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毎日がバースデー【短編小説】サクッとショートショート!

「毎日が誕生日なら良いな」と思った。

それが過ちの始まりになるとは、その時の僕には思いもしなかった。

彼女との出会いは偶然だったのか、仕組まれたことなのか、今となってはわからない。

しかし、その時の僕は彼女と出会えた事に、神に祈りを捧げたくなるくらいに感謝をした。

30歳になるまで、僕の人生に女性というものは存在しなかった。

クリスマスやバレンタインデーには、まるで他人事のように考え、他人と比較すると自分が卑屈に思え嫌だった。

だが、僕は彼女と出会った。

仕事の帰り道、美しい女性が僕の方を向いて立っていた。

それが彼女との最初の出会いだ。

僕が彼女の横を通り過ぎた後に、彼女が僕に声をかけてきた。

それは告白の言葉だった。

生まれて初めての告白をされ舞い上がった。

だが何か悪い予感もした。

こんな綺麗な女性が、僕に告白するはずがないと僕はすぐに考えた。

でも僕の人生で、僕が女性と付き合えるのは、このときしか無いかもしれないとも思った。

僕は騙されても良いという思いで、彼女の告白を受け入れた。

それからの毎日が、まるで別の人生かのように輝いていた。

すぐに彼女と同棲をし、仕事から帰ると彼女は僕のために、かなり手の混んだ手料理を用意してくれる。

それから寝るまでの時間は、彼女との幸せな時を過ごす。

休日にはいろいろな所に出かけた。

今までの休日は家に引きこもり、ネットやゲームだけで一日を過ごしていた。

しかし今は、毎週彼女とどこへ出かけようかと考えるのが楽しい。

彼女と付き合えて本当に幸せだ。

―――そのときは、そう思っていた。



今日は僕は誕生日だ。

彼女はケーキと豪華な料理を用意してくれた。

PM8時になり彼女が「誕生日、おめでとう」と言ってくれた。

その料理を彼女と楽しく会食した。

彼女が僕の誕生日を祝ってくれたのが嬉しかったのか、その日は彼女と出会って一番と言っていいほど、僕は幸福感で包まれていた。

そして食事がほぼ終わりかけたとき、僕は彼女との幸せな日々をしみじみと実感していた。

不意に僕は、彼女の目を見つめ何気ない言葉を口にした。

「毎日が誕生日なら良いな」

その言葉を聞いた彼女はとても嬉しそうな表情を浮かべ、誕生日プレゼントがあると言い、台所の方へと向かって行った。

そして戻って来た彼女の手には、何故か包丁が握られていた。

僕は包丁を何に使うのだろうと戸惑った。

包丁が誕生日プレゼントなのだろうか?

……そんなはずはない。

すると彼女は包丁を握りしめたまま、更にジリジリと僕の方へと歩み寄ってくる。

僕は怖くなり、椅子から転げ落ちそうになった。

「冗談は止めてよ」と僕は苦笑いをしながら彼女に訴えた。

だが、彼女は笑みを浮かべながら僕の真横に立つと、手に持った包丁を高々とかかげた。

僕は恐怖と混乱で椅子に座ったまま硬直していた。

すると彼女は、全くの躊躇もなく、手に持った包丁を振り下ろした。

包丁は僕の首の付根の刺さった。

今までの人生で経験したことのない激痛が走った。

呼吸するのも苦しく、状況が把握できない混乱と痛みで僕はどうかなりそうだった。

包丁は勢いよく刺さったため、刃渡り20センチほどもある包丁の半分は、僕の体内へとめり込んでいる。

そして大動脈が切れたようで、包丁が刺さった部分からは、まるで噴水の水が噴射したかのように僕の血液が大量に飛び出した。

その血液を彼女はシャワーのように浴びている。

彼女の顔は僕の血液で真っ赤になった。

その状態で彼女は今も満面の笑みを浮かべている。

そして彼女が、こう僕に告げた。

「死ねば、また誕生日が祝えるわよ……」

彼女は一体何を言っているのだろうか、僕には理解ができなかった。

そして僕の意識は遠のいて行く、だが気が狂いそうな痛みが徐々に和らいでいく……。

僕はこのまま死んでしまうのだろうか。

彼女は本当は僕を殺したいほど恨んでいたのだろうか。

今となってはもうわからない。

ただ、この痛みから開放できるなら死にたい……。

そして視界が暗闇に包まれていった―――。



次の瞬間、視界がパッと光に包まれていた。

僕は死んでおらず、目を開いた前には彼女がいた。

僕は状況が理解できず、周りをキョロキョロと確認する。

さっきまでの痛みもなく、首の刺しキズもない。

僕は椅子に座り、目の前のテーブルにはケーキと豪華な料理が並んでいる。

この料理は、彼女が僕の誕生日に用意してくれた料理とまるで同じだ。

どういうことなのだろうか。

まさか、さっきの出来事すべてが夢だったのか?

いや、そんなはずはない。

そのとき僕の時計が目に入った。

そこにはPM8時となっている。

すると彼女は言葉を発した。

「誕生日、おめでとう」

それを聞いた僕は、今が現実か夢なのかわからなくなっている。

しかし、僕の両手は震えている。

そして底しれぬ恐怖が僕を絶望へといざなう。

彼女に殺された痛みと苦しみが鮮明に蘇ってきた。

僕は恐ろしくなり、椅子から転げ落ちてしまった。

すると彼女は猛スピードで、台所へと走って行った。

戻ってきた彼女は包丁を握りしめて、倒れた僕に馬乗りになると、包丁を高々と上げた。

そして、彼女はこう囁いた。

「たま誕生日を祝いましょう」

そう言うと、彼女は前回のように僕の首に包丁を深々と刺した。

今度も意識が飛びそうなくらいの激痛が走る。

二度とは味わいたくないほどの苦しみを、僕は短時間で二度も経験した。

僕の首から噴射した血液が、彼女の顔へと発射される。

彼女は血液で真っ赤になった顔で、今度も満面の笑みを浮かべている。

彼女は一体なんなのだ?

僕は激痛と現状を理解できないまま、徐々に意識が遠のいていく。

この激痛から開放されるなら、早く死にたいと思った。

そしてまた視界は暗闇に包まれた―――。



目の前が明るくなる。

そして僕の前には彼女がいる。

テーブルの前の料理も、さっきと同じだ。

時計はMP8時になっている。

そして彼女はこう言う。

「誕生日、おめでとう」


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