連載小説「オボステルラ」 【第三章】14話「ふたたびの遭遇」(4)
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14話 「ふたたびの遭遇」(4)
「卵がニセモノだと、分かってる……?」
エレーネの台詞に、ナイフは首を傾げた。
「…え、でも、ニセモノだと分かっているのにしつこく追っているのはなぜ?」
「…あの卵が本物かどうかは、関係ないでしょ? あの男が巨大鳥につながるんならね。私はとにかく情報が欲しいの。でも、それよりあなた達をここに留める方が、もっと優先事項」
そう言って、ルチカは一旦、棒を短く縮める。そのギミックに瞳を輝かせるリカルド。どうしても仕組みを知りたいが、先に違う疑問を投げかけた。
「…君は、ミリアの地図を元にこの街に辿り着いたんだろう? あの卵男を見つけたのは偶然?」
「……偶然ではないよ。あの卵を背負った男の件は、とある筋から情報を得てたの。まあ、あの地図も役に立ったけどね。びっくりしたよ。今まで、巨大鳥が何かのルールに従って飛んでいるなんて考えもしなかったから」
「そうだよね!」
リカルドはさらに瞳を輝かせる。
「…まさか、特定の『水脈』だけを巡っているなんてね」
「…まさか、『気流』に乗って移動しながら周回をしているなんて」
リカルドとルチカは同時に違う内容を口にして、「ん?」と互いに顔を見合わせた。
「……『気流』?」
「……『水脈』?」
ルチカはしまった…、と口に手を当てる。リカルドはさらに前のめりになってルチカに迫る。
「気流って、どういうこと? ルチカ、君はあの地図を見て気流だと考えたってこと? 同じ地図を見て、僕は水脈だと思ったんだけど……」
「……」
「そもそも、空の上の『気流』のことだよね、君は気流を読めるの? 専門家でもなかなか難しいことだよ」
リカルドがさらにルチカに迫る。少し苛ついた表情を見せたルチカは、答えずに、動いた。
「リカルド…!」
ナイフが叫び、直後にルチカの蹴りが飛んできた。避けきれず、またアゴに蹴りを食らってしまい尻餅をつくリカルド。
「……いった…」
「…水脈とは、考えもつかなかったな。これはちょっと調べてみないと…。でもその前に、ここで消えて」
そう言ってまた棒をシュッと伸ばすルチカ。瞬間にガンと剣を弾いた。エレーネがものすごいスピードで、レイピアの突きを繰り出してきていたのだ。
「…エレーネさん、はやっ。怖いねー」
「やられる前に、やらなければね。私はこちらの博士ほど呑気ではないのよ」
レイピアを構えて煽るエレーネに、苦笑いをするルチカ。その隙にナイフも逆方向で警戒する。リカルドも立ち上がり、再度、剣を構える。
と、ルチカが一瞬、視線を横にやる。ナイフがそちらを見ると、卵男がまた、逃げもせず一同の争いを見ていた。
(…やっぱり、卵を狙う人を『釣り』に来てる……?)
双方を気にしながら、ナイフが卵男の方にジリジリと近づく。
すると突然、ルチカは件の空気銃をナイフに向けた。
「!」
ナイフは即座にかがんで避けようとする、が、ルチカは撃たない。そのまま銃を腰袋に収めると、エレーネに棒で打ちかかり、レイピアで受けた彼女を力押しで倒した。その勢いでリカルドの剣を棒で叩き落とすと、そのまま胴を蹴る。ちょうどレバーに入り、悶絶しうずくまるリカルド。
(……?)
ナイフは、そのルチカの不思議な動きを疑問に感じた。さらに、何かのゾッとした感覚が…。一瞬考え事をしたナイフが体勢を整える隙に、ルチカはナイフの前を走り去っていく。いつの間にか卵男はいない。その後を追っているようだ。
「ルチカ…!」
「ハイ、サヨナラ。もう二度と追ってこないで。卵も追わない方がいいよ」
ルチカはそうナイフに伝えると共に、小袋を地面に投げつけた。そこから白煙が立ち上る。ストネの街でも食らわせていた、催涙剤である。
「エレーネ、煙を避けて!」
そう指示して、リカルドの首根っこを掴んで自身もぐっと後退する。煙が晴れたときには、もう卵男もルチカも、気配はなかった。
「ナイフ、追う?」
エレーネがレイピアを収めながら尋ねるが、ナイフは首を横に振る。
「……ちょっと、気にかかることがあって、追わない方がいいかもしれない…」
「?」
そう言ってナイフは、先ほどルチカがエレーネを押し倒した辺りの地面を探る。そして、予想通りのものを見つけた。
「……吹き矢…?」
「え?」
↓次の話↓
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