ”Royal Navy Wants To Refit Its Carriers With Catapults, Arresting Wires”
要旨
イギリス海軍は現在保有しているクイーン・エリザベス級空母二隻に発艦のためのカタパルトと、着陸の際に使用するアレスティング・ワイヤーを搭載すべく改修を行う計画があることを、Combined Naval Event 2023で発表した。これは多種多様なドローンや有人航空機を空母から運用することを目的とする改修計画である。イギリス海軍は以前から空母からのドローン運用を研究しており、2023年11月にはSTOL機能を備えたモハビ(Majave)ドローンを空母上から発艦させる試験を行うとのことである。
コメント
イギリス海軍は以前よりプロジェクト・ヴァンパイアと言われる空母から発進可能なUAVの開発計画に取り組むなど、空母からのUAV運用に積極的ではあったが、この改修計画はその方向性をさらに強めるものである。
海軍によるドローン運用を進めているのはイギリスだけではなく、アメリカやトルコも同様に進めている。ドローンと空母の組み合わせは潜在的に優れた相性を持つことをイギリスの計画は示唆していると記事では指摘されており、空母からのドローン運用はこれからのトレンドになるだろう。
この傾向は日本においても無関係ではなく、いかに海上においてドローンを運用するかについての研究・開発を技術から作戦コンセプトまで包括的に検討を始めていかなければ安全保障上の優位性を失うばかりでなく、海上でドローン運用を進めていく同盟国や同志国との共同作戦能力にも影響を及ぼす可能性があるのではないだろうか。 (以上N)
世界のトレンドに必ずしも乗っかるのが正しいわけではありませんが、それは熟慮したうえでの選択である前提で、技術が追い付かない、他の特に恒常的な事柄に忙殺されて考えられる状況にないというのは(特に人的戦力に乏しい日本では)避けなくてはならない状況だと思います。
日本を取り巻く状況を考えれば、配備を実現させるべきか否かや優先順位の判断は今すぐできなくとも、配備を選択肢に入れるための技術開発に加えてそれらを活用した作戦運用に係る研究があって然るべきだと考えます。現在各自衛隊では無人アセットの委託調査を公告する等活動していますが、熟慮したうえでどのような運用を想定し、それが結果どこの戦場で誰がどの戦略目標を実現するために扱われるものなのかというプロセスを煮詰めた結果であることを願ってやみません。 (以上S)
米海兵隊はロボット専門の新職種を設けることを検討している
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