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連載小説「オボステルラ」 【第三章】14話「ふたたびの遭遇」(3)


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第三章の登場人物



14話 「ふたたびの遭遇」(3)


 「さて、では、まあ、うろつくか」

 飲み屋街に到着したリカルドとナイフ、エレーネ。といっても、飲み屋街という以外にアテはないので、3人でおしゃべりでもしながら歩き回るしかない。

 ナイフはリカルドの様子をチラリと見た。ゴナンが無事戻ってきてリカルド本人の調子も戻ってきてはいるが、それでもやはり、まだいつものふてぶてしい感じが薄いように思える。

「…何?」

「リカルド、あなた大丈夫?」

「え? 何が? 今日は髭もきちんと剃っているし、夜もきちんとベッドで寝ているから」

「高熱のゴナンの腕を握って…? まあ、いいけど…」

エレーネが界隈をぐるりと見渡す。

「それにしてもこの辺りは、迷路のように路地が入り組んでいるのね」

「ええ、もともとはこの街でお酒を出すお店の出店地域が制限されていて、狭い区域の中に皆が無秩序に店を建てていったのが始まりらしいわよ」

3人がいる路地も道幅が狭く、場所によっては縦列にならないと歩けない。そして、お店の入口もあちこちを向いていて、なんとも複雑に入り組んでいる。

「そうなのね。普通に散策する分には楽しいけど、人を追うのにはとても厄介な場所ね…」

「だからこそ、卵男は飲み屋街を選んでうろついているのかもしれないわね」

それにしても、卵を背負ってチラチラと姿を人々に見せ続ける目的が今いちわからない。ナイフの見立てによると、卵で人を『釣っている』ように見えるが、それは何のためなのだろうか…。

 と…。

ひゅん、と3人の前を横切る人影が見えた。ゴナンに似た背丈の、少年で、その背中には…。

「…卵……!」

リカルドが思わず声を挙げる。ナイフが一度遭遇した、大きな卵のようなものを背負った『卵男』である。その男はリカルドがそう叫ぶのを一瞬気にした様子だったが、すぐに走り去った。

「あら、いきなり見つかるなんて」

「…追いかけよう!」

リカルドがそう声を掛けて一歩踏み出そうとしたとき、ナイフが「待って!」と止めた。そして卵男が去った方と逆を見ると…。

「…げ、皆さん、おそろいで……」

「ヒマワリちゃん…!」

卵男を追いかけていたらしいルチカが現れた。手にはすでに、伸びた状態の棒を持っている。3人に道を阻まれ、ふう、と苛立ったようにため息をついた。

「今日はみんなで仲良く卵追いかけてるの? ミリアさんとゴナンは? ミリアさんに聞きたいことたくさんあるんだけど。居場所教えてくれない?」

「……ヒマワリちゃん…、ルチカ。せっかくだから、君も一緒に卵男を追いかけようよ」

リカルドはルチカの質問には答えず、微笑みながらルチカに声を掛ける。しかし、返事の代わりにルチカはリカルドに対して、棒で打ちにかかった。リカルドは慌てて抜剣し受ける。

「へえ、あなたのその剣はお飾りじゃなかったんだ」

「…この伸び縮みする棒、金属製なんだね。剣の刃にも負けない強度だ、でも重量は軽そうだね。伸縮の仕組みはどうなっているんだろう? 機械式?  バネ式? でもそうだとすると、縮む仕組みが難しそうだし、駆動の音がしないなあ」

剣で受けた棒をまじまじと見て、立て続けに質問するリカルド。



ルチカは何か言おうとしたが、すぐに止めてリカルドの剣を弾いて間合いを取る。

「何、呑気な質問してんの? 私はあなた達を打ちのめそうとしているんだけど」

「ルチカ。だから、どうしてこっちに向かってくるのよ。あの卵男をさっさと追いなさいよ」

リカルドを威嚇するルチカに、ナイフが尋ねる。苛立った顔になるルチカ。

「だから、ライバルを消したいって言ってるでしょ?」

「目の前に現れた卵を見逃してまで?」

ナイフがそう尋ねるが、ルチカは答えない。エレーネがさらに追及する。

「…もしかしてあなたは、さっきの男の卵がニセモノだってわかっているの?」

「……」

これにもルチカは答えない。



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