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創作集-空想

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#ショートショート

青春

幼い頃、私は近所の小さな花屋さんが好きだった。そこで働くおばさんと、その娘さんはいつも学校帰りの私に温かい笑顔を向けてくれる。
私は2人と軽く会話をして家に戻る。2人は私を可愛がってくれた。誕生日には素敵な花を一輪、プレゼントしてくれた。
私はプレゼントされた花が枯れていくことがとても嫌で悲しくて、泣いてしまうのだ。
それを伝えると、2人はある時ドライフラワーを拵えてくれた。
ドライフラワーは半永

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よめい

あさおきると、
ぼくのよこに

「ぼく」がいた。

「ぼく」は、

「いいか、僕は未来の僕だ。この後。5分後。チャイムが鳴るぞ。絶対出るな」

そんなこといきなりいわれても。

そんなこといきなり言われても。

そんな事いきなり言われても。

僕の横にいる「僕」の首筋に、

デカい傷があるのは何なんですか????

そうおもうと、
消えていた、

チャイムが鳴った、
ほんとうだ

僕は
自然に、自

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bug

例えばですよ。
貴方がこの後帰ってご飯食べてお風呂入って寝る、
そんな行動を当たり前に行えると思ってませんか?
ああ。駄目です、駄目です。
時間というものが平等に与えられていると思ったら大間違いで。

煙草をふかす。

普遍的な時間を過ごしていると、呆けますよ。
私みたいに、朝が夜で夜が朝くらいのつもりでいなくては。

何となく気分が落ち着かないのは何故か。

引っ越したてなのもあるんですが、

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本日もせっせと成分を摂取しては、
夭逝した彼を想う、
何故こんなにも腹が捩れる位に涙を流してしまうのだろうか、
そうそう、
ここには、
そんな希望など隠されていない、
隠居してからというものの、
私は、立場を弁えて、
恐ろしく静粛に過ごしていたのだ、

一匙の湯を私は飲み込んで、
朗らかに、
ただ朗らかに、



電話が鳴る、
久しくそんな経験などしていない、

手に取った時、
全てが壊れた心地

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また、ここに戻ってきた。
何故同じ所に戻ってきてしまうのだろう。

午後9時。

必ず何処かで引っかかる。
家に辿り着きたいのに、どの道を行ってもこの空き地にやってくる。

10度目、またこの空き地に辿り着いた時、私は気が付いた。

時計を見る。

午後9時。

同じ時間だ。

時計は最近買ったばかりなので、止まっている、なんてことはないはずだ。

その時、突如として耳を劈く大音量の何かが聞こえて

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x

出来れば、出来ればなんですけど、目覚めたくないんです。
このまま朝が来なければいいのに、って何度思えばいいんでしょうか。朝が憎い。

まだ、未だ四肢が存在し、
目覚めなければならず、
食べなければならず、

彼奴は決して此方を振り向かず

「あの人が嫌いだからなのか」
「それとも彼奴と共にいるからあの人が嫌いなのか」

分から、ない

「ねえ、」

はい、

話しかけないでもらえますか、

無関心

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センタク

コインランドリーに、よく行く。
家の目の前。
家に洗濯機はあるのだが、壊れてしまってから、何となく買い換えずにダラダラとコインランドリー通いをしている。

近所に住んでいる、嫌いな人がよくこのコインランドリーに現れる。
みすぼらしい格好で、ずっと誰かの悪口を呟いている。

コインランドリーで、洗濯物が回るのを静かに眺めるのがとても好きなのに。
鬱陶しい。

仕事が終わった夜、
洗濯する物なんてない

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今際の際

ジグソーパズルが完成しまして、ワタクシは呆然としていたのですよ、そのパズルは1000ピースもあるもので、1日に10分ずつ。半年かかって、漸く、です。
あー、終わってしまったのだと、呆然としてしまいました、

どんなパズルかって?

どんな。どんなでもない、としか言いようがない。

何故かって、
真っ白だから。何にも描かれちゃいない。

白は、世界の終焉を示すような心持ちにさせるのでとても好きなので

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@

貴方がこうしてちょっとした嘘を、吐いた、今も、
誰かが嚔をして、洟を啜った今も、
同じ時を、進んでいて、
誰かが今産まれて、誰かが死んで
私はその時、何をしてたんだろう、何を?

とっくに冷めたスープを無表情で啜っていた、か。

そしてどこかの誰かは誰かと騒いで、笑いあって、楽しい、楽しい時間を過ごしていると思うと、

この箱で無表情でいる私がこの世で一番不幸なんじゃないかって、

そんな訳ないか

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怨讐

(2020年1月24日作成の掘り出し物)

「待った?ごめんね!」彼女は手を合わせて笑顔で言う。
「…いや。別に、大丈夫だよ」
私は、無理に笑顔を作った。
今日は彼女と遊ぶ。色々な所を回って、食事して。でも、私は、今日は大事な日だ。そう、人生がかかった、大事な日だ───

「どこ行こっか」
「…どこでもいいよ」
「お腹空いたから、あそこに食べにいこう!」
無邪気な笑顔で言う。
「そうしよう」

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感情

少しずつ射し込む光が、私の中に侵食してくる眠気とその虚無を、柔らかく刺激していく。
私はいつからここにこうしていたのだろう。
煌々と照りつけてくる日射しの明るさとは裏腹に、この部屋の中は重く、濁った、痛々しい空気が支配していた。
ここには、どこに。どこに。一体どこに、希望が隠されているのだろう。

友情というものは、所詮表向きの浅いもので、嘘である。仲良しこよしに見えても、本当に心から通じあってい

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悪戯

ある日、箱が届いた。
「箱」が届いた。

最初、実家から仕送りが届いたのかと思ったが、仕送りが送られる時は、必ず前日には連絡をくれるので違う。そして配達員から渡された時、それなりの大きさの箱だったためそれなりの重さがあるのかと思って身構えていたら、拍子抜けするほどに軽く、腰を抜かしてしまった。

奇妙な事に、中を開けると、軽い、どころか何も入っていなかった。

宛名は、「○○株式会社」となっていた

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旋律

出先で、こじんまりとした良い雰囲気のバーがあったので、そこで少し飲んでいくことにした。
カウンターの奥の方の席に座り、当たり障りのないカクテルを嗜みながらボーッとしていると、隣の席に、お世辞にも綺麗とは言えない身なりのおじさんがどさっと座った。

「見ない顔だねぇ。ここ、初めて?」

いきなり話しかけてきた。常連なのだろうか。
バーには似合わない見た目だけれど。

「あ、まぁ…。仕事の関係でこの辺

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遺書

黒い、黒い沼にいつの間にか嵌り込んでいました。一体いつからでしょう。どうせなら、色の無い水槽に溺れたかった。いや、元は美しい池だったのかもしれません。そこに、徐々に徐々に黒いドロドロした液体を流し込まれて汚染されたのかもしれません。
私は、恵まれた人間だったのかもしれません。だから、全ての原因を創り出したのは私自身です。私は我儘でした。鏡の中の世界を、正常な世界だと思い込むくらいには、夢に溺れてい

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