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会社の同僚とお墓参りに行ったら、誰かが後ろをついて来た話

怖さ:★★★ 

会社の同僚と2人で、亡くなった先輩のお墓参りに行った時の話です。

その先輩は、同じ職場にいらした方で、喉頭癌でお亡くなりになりました。会社の健康診断では特に異常はなかったけれど、なんか喉の調子がおかしいと病院に行ったら癌が見つかったとおっしゃっていました。

お酒と煙草が好きで、癌が見つかった後も、煙草は吸い続けていました。

優しい先輩で、すごくよく覚えているのが、昔、結構しんどい仕事を一区切りつけた時のことです。社内でもいろいろ言われながらなんとかやり遂げたというタイミングで、その先輩が「仕事が終わったら、ちゃんとけじめをつけなくちゃ」と、そっと飲みに誘ってくれました。上司には日々叱られてばかりでしたが、「ちゃんと見てくれている人がいるんだ」と、文字通り泣けるほど嬉しくて、本気で「救われた」と思いました。

その方のお通夜に伺った時、棺の中に映画の本が何冊か入っていて、そう言えば以前、「映画監督になるのが夢だった」とおっしゃっていたのを思い出しました。

さて、そんな先輩が亡くなって、1年くらいだったでしょうか。たまたま同僚と仕事で外出した時のことです。客先から会社に戻ろうと駅に向かう途中「そう言えば、〇〇さん(先輩の名前)のお墓ってこの近くじゃなかった?」と、思い出しました。菩提寺の名前を確認してみると確かに近くにあります。せっかくだからお参りして行こうと、そのお寺に行きました。

平日の昼下がり、墓地には誰もいませんでしたが、お墓はすぐに見つかりました。新しい黒い石のお墓に先輩の苗字が刻まれていて、同僚と2人、手を合わせました。お参りが終わって「じゃあ会社に帰ろうか」とお墓の出口に向かう途中のことです。

なんとなく後ろを誰かが付いてくるような気がして振り返りました。ちょうど同じタイミングで、横を歩いていた同僚もやはり振り向いたので、あれっ?と思いました。

でも、後ろには誰もいません。

「今、振り返りましたけど、どうかしました?」

「なんか、誰かついて来てる感じしませんか?」

「ですよね……。そんな感じしますよね……誰もいないけど……」

「やっぱり、〇〇さんですかね?」

「ですかねぇ……」

という会話がちょっとあって、そのまま会社に戻りました。

今回、その時の同僚にこの話を書いても良いか確認をしたところ「〇〇さんだったら、喜んでくれるんじゃないですか」と言われて、まあそうだなぁと思って、書きました。

体験者:同僚と私
採取時期:2011年ころ
採取場所:東京都内

「仕事」と、なんか怖い話


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