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少女A伝

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短編小説集です。
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2016年3月の記事一覧

へいへい

へいへいは、バカだ。
偏差値の低い私達の高校の中でも、群を抜いて頭が悪い。
よく忘れ物をするし、授業中は寝てるし、男子達が馬鹿らしい遊びをしている時、中心にいるのは大抵へいへいだ。

そんなへいへいに興味を持ったのはいつ頃だったのか、もう覚えていない。
彼は、サッカー部に所属していた。
部活の中でどれくらい上手いのかはわからない。
けれど彼は運動神経が良いから、きっと足でボールを思いのままにコント

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僕の彼女

僕の彼女はよくもてる。
この間もターミナル駅から乗り込んだ山手線で、隣にいた大学生達が僕の彼女の話をし始めた。
「横田、羽柴ちゃんに告白したらしいよ」
「羽柴ちゃんって、この間軽井沢で出会った綺麗な子?黒髪をカチューシャで纏めていたお嬢様っぽい子だよね。たしか、高校生だったっけ」
文庫本に目を落としていた僕は、思わず目をあげた。
彼らの話す羽柴ちゃんは、僕の彼女のことだと見当がついたからだ。
「羽

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かぐや姫の一夜

東京のビル街を吹く風は、私のタイトなスカートの裾をはためかせ、闇の中へ消えていった。
歩道橋をカンカンと駆け上がって振り返ると、あなたは息を切らしながら私のことを眩しそうに見つめていた。
車のライトに下から照らされて、私は笑っているように見えただろうか。
だとしたらあなたは大莫迦だ。
あなたは、銀座にある外資系のホテルの一室を私の為に用意した。
分厚い窓ガラスに隔てられた下界では、新幹線がまるで巨

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終わりそして始まり

卒業式の間ずっと、君は不機嫌そうに青いパイプ椅子に座っていた。
鼠色のセーターの袖で顔を覆って泣く同級生の女子達は、あまりにも湿っぽく、僕はなんだか気持ち悪いと思ってしまった。
普段は口を開けば色んな同級生の悪口やら先生への不満しか言わないくせに。
全て涙で浄化しようというのか。
思わず目を横に逸らしたら、口をへの字に結んだ君が見えた。ずっと唇を噛み締めていたのだろうか。血の気のない顔に、唇だけが

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コレクショニズム

「都合のいい時だけ見つめるのは、変質者のすることよ」
かつての恋人と別れてから、ちょうどいい捨台詞を思いついて地団駄を踏んだ。
ああ、私のルブタンに傷がつく。
さっきの逢瀬。あの人は最後まであの人の舞台の上で陶酔していたなあ、と眺めていたら、いつの間にか舞台に引きずり出されてエピローグをつけられてしまった。

「僕はもう今迄の僕ではなくなっているかもしれない。それでも君のことを見つめ続けるよ。もし

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ハナゴンドウの矜持

泣いている友人を慰めるのは、なんて心地がいいのだろう。
目の前の美しい少女は、さっきから頰を赤く染め、形のいい眉を歪めて涙をこぼし続けている。
遠くから夕陽が、教室をまるで舞台のように照らしていた。

教室には私と襟子しかいなかった。
校庭からは、部活動を終えた生徒達の喧騒が聞こえてくる。
風が、電車が遠くの線路をわたる音を運んでくる。
けれど、私の耳には襟子の啜り泣く声しか届かない。
まるでこの

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