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Curiosity killed the cat

合鍵を渡したのは、きっと、そういうシュチュエーションに憧れていたからだ。

仕事から疲れて帰ったら、合鍵を使って料理を作ってくれている恋人がいる。
びっくりしていると「おかえり」なんて言われて、「お疲れ様」とか言われて、私は幸せな気持になるんだ。

***

※元カレの話。10年は前。思い出しつつ、当時の日記で補完しています

玄関の鍵を開ける瞬間の愛犬の鳴き方が何時もと違う事に気がついた。
私は本能的に警戒した。
家の中に素早く入り、素早く鍵をしめた。
部屋の中は静かで、暗く、しかしキッチンスペースにいる愛犬だけがやたらそわそわしながら吠えている。
そんな愛犬を宥めつつ、電気をつけようとした。
しかしキッチンは電気がつかなくて、当時の私はソレを日記で嘆いていた。電球高いって。貧乏だね。

─部屋の空気が…何か変?

恐る恐る部屋に入る。
部屋の電気もつける。
お気に入りの大きなちゃぶ台の上に
パスタと手紙があった。

手紙の内容は忘れたが、他県に住む彼氏からだった。私のいない間にコッソリ家に来たのだ。
そして、パスタを作って帰ったのだ!!
と私は理解した。

パスタの温度をラップ越しにみた。
これは……つめたい……ということは…だいぶ前に作ったのか??

私は動揺していた。
不審者の侵入ではなかったか…。
一瞬包丁を握ろうとしていたが、握らなくていいようだ。
心臓がドキドキバクバクしていた。

そして、たぶん、自分を落ち着かせる為にパスタを立ったまま一口食べた。
『うん……普通……普通の味……』

明日も私は仕事だ。
今居てくれても、ただ眠るだけになってしまっていたことだろう。
彼の家から我が家まで電車で2時間かかる。
そんな時間を使ってくれたこと
パスタを作ってくれたことに
お礼のメール(時代を感じるね)をしよう。
この普通のパスタはありがたくいただこう。

そんな事を、考えていた。
ドアがノックされた。

私はビビる。

え?だって帰ったのでは??

でも、この時間にドアノック、この感じは彼氏だろう。
そろりとドアを開けると、「赤ちゃんみたいに純粋無垢な感じの顔してるね!」と友達に言われた彼が満面の笑みで立っていた。
どうやら、帰宅にあわせて外に隠れたらしい。

「来ちゃった♡」

サプライズである。
その時、私は無意識に『喜ばなきゃっ』て思ったと思う。こんな夢みたいなシュチュエーションってないよね。日記の中でも大いに喜んでいた。

「びっくりしたよ~っ!!シュウちゃん(仮名)!!なんで来てくれたの?!」

そう言って玄関先でハグをする午後9時くらい(当時の仕事帰りといえばそれくらいの時間)

来ると思っていなかったから、部屋は汚いし(いつでも片付けておけという正論はゴミ箱へポイ)
なにより彼にさいてあげられる時間は少ない。
申し訳ない。
それでも、彼はニコニコ嬉しそうに存在していた。

一緒にパスタを食べて、そこで初めてソレが冷製パスタであることを知った。
あ、なるほど。だから冷たいのか。
こんな大量な冷スパ初めて見たわ。

その後の私のお礼が謎…
あ、彼氏が持ってきたのか…着て欲しいって
AKBの衣装みたいな服…。
着てあげてましたよ。
え?写真今もあるのかって?ふっ。残って……

そして、朝にはお握りと味噌汁を適当に作って、そんな朝ごはんにもニコニコしていた彼に対しての思い。↓

『私が 今まで 出会ったことのないような

優しい人ですよ。まったく。(日記より引用)』

それまでがソコソコ碌でもない相手としか付き合ってなくて、バグっている私が日記にいた。(何がバグってるの?優しいじゃんって、思う?)

『嬉しかったから日記にする(笑)←引用』

照れ隠しの(笑)まできちんと用意する私。
いや、当時の私はちゃんと?恋人の好意と行為を有り難いなって思っていましたよ。たぶん。
何処かで『???』謎の違和感を感じながら。

そして、電子の海の日記故に、コメント欄で複数の女友達から盛大に喜ばれ(あまりに今までの恋愛が不憫だったのもあり)たのだった。
胸キュンの提供をした。

これが付き合って1ヶ月くらいに、あったことだ。
世間一般的には、まだまだ、ラブラブ絶頂期間ではなかろうか。

でも、実は本人が1つもキュンとしていなくて、少し焦っていたのは当時の内緒で、今のネタだろう。

当時を振り返って思うのは、私は誰かに家に訪問されるのはノーセンキューだったなってこと。(だいたい憧れシュチュエーション、男女逆じゃね?)

当時の日記(彼氏も見ていた)だけみたら、まるで漫画みたいな恋をしている女の子に見えるんだから面白い。
因みに、直接会った友人にも最初のうちは、きちんと、そう見えるらしい。
私は何処かで
『あーなんか逃げたい』
『うぇーなんか嫌』
『わー………え?わー……ないわ』などと思いながら付き合っていた。
でも、それは、私が今までそういう優しさとかを跳ね除けて来たから慣れていないだけで、
普通(漫画とか友達の恋愛話の中に出てくるぶんに)は嬉しいし、素敵と思うし、憧れるし、
周りの人も今の彼は優しいねって言ってくれるし、
私自身も優しい人(今までの彼氏などと比べて)とは思うから、私がおかしいのかも…って
因みにこの彼は、何時ぞや記事に書いた鼻パックの彼である。(私史上最強に相性が悪かったね)

思い出しても、嬉しかったこととか、楽しかったことより『ゾッ』とした事が真っ先に大量に思い出される。
いや、彼はきっと良い人(心の底とか、本人の無自覚な矛盾さは置いといて)だと思うよ。
正義感が強くて、甘えん坊なところがあって、人に優しくて…。
毎日マメに連絡くれて、電話もよくしてくれて、不安がりな子にしてみたら嬉しい…よね?
私も当時は相手が連絡不精だと、若干怖いくらいの量のメールを打つ人だったので(おい、メンヘラだな私)そういうのって憧れているというか、理想的な関係のはずだった。

なのに、私はそれが無理だった。


後に友達に言われたのは
『お前はさ、恋愛したいわけじゃないと思うよ。仲のいい奴らと楽しくつるんでる方が健全じゃない?』

友よ。真理だね。

『好きっ』て言われてもドキドキしない。したとして、その人に言われたからじゃない。
ドキドキするのがベターなら、ドキドキする女の子を着る。だから、ドキドキする。

デート中、手を繋ぐのも、それがベターだから。
本当は自由気ままにふらふらしたい。
初めて手を繋いだ瞬間に小さく『不安』や『恐怖』を感じていても、照れたような表情を浮かべるのを忘れない。なんなら『〇〇くんと、手を繋ぐのはなんか平気かも?私、人に触られるの好きじゃないんだぁ。』なんて、台詞もつける。
私は『彼女』だから。
私は『彼が好き』なんだから。
触れている事はきっと、『幸せなはず』だから。

カップルらしいこと、王道のパターン。
人が喜んでくれるのは、素直に嬉しい。
私にもできる。私も彼女やれる。
彼氏は喜んでくれている。
私も人を恋愛的に好きになれる。

大丈夫、大丈夫!


そんなわけない。


私は、愛はあっても、恋愛感情は生まれない性質だ。当時は知らなかったけど。
だから、あの違和感も、あの苦痛も、当たり前の感情だったのだ。

私にその手の事は通用しない。
私が、それを装って楽しんでいる間限定で効いている風なだけ。(この感覚を凌駕された事はないので、凌駕されたらどうなるかは知らん)

装うのが得意だと自分に思う。
彼氏や、声をかけてくるそういうつもりの人が私をどう見てるか、なんとなく、わかるよ。
そんな私は存在していないのに、彼らの目は節穴なのかと心の中で首を傾げる。
多分、節穴なのもあるけれど、私の擬態も上手いのだろうと、今は思う。
相手が望むものは何か、私は無意識に読み取る。
私も装うから、相手の装いも見えやすい。

私が恋愛に興味があった(ある)のは、周囲が楽しげだったから。
人間があまりに楽しそうなので、私もしたくて化けてみたものの、やはりお山が恋しくて…みたいな化け狐のような心である。
お山の仲間と葉っぱにまみれて遊んでいる方が健全な私なのだ。

好奇心は猫を殺す。 

は、私の為のことわざかもね。

***

ここまで、私のしょうもない話をお読みいただき有難うございます。
当時の私は、何処か見てみないふりして、頑張ろうとしていましたが、無意識に解ってはいたのだと思います。

だからこそ、恋愛(という名の実験)対象として見る人と、友達には明確な線引きがあります。
恋愛に持ち込んだら、私の性質上、高確率で嫌いになるので、どんなにいい子だと思っていても友達は友達。失うのは勿体無いと思うくらいには、大切にしているのです。

歴代彼氏がきいたら、泣くか怒るかしそう。
ごめんね。私を彼女にするってそういうことだよ?

戯れてるのは大好きだけど、捕獲器に入れてくる奴は大嫌い。
私は家猫向かないの。
放し飼い、半野良最高!!

と、いいつつ巣穴の夫は私を家猫だと思っている。
まぁ、利害の一致だし、夫はなんというか、さすがの風星座で、距離がきちんとあるので、やってけています。これも一つの愛の形。

未だ興味はあるけどね。
その、恋愛感情とやらに。
だから、他人のそういうの聞くの大好き。
幸せな気持になるから。(たまに、ならないけど)
だって、心から好きな人がいる人って可愛いんだもん。

私、可愛い人、大好きよ。

私が出来ないぶん、あなた達は好きな人を好きでいてね。
そんな勝手な事を思う。
そんな記事でした。

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