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「スーパーIT市役所」ショートショート

未曾有のウィルスが蔓延し、外出することも困難になった。

そのため、ほぼ対面で対応していた市役所業務も、IT化せざるを得なくなった。

「というわけで来月から、受付を全てIT化します」

「とはいっても、いまほとんど全部を手作業と紙でやっているのですが・・・」

「しかし、法律でもう市役所に人を来させるのがNGになりました。そのため、来客対応はできません」

市役所員の言葉に、国に雇われた導入推進コンサルは無碍に言い切る。

「訪問前提の仕組みはすべて、NGです。国がもう決めたことです」

ーーーーーー

「まぁ強引だけどよかったのかもしれないですね」

「そうね。こういう機会でもないと効率化が進まないもの」

若い2人の職員はそういった。

市役所の仕事はもう何十年もやり方が変わっていない。変えようと思った人も抵抗にあって、最後には諦めてさってしまう。

しかし、今回はさすがにやり方を変えざるを得ない。観念せざるをえないだろう。

「これでちょっとは、よくなってくれるといいなぁ」

ルーチンワークだけで過ごしていた男は、大変かもしれないが、IT化に期待していた。

ーーーーーーーーーーー1ヶ月後

「はい。はい、では、その内容を全て、メールに書いてください。とりあえず、全部書いてください」

「このメールはどこの人がやるんだい?」

「メールだとわかりずらいから、全部印刷しよう」

「印刷したものを、各課に割り振りましょう」

「色々な要件が書いてある場合はどうしたら?」

「その分をコピーして、それぞれ担当する分だけやってください」

「はい。受付はメールで、回答は手紙になります」

「稟議書もPDFで。届いたら印刷して押印して、スキャンしてください。次のひとは届いたら、印刷して、押印していってください」


「これが・・・・・・IT化」





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