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「わたしが展示会に携わって」 -番外編-

新潟県の海の近くの町にあるハウススタジオ
『Éden de filtre(エデン ドゥ フィルト)』。

代表の藍沢ちひろさんは、毎年4月に南海通商のショールームで行われる、ドイツ・räder社のクリスマス受注展示会のコンセプトや会場内のデザイン・レイアウト・ディスプレイを考案していただいています。
コロナ禍になる前の2019年の展示会では、南海通商展示会史上最高の受注数・売り上げを記録しました。

毎年違った形でraderの世界観を表現してくださる藍沢さんに、展示会にまつわるお話やドイツのギフトメーカー”räder”の持つ魅力について語っていただきました。

― 常に新しい形の展示を見せて頂き、いつも驚きと共に感謝の気持ちで一杯です。

さて、毎回コンセプトはどのように作り出されるのでしょうか?

展示会2
展示会場

「こちらこそ、いつも寛大にアイディアを受け入れ、構想を形にさせてくださり、ありがとうございます。
コンセプトはその年のインポート選別のタイミングから構想を練りますが、それよりも半年程度前から頭に浮かんでは消え、描いては消しを繰り返しています。」

― 一年がかりで考案してくださり、恐縮です。

「アイディアを詰める段階になると、時事的な要素がデザインに影響してきます。
商品の良さを伝えるシーンを、よりリアリティのあるものにしたいと考えているため、あえてそうしています。
私たちだけでなく、最終的に商品を手に取ってくださるお客様も、今その時を生きているわけで、常に互いが変化しているからです。」

― コロナ禍が続く中でも、素敵な展示会場を作り続けて頂きました。その中でのご苦労をお聞かせください。

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rader

「そうですね、思えばもう3年も苦しみましたね。
一度は関東への移動をかなり制限しなければいけないタイミングにあたってしまい、家族や仕事上接する方々を守るべき立場であることを優先せざるを得ず、リモートで仕上げることをご提案させていただきました。
社員の皆様にはご苦労をおかけし、現場に仕上げに行けなかったことは本当に悔しくてたまりませんでした。

そのかわりに新たな道が開け、進化したことがありましたのでとても救われました。
そのことがこのコロナ禍でもあきらめずに、オファーを受け入れることが出来たプラスの面でもあります。
常にハラハラしていることに変わりはありませんが(笑)」

― コロナ禍という様々な制限があるからこそ、イメージ動画の作成や360°VRによるバーチャルエキシビションという、これまでにない新たな形での展示会を開催することが出来ました。

― ディスプレイをする上で特に注意している点はどんなところですか?

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『Éden de filtre(エデン ドゥ フィルト)』代表:藍沢ちひろさん(2022年)

「言語化するのが難しいほど沢山あります。最終的には感覚で決まる部分も多いのですが。

まずは一つ一つの品物の個性・用途が光るポイントが伝わる配置や間を工夫することです。
カテゴリーや品番を乱さずにレイアウトすることは必須なので その中でも自由度を持たせています。
例えば、"吊るして使う"という固定概念がある商品を、あえて置いてディスプレイします。
そうすることでバイヤーさんへのインスピレーションに繋がったらいいなと思い、魅せ方の変化もつけています。

その商品がもともと持っているデザインを邪魔せずに引き立てるための脇役として、植物もよく添えて表現させていただいています。」

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『Éden de filtre(エデン ドゥ フィルト)』代表:藍沢ちひろさん(2019年)

― 今回の展示会のコンセプト『FEEL CALM and ART』はどのように決められましたか?

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2022年展示会のテーマ『FEEL CALM and ART』

「大枠として、まずコンセプトカラーを絞り、空間のイメージを膨らませることから始めました。
常に変化や驚きのある空間を目指すには、過去の展示会とコントラストをつけることが重要です。
そのため、明/暗や寒/暖を区別したり、配色を考えることが先になります。

そうしているうちにカタログから商品を選別するタイミングが来て、眺めながら感情移入をしていきます。
räderが地球環境を大切に守り、愛する気持ちと同じように、私、そして南海通商様からお客様へ何を伝えるべきかをさらに考えていきました。

幸せで平和な世界があってこその私達の仕事であること。
どれだけ恵まれているか、気づき感謝して、人を大切にすること。
文化的宗教的な習わしの中で継がれてゆくクリスマスという習慣は、いまでは国境・人種・習慣をも越えて人々が集い楽しみ、経済も動いていることは貿易ができること、平和であることが大きな前提であると思い、その気持ちを抽象表現を用いて作りたいと考えました。」

展示会場に飾られた絵も、全て藍沢さんが描いたもの。


― 過去にドイツ本国räder社の許可を得て、räderブランドのTシャツデザインを藍沢さんにお願いしました。
その時のデザインのポイントを教えてください。

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rader Tシャツ

「懐かしいですね。とても貴重なお仕事をさせていただきました。
とにかく"räder"の理念とブランドイメージを守り、シンプルで良質なTシャツにするために、着心地の良い生地とパターン、些細なことでも違いが出てくるので、一つ一つじっくり考えました。

生地はカジュアルにもスーツのインナーとしても使えるハリのあるコットンに。
デザイン面でこだわったのは、襟のカーブ、袖の長さ、控えめだけど一癖あるロゴ配置です。」

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rader Tシャツの袖ロゴ

― 藍沢さんが思われる、"räder"の魅力とはなんでしょうか?

「初めて"räder"のデザインに触れたのは、母と営む工房で取り扱う雑貨販売のために買付をしたことがきっかけでした。
当時カタログの末尾に綴られたマネージングディレクターのKathrin Völkerさんの言葉で、一部日本語訳として記されている言葉にも感銘をうけました。

『"räder"の世界は愛があり、幸せを感じ、笑いのあふれた生活を理想とする世界であり、ブランドの製品ひとつひとつは愛情とこだわりから生まれている』

この言葉の背景には具体的な努力や高い表現力がしっかりとあるように感じました。
数年前はまだ、日本中が言葉にも馴染みのない方が多かったサスティナブルやSDGS、エシカル、エコロジカルなどの循環や再生、地球環境への取り組み。
"rader"は長きに渡り、環境に対する配慮や取り組み、支援を当然のように仕組み化されていて、製品づくりから梱包、配送に至る隅々までケアしています。
それは品物を手にするだけで伝わってきました。

そして、理念を守り美しいプロダクトを生み出すため、製品のデザインは工程すべてを社内デザイナーが担っている一貫したこだわり。
生産は世界各地を拠点とし、その土地の材料を用い、その土地の伝統的な方法を尊重して作られるそうです。
ほとんどの材料は土に還るものを使用し、有害物質の有無をテストする。
その上で、美しい詩やメッセージがこもったデザインが毎年生まれてゆく表現力に本当に感動するんです。」

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rader

― "räder"の商品をはじめて買われる方に一言お願いします。

「raderのアイテムがお部屋に一つ入ることにより、そのデザインや質の高さから、場の雰囲気が新しいテイストにまとまるきっかけになり得ます。」

―続いて 『Éden de filtre』についてお聞かせください。

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Éden de filtre

「母が40年間営む革工房に間借りする形で、2011年から花の仕事やワークショップを始めたこときっかけに、この10年で色々な仕事をいただくようになりました。
フラワーデザインで小さな世界を作る作業から、手仕事をいかに伝えブランディングするかといったことにも携わらせていただくようになり、いつしか空間を作る仕事にも発展しました。

地震で倒れかけていた築84年の古屋の改築をきっかけに、スタジオ兼個人事務所を作り、『Eden de filtre』として2021年より独立・活動をスタートさせました。
過疎化して人工の減少が著しい地方のこの街には、若者が憧れ、興味をもつような仕事もなかなかありません。ビジュアルに敏感な世代の方の生き甲斐として、自分自身のやりたいことを諦めず、与えられるのを待つのではなく自ら創って活躍できる場所にこのスタジオが少しでも利用してもらえたらという想いもあり、撮影をする場所、色々な使い方を見出していただける場所として空間を提供しています。

自然光が射し込み、循環する庭の植物と古き良き道具、フローリストとして扱う花々でコーディネートする空間を強みに、唯一無二の表情豊かな場所で在りたいと活動しています。」

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Éden de filtre

― 今後『Éden de filtre』としてやっていきたいことや夢を教えてください。

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Éden de filtre

「スタジオで運営している撮影プランと場所貸しとしての機能が基本となり、小さなお子様の記念撮影や成人記念や、ブライダル等の写真を残していただいています。
開業当初からの目標である、ご高齢の自然体な撮影をもっと増やしていきたいと思っています。
庭に囲まれた静かな一軒家のハウススタジオだからこそ、穏やかに、その方の生きてきた証を刻むことができればと思っています。

また、私個人が思い描く範囲を超えて、関わってくださる方々のアイディアややりたいことが重なり、新しい価値が生まれることを柔軟に受け入れて行きたいです。
これは理念でもあり、「Éden de filtre」のロゴもこの思いから生まれています。」

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「Éden de filtre」logoデザイン


― 貴重なお話をありがとうございました。

これからも、藍沢さんの活動に注目したいと思います。
また、様々な方々のご協力を得て今日がある南海通商の展示会や活動にもご期待いただけたら幸いです。


● Éden de filtre(エデン ドゥ フィルト)
Instgram:https://www.instagram.com/_filtre10101__/


" räder" (レダー)について

●" räder " (レダー)についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

●レダージャパン公式サイト
https://www.rader-japan.com/


展示会について

南海通商株式会社では、毎年4月に展示展示受発注会を開催しております。
興味のある方はぜひ会場までお立ち寄りください。

また、遠方の方でも会場内をご覧いただけるよう、バーチャルでの参加も可能となっています。詳細はHPよりお願いいたします。

●展示会詳細
https://www.nankaitsusho.com/exhibition

●「360°VR - Virtual EXHIBITION」申込受付中。
https://www.nankaitsusho.com/post/%E3%80%8C360-vr-virtual-exhibition%E3%80%8D%E9%96%8B%E5%82%AC%E4%B8%AD



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