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2022年個人的映画ランキングトップ9

はじめに

今年見た新作は70本ぐらい。その中で、個人的に刺さった作品をランキング形式でご紹介します。では早速…の前に注意事項。

※ネタバレなし。あらすじというより私にどう刺さったのかという読書感想文のようなものです。客観的な芸術点評価もありません。

※単館系のマイナーな作品を含みます。

※私のプロフィール。30代前半、システムエンジニア、独身一人暮らし、女(別に婚活アピールじゃないっすよ)。この情報は、境遇が近い人ほど紹介する作品が刺さりやすいかもという意味でお伝えしました。




第9位 春原さんのうた

余白の海に溺れそうだ。

■あらすじ
とある女性の日常が静かに描かれた作品。最初は一体何を見せられているのか分からないほど何も起きないが、彼女のちょっとした仕草、心配して会いに来てくれる友人たちとの何気ない会話から、次第に彼女の心には大きな穴が空いていることが分かり始める。そこには、もう会うことの叶わないパートナーの姿が残っていて…。

■見どころ
映画は普通、起承転結、序破急という概念があると思うのですが、本作は恋愛映画のエピローグだけを2時間描写したかのようです。なんの説明もなく物語は一定速度で日常を進みます。だけど、不思議と退屈はしない。それはきっと広大な余白の海の上で彼女の過去と未来を探す旅に出てるからだと思います。

規定の概念をぶっ壊したような超チャレンジ作になっています。

意味深な構図

■感想
日常のだらっとしたシーンが大半、かつ心の変化も僅かですが、不意に孤独が彼女を襲います。慢性的な喪失感が体の隅々まで纏わりついてしまっているかのようでした。

胸が急に苦しくなる瞬間は今も残りながら、周囲の寄り添いの中で日常の価値を噛みしめはじめる。その過程は喪失の「克服」というより「受容」。そしてラストは言葉には出ずとも、彼女の強がりじゃない「大丈夫」を聞けた気がする。そんなほっこりを感じられました。

心の穴は、パズルのピースのように他の人で埋めることはできない。この映画からは、かけがえのなさのすばらしさと失う悲しみが同時に伝わってきます。社会人になるとつい忙しいぶって喪失感にフタしてしまいがちですが、時間で自然に癒えるどころか、より深く刻み込まれてしまうことだってある。本作は、いつの間にか傷口が広がってしまい拗らせた大人たちへ「ちゃんと傷つく」ことを教えてくれているのではないでしょうか。


第8位 ハケンアニメ!

明日も働くぞ。

■あらすじ
自分の夢を叶えるべくアニメ業界に飛び込んだ新人監督が、覇権アニメを作ろうと仲間たちやライバルと共に切磋琢磨していく。好きを貫くことの、苦しさと素晴らしさが描かれてます。

■見どころ
原作は辻村深月さん。彼女の特徴は、登場人物たちの葛藤、苦悩といった心理描写の解像度の高さ。感情移入度をとてつもなく高めてくれます。
また、劇中で作られ公開するアニメ映像のこだわりもポイント。アニメ制作にProduction I.G含めたガチ会社が入り、声優も高橋李依さん、花澤香菜さん、堀江由衣さん、梶裕貴さんと、超豪華。アニメを本気で作ってる人たちがこれだけ参加することが、作品の素晴らしさを裏付けてます。
本作はタイトルが「派遣アニメ」と勘違いされ、初動はあまり良くなかったみたいですが、SNSで日に日に口コミが広がり、公開最終日に満員御礼となるほどの人気になっていきました。

いちいち泣ける。

■感想
私もIT業界にいてよくおもいます。納期もコストもギリギリのラインで、何社もの協力会社をまとめ上げつつ、社内も社外も満足させないといけない。ほんとに毎日吐き気がして、責任の十字形にくくりつけられているかのようです。そしてこのご時世、長時間残業はNGだし、仕様変更ってお金無いと相談すら不可、みんなやる気あるわけじゃないし…。

でもこの映画を見ると、情熱が人を動かすことを信じたくなる。夢を語れよ!理想を目指せよ!好きを貫け!という熱いメッセージによって体の内側から熱くなる。主演の吉岡里帆さんを筆頭に彼らの挫折から立ち上がる姿、誰かに届いて欲しいという願いに何度となく劇中泣いてしまいました。日曜日の夜、仕事が嫌で嫌でしょうがないときこそ見てほしい。今週もやってやるか!ってきっと思えるはずです。


こういうこと言うと、やりがい搾取って批判する人もいるでしょう(たしかに一理…どころか大半当たってる)。ただこの映画はそういうことを言ってるんではなく、みんなで作り上げることは素晴らしいぶんだけ難しいということを伝えたいのだと思います。大人数のプロジェクトを任されたらよくわかるはず、一人一人の意識とかベクトルを揃えることってほんとに難しいです。どこまで作り込むかなんて、人の数だけ解釈があってメンバー放っておいたらぐちゃぐちゃになってしまいます。あとはとにかくクレイジーな輩が多い。期限守らない。ばれなきゃいい。隣の人とすら整合性合ってない。聞いてない、言ってない…想定外行動を取る人がたくさんいるんです。

だから監督がいる。作品の価値を一番に理解し、ここまでやって欲しいんだと伝える役割を担っているんですよね。


第7位 秘密の森の、その向こう

こんなの誰が思いつくんや。

■あらすじ
8歳の女の子は両親と共に、亡くなった祖母の家(祖母と母が昔暮らした家)を訪れ、遺品整理を始める。何を見ても思い出に胸をしめつけられる母は、何も言わずに一人でどこかへ出て行ってしまう。残された女の子は、かつて母が幼い頃に遊んだ森を探索するうちに、母と同じ名前の少女に出会い…

■見どころ
監督は「燃ゆる女の肖像」で世界を驚かせたセリーヌ・シアマ。2時間の物語がラストシーンの一点に集約される圧巻の脚本が特徴的。すべてのシーンが結末に必要な要素になってる。鳥肌立ちますよ。
また本作は、映像トリックを使い、幼い頃の母に出会うシーンを巧みに表現しています。これは文学では表現しきないもので、映画ならではの仕上がりになってます。素晴らしい着想。

ほんとの双子なんだって。見分けつかんわ。

■感想
自分が親になって親の気持ちが分かってきたという話はよくあると思いますが、本作は逆。母が子供の年齢に戻ったら子供は親をどう思うかというファンタジーな作りで親子の関係を再構築させる。こんなのどうやったら思いつくのでしょうか。。

親子という関係は絆でもあり、束縛でもあるとおもいます。母が親じゃなく仮に同級生だったら、わたしは絶対彼女と友達にならない自信があります(笑)。きっと同じクラスでも別々のグループでしょう。今、わたしたちが親子でいられるのは、血の繋がり、親子の形式のおかげです。
ただ一方で、私は常に母に対して、一人の女性である前に「母親」という役割を求めてきました。彼女が時にはイライラしたり、疲れてたり、悲しいことがあって、理不尽に叱られたこともたくさんあります。でも本当はそんなときこそ寄り添ってあげるべきでした。いつも元気ハツラツなお母さん像を押し付けてしまってました。

この物語では、ほんのちょっとの間だけ、親子を対等にする(同い年にする)ファンタジー要素を入れ、悲しみを分かち合う瞬間を描いています。こんな風に私も母を一人の女性として理解し、労ってあげられたらなと思いました。


第6位 みんなのヴァカンス

夏よ、終わるな。

■あらすじ
女の子、もてない男、水遊び、サイクリング、嫉妬、諍い……。勢いにまかせて夏を謳歌しようとする若者たちの姿を、やさしい眼差しで描いた青春映画。南フランスのきらびやかな風景の中、不器用で愛おしいヴァカンスが、静かに映し出されていく。

■見どころ
特に無し(笑)。いや、本当にいい意味で癖がない。フランス映画らしく、くすっと笑えるシーンがちょこちょこ出てきて、登場人物たちもウザかわいいやつらばかり。もうずっと見ていたい。終わった瞬間は、え?もう??という感じ。夏休みが終わるときの切なさなのようでした。
たしか、役者陣の演技を自然体にするために、設定キャラと役者の素の性格が同じになるようにしているはずです。(役者に合わせて脚本弄ったのか、脚本に合わせて役者を選んだのか、たしかどっちかだったと思います)。もうね、ホームビデオを見てるようなほっこりで、ニヤニヤ止まりません。

誰かのアルバム見てるみたい

■感想
あらすじだけ見ると、誰でも作れんじゃない?と思ってしまうような内容。だけど、なんてことない映画を作ることほど難しいものは無いと個人的には思います。銀行強盗とかヘリコプター墜落、銃撃戦、一生の恋もココにはない。平凡で退屈かもしれない。だけど、彼らの視点から見たこのヴァカンスは、最高にドラマに溢れています。あなたの人生の主人公はあなたでしょ?と教えてくれてるかのようです。

誰かに出会いつながることがこんなにも人生を色づかせてくれるんだと再認識させてもらいました。ちょっとした雑談とか、実はとても貴重なんですよね。私達が、コロナ禍で失ってしまったものがここにある気がします。


第5位 モガディシュ 脱出までの14日間

実話をもとにした社会派エンタメ。

■あらすじ
1991年ソマリアの内戦が激化し、反乱軍が首都モガディシュを制圧。命の危険にさらされた外国人たちは生死をかけて脱出しようとしたが、その中に韓国大使とその家族たちがいた。運命のいたずらにより、敵対していた北朝鮮の大使たちと、脱出への死闘を共にしていく…。

■見どころ
2021年韓国No.1ヒットとあるだけに、スリリングなストーリー展開、迫力満点のアクション、普遍的な人間ドラマ、どれをとっても超一級品でした。南北が手を取り合う過程とその結末が、安っぽいお涙頂戴じゃない所が特にすばらしかったです。
特に、ソマリア反乱軍から逃走するカーチェイスの迫力は凄まじいもので、No.1と言われて納得。お金の使い方半端ないです。撮影場所はモロッコの都市(当然、ソマリアは渡航すらできないので撮影も不可)で一からセットを作ったらしいです。日本もよく海外撮影とかやってますが、けっこうなんちゃってですよね、、負けるな日本!

これが作りものなんだよね

■感想
なんといっても、韓国と北朝鮮の融和。ネタバレしてしまうので詳しくは書けませんが、仲違いしてた彼らが一つの目標、生きて帰るために心を通わせ始める過程が素晴らしいんですよね。これ泣かない人いるのでしょうか???
ラストの別れ方も良かった。彼らは公にはつながってはならない人たちなんですよね、だから最後は・・・この後は配信で!

それと、本作は内戦の悲惨さをかなり残酷に描いてます。別にグロテスクとかそういうことじゃないんです。反乱軍の子供たちがへらへらしながら銃乱射している。未来を担う子供たちがですよ。絶望的でした。

ソマリアは長らく紛争が続いていて、いわゆる無政府状態(あるんだけどろくに機能していない。ただ一方で今はもうかなり安定しているという記事もありました)。なんとか安定させようと欧米諸国が政府を援助しても、結局反乱軍の怒りを買い、紛争は激化。でも助けないと政府はコテンパンに潰されてしまう。このジレンマは他にもシリアや、最近米軍撤退ニュースがでたアフガニスタンもそうですね。

戦えなくなるまで大量に血が流れるのを静観するしかない。先進国は介入を諦めるという決断を下しています。ただそれが無責任かどうかは私の口からは到底言えません。ほんとに無力です。

ソマリアという国は形式上一つの国家だけど実態は内部分裂している。一方、朝鮮は、韓国と北朝鮮とに民族が国で分断されたが、こうして手を取っている。何が国家としてのあるべき姿なのでしょうか。


第4位 三姉妹

絆を分けてもらえた気がする。

■あらすじ
プライベートがズタボロな三姉妹は、なんやかんや仲良しで、傷を舐め合いながら日々を生きている。三人揃うことはほとんどないが、父親の誕生日会のために久しぶりに帰省し一堂に会する。牧師様も同席し、祈りが捧げられる時、思いもよらぬ出来事が…

■見どころ
彼女たちの日常は、不倫され、酒に溺れ、子供に無視され散々なのですが笑えちゃうんですよね。発狂してるシーンとか最高ですよ。それだけ彼女たちが強いということだと思います。笑い飛ばしてくれと言わんばかりです。よくある「女性=可哀想」という弱い立場で描くようなことはしていません。

男女問わず、結婚、子供の有無問わず、社会で生き抜く人々に見てほしい作品だと思いました。みんな大変だよねって感じられるだけで少し心が軽くなる。血は繋がってないけど、彼女たちから姉妹の絆を分けてもらえた気がします。

ええ顔してる。

■感想
三姉妹それぞれの家庭の苦悩、境遇は自分と全然違いますが、深く刺さりました。

歳を重ねると、誰しも家庭や職場では「大人」という役割を担うようになりますよね。自身の気持ちを最優先にすることはほぼ無くなる。疲れたとか、帰りたいとか、あいつ嫌いとか、やりたくないとか、言えなくなる。耐えることこそが「大人」なんだと、感情に蓋をする。

でも、そんなことずっとやってたら死んでしまいます。私もちょうどこの時期、ほんとに忙しくて発狂しそうでした。でもどうすることもできない。仕事を放り出すのも物理的には可能だけど、無責任なことはしたくない。同じ苦しみを他の誰かに背負わせるのは、プライドが許さない。

そんなときこの映画を見て救われました。私の分まで彼女たちが代わりに叫んでくれた気がして、涙が止まらなかったです。てめえらいい加減にしろよって、彼女たちが変わりにブチ切れてくれたのが嬉しかった。自分は独りじゃないのだと思うことができました。


第3位 誰かの花

何時間でも語り合いたい。

■あらすじ
認知症を患った主人公の父が暮らす団地で、ベランダから落ちた植木鉢が住民に直撃した事故が起きる。事故に巻き込まれてないか、父の安否を心配して家に駆けつけると、何事もなかったかのように父は部屋にいた。だがベランダの窓は開き、父の手袋には土が。一転して父への疑いを募らせていく…

■見どころ
人間の猜疑心、罪悪感、正義感をここまで解像度高く描いた作品は他に類を見ません。伏線や意図的なミスリードが細部に散りばめら、どのように紡いで物語を完成させるかは観客に委ねられます。登場人物たちを見ていたつもりが、いつの間にか自分の人間性や犯した過ちに向き合っているのです。

敵と味方は誰だと思うか、自分ならどう行動するか。一つ一つの問いが心理テストのようです。ぜひ、一緒に見た人と、語りあってみてください。絶対意見割れると思います。笑

ちなみに本作は、シネマ・ジャック&ベティの30周年作品。私の行きつけです。ミニシアターの力をいかんなく見せつけてくれました。

ジャック&ベティ

■感想
主人公に痛く共感しました。彼は、父が犯人かもしれないということを感じ確信に近いものになっていくのですが、事故の責任を遠ざける行動を取り始めます。全く褒められたことじゃないですが、これは、良い悪いということではなく、人間の防衛本能だと思います。重圧に怯える感覚はみなさんも感じたことがあるのではないでしょうか。失敗したらどうしようって、それを隠蔽したり、なすりつけたりするときの人間の行動力は異常です。

そしてこの映画でもう一つ重要な点は、悲劇は悪の意志がなくとも起きるということ。誰かのために行動してたのに、それが誰かの恨み妬みを買ってしまうことがある。善意だけで生きてても争いは起きる。これはあまりに残酷な現実です。

誰かを想う気持ち(タイトルにある誰かの「花」というのは、この気持ちを指している気がします)は誰にとってもプラスに働いて欲しいと、青臭さくても願わずにはいられません。この映画は徹底的に絶望を描きながら伝えたいのは希望である。私はそう願っています。


第2位 わたしは最悪。

いいや、最高だよ。

■あらすじ
主人公は30歳という節目を迎えたが、人生はどうにも方向性が定まらない。いくつもの才能を無駄にしてきた。年上の恋人は作家として成功し、しきりに身を固めたがっている。ある夜、彼女は招待されていないパーティに紛れ込み、若くて魅力的な男に出会う。年上の成功者の彼と別れて新しい恋愛に身を投じ、人生の新たな展望を見出そうとするが…。

■見どころ
結婚、子供、仕事…30歳という境目で(特に女性は)あらゆることの選択を強いられます。思い悩む人は多いでしょう、私もそうです。あれやこれやを計算して、でも結局何も選ばず問題を先送り。わたしはダメ人間だ~と思ったとき、ぜひこの作品を見てほしいと思います。きっと背中を押してくれるでしょう。

エスカレーターに乗って生きてきた頭デッカチな私とは正反対。彼女は感性に従い出たとこ勝負の人生。ドラマに満ち溢れている。全部が論理立っている人生なんて退屈でしょと言わんばかりです。こんなの普通できない…でもだからこそ、彼女は最高にかっこいい。

タイトルの意味は、
わたしは最悪(誰かにとってはね。だけどわたしにとっては最高)という反語が込められていると思います。

生まれ変わりてぇよ

■感想
人生っていついかなる時も何かは必ず欠けていて、全てが満たされる瞬間って目指しているだけで結局起きないんだろうなと思います。刺激と安定、最高のキャリアと家庭、自由な時間と子育て、両方掴み取るのが不可能とは言いませんがかなり難しい道のりであり、実力だけどうこうなるものでもありません。だから大抵の人は、何を掴み、何を捨て、誰を傷つけるのか、考えないといけない。

彼女が最も強いと思った点は、例え誰かを(時には自分を)傷つけてでも自分の人生を歩むんだという意志です。普通、諦めちゃいますよね。彼氏が可愛そうとか、子供が寂しい思いをするんじゃないのかとか。でも、妥協した先に自分の人生はあるのだろうか?彼女はそこを突き詰めるんですよね。別にそれが正しい生き方とは言ってなくて(実際彼女は自分のことを最悪と言ってますからね)、わたしはそう生きたい。という強い意志。なんとなく生きてる私にはぐさっときました。


第1位 ちょっと思い出しただけ

全アラサーに告ぐ。見よ。

■あらすじ
照明スタッフの照生と、タクシードライバーの葉。物語はふたりが別れてしまった後から始まり、時が巻き戻されていく。愛し合った日、喧嘩した日、冗談を言い合った日、出会った日・・・コロナ禍より前の世界に戻れないように、誰もが戻れない過去を抱えて生きている。そんな日々を“ちょっと思い出しただけ”。

■見どころ
30歳過ぎでの破局→20代での出会いへ、遡るほどに二人がキラキラしていき、最高潮のエモ度で現実に返ってきます。この”ちょっと”というタイトルが効いていて、大好きだった元カレを忘れたわけではないし、彼と過ごした時間の延長上に今があるというのは分かっているけれど、彼を恋しいと思ったり、あの頃に返ってやり直したいという思いは、歳を重ねるごとに薄まっていく…。刺さりすぎてわたしはエモ死。大恋愛したあなたも、夢見ただけのあなたも、見るべき作品です。

あと、伊藤沙莉さんの演技がとにかく素敵でした。いや、もはや演技かどうかもよく分からなくなってしまいました。自然で素の彼女を見ているような感覚だったからこそ、この映画に対する共感やエモさが高くなったと思います。ちょっとしゃがれた声で彼とじゃれ合うのとかね、ケーキ食べたり、花火したり、映画見たり、タクシーで吹き戻し、…最高かよ。

4回エモ死にました

■感想
この物語で特に良かったのは、次の一歩を踏み出した二人の「今」を起点に過去を描いている点です。変に美化や後悔をせずただあの頃を抱きしめているかのような、心地良い余韻に浸ることができます。

20代やコロナ前と今を比較してしまうと、たしかに、身を焦がす恋も、友達とのオールも、胸を踊らせ働くこともなくなった。だけど、今が不幸せというわけでもないでしょ?と背中を押してもらった気がします。

30歳を過ぎ、お肌のシワも増えました、下っ腹の肉は永久になくなりません、深酒は翌日にしっかり残る。まぁでもいいじゃないですか。歳取ったねって、長い付き合いになった友人や家族、新しいパートナーたちと思い出を語れたら。たとえ最高潮でなくとも別に良いよなって思えたら、それが「大人」ということなのではないでしょうか。

満点じゃない人生も悪くないよね。


さいごに

長ぇな。語りすぎました。出し尽くしたので言うことなし。ありがとうございました。普段はtwitterでほそぼそ感想やってますよ〜 @mukkurikurikuri



おしまい

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