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八潮七瀬
2018年1月22日 21:02
女性は誰でも一度はお姫様ごっこをしたことがあるのではないだろうか。面白いことに、そこで選ぶお姫様の傾向は、大人になった時にどんな人生を歩んでいるかに直結していることが多い。オーロラ姫を好んだあの子は、注目を浴びるのが好きで恋人を絶やさなかった。シンデレラをよく選んでいた友人は、健気な素振りを見せつつも恋愛には計算高い女性へ変貌した。それでは私はどうだったか。私の憧れのお姫様。それは
2018年1月15日 17:49
冬空のしたでフォーレのヴァイオリンソナタ2番2楽章を聴いていると、中学2年生の冬のことを思い出す。とてもとても大好きな人がいて、でもその人にはもう半年も会っていなくて、連絡先も知らなければ、彼は私が自分を好いているということさえも知らなかった。何一つとして伝達手段を持たなかった私ができたことは、夜空を見上げ、彼への気持ちを星に託すことだけだった。彼と私はセックスなんてしなかった。身体を使
2018年1月8日 14:51
「お手洗いに行こう」休み時間になると、花からそう声をかけられるのが憂鬱だった。だからチャイムが鳴るとすぐに図書館に逃げ込む。身体の帯びる水分なんて大した量ではない。紙の束に囲まれていると、行き場をなくしていた感情が音もなく吸い込まれるのを感じる。柔らかく黄ばんだ紙をめくるたび、指先から移った水分が紙を柔らかくたわめていき、紙は深く呼吸をするように伸び上がる。陶器の冷たい便器に排泄するより