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いいんじゃないか、退職代行。


連休が終わると、連休を過ごしていた人達の中には気分が落ち込んでしまうなど不調が現れる。
連休はかき入れ時の小売業勤務者は、ある意味そういうダメージは少ない。
私は、連休にぶちあたる横暴なオキャクサマが、きっと普段心優しいお客様達を苦しめているんだろうと笑顔の奥で思っている。

『おい、商品を普通に買え。店員はお前の休日用サンドバッグじゃねぇんだよ。』

「退職代行サービス」なるものは、何時から出はじめたんだろうか。
賛否両論あるようだが、10代、20代と精神を擦り減らしてきた私としては「良いんじゃないかな」と思う。

だってね、
世の中、その場で嫌な顔されるだけでは済まない会社がゴマンと蔓延っているんですよ。
なんなら数日働いたぶんの給与なんていらないから、有給なんて消化できなくてもいいから、制服代を弁償でも構わないから、一分一秒だって早く辞めたい職場が世の中には存在しているんですよ。

代行サービスを知った時『あぁ、数年前にあったなら…』と何度思ったか。
本当にひどい職場にあたった時『もし、もし、どうしても辞められなかったら頼もう。そうだ、頼めるとこがあるんだ、大丈夫だ』
とどれだけ励まされたか。

精神が死にかけている時に、縋るものがある安心感は半端じゃない。
大半の人は、今の状況を何とかしたいから、仕事を辞めるのである。 
そのサービスを使うまでに、どれだけ苦しんだかなんてことは、他人にはわからない事なのだから「逃げ」だとか「それくらいは自分で」だとか、頭カッチカチの正論で責めてくれるな。

頼っていいと思うよ。
なんの為に頼るのかだけ、胸の隅に置いて、頼って、抜け出していいんだよ。
たとえ、世間から見て耐えられるレベルだとして、そんなものはあくまで世間の話なのだから、
あなたが「どうしよう…どうしよう…」と思いながら毎日通勤していて、心のどこかで「辞めたい」と強く願い、その辞めるという行動がとっても精神リスクがあるなら、代行だって使ったらいい。


あなたが、心穏やかに次に進めますように。


本文?というか伝えたい事はここまでで、この下は私が辞めるのに精神擦り減らした話。読み飛ばしても問題ない。↓↓


七年半勤めていた職場を結婚に伴う引っ越しのために辞めた私が
知らない土地で、始めたパート先は酷かった。

何が酷いって、そこを取り仕切るお局契約社員が酷かった。
周囲より高めの時給も霞むほど、現場の空気が最悪だった。
いや、面接の時からおかしいなとは思っていたんだ。
でも、仕事して稼がなきゃねって。
ブラックとかやばい会社入っちゃう人は金銭の余裕がないから、そういうの見ないふりしちゃって、ループしちゃうのあるあるな気がする。
 

私は転職回数が多い。
様々なモンスターを見てきた。
ある程度あしらい方を知って来た。
でも、ここは派遣時代に行った激ヤバ電気屋の次にやばいと思った。
なんなら、問題モンスターは一人なのに、全員で立ち向かっても全員やられかねないから、電気屋の時よりヤバかった。

後々、仕事に慣れた頃に仲良くなったパートさんにきいたら、あまりに酷くて過去に、お局契約社員のしてきた事を書き記し、改善もしくは移動を願う嘆願書を本部に提出したことがあるとの事だった。
それでも、他に社員を回したくない本部は彼女に権限を持たせ続けたのだそうだ。

お局な彼女は彼女で、多忙な仕事にたぶん疲れていた。過去には過労で倒れたこともあったというから、彼女は彼女で苦しんでいたのだろう。パートから契約社員になった人。一番長く部署にいて酸いも甘いも見てきたはずり
しかし、彼女は人望が……ない。
味方を作れない。敵にしてしまう。そのキツイ性格を使いこなせていない。

まともなパートはどんどん辞めていく。
辞めると言い出せない人か、何も知らず入ってきた私みたいな人が、なんとか回す現場。

お客様と最も近く、店の顔と呼ばれるレジ業員同士の連携が悪いと、精神が簡単に死ぬのがレジという部署である。たかがレジ員、されどレジ員。  
 
私もゴリゴリに削られた。
新人の子が大声で怒鳴られるのを聞きながら、お客様には笑顔を向け続けるしかない。
どうしようもないことや、その日の気分で当たられるのを受け流すしかない。
彼女の愚痴にも付き合うしかないし、突如変更されるシフトにも対応しないとならない。
接客業のシフトは協力しないと回らない。
この日、毎週、絶対休み譲らないって人が何人もいたら、病欠なんて迂闊な事出来ないのだ。 
お客様に「レジ員少ないので待って下さーい」は通用しない。丁寧に、スピーディーに、ミスなくこなす事を求められる。
たとえ自動釣銭機になろうとも、大変な事はある。

さて、夜に眠れないレベルになった。
あなたは、たかが数時間のパートで何言ってるんだと思うだろうか?パートなんだから簡単に辞めればいいのにと思うだろうか?

たかが数時間で心がここまで死ぬことをおかしいとは思わないかい?
パートも会社の一員であり、一人抜けたらその穴を必死に埋めなくては回らないような小売接客の会社は思っているより多いよ。 


どうしよう…どうしよう…。
辞めたい…辞めたい。

でも、みている。

バイトさえ辞めたいと言ったら罵られるのを。
恐怖政治みたいなもんで、お局契約社員の機嫌を損ねることを誰もが恐れた。

そのバイトの子は即日退社をしたが、親を引っ張り込んで何とか辞められたのだ。
親には、その職場には買い物もいけなくなるがいいのかと聞かれたが耐えられないとその子は答えたそうだ。
大人である私達他のパートが護れなかった事を申し訳なく思ったし、初めてのバイトがそれで彼女を可哀想に思った。

土日でているだけの、その子でそれだけ苦労している。
平日、たまの土日も出ている私が抜けたいと言ったら、どんな罵声が飛んでくるか。

私は策を練らなくてはならなかった。
 
私は基本、自分で辞めますと言う。
あと、法律では2週間前に言えばいいとあるが、人員埋めを考えると1ヶ月は必要だろう。
会社にも配慮し、しかし、自分の意志は伝えて辞める。可能な限り。

しかし、今回はまず理由が必要だった。
絶対に断れない、絶対にヤジれない理由。

『そうだ!親が倒れたことにしよう!』

私は作り話がプロ級である。
普段真面目に、本当に誠実に過ごしているからこそ、その場任せの嘘がまかり通るタイプ。
表情の作り方、裏の細やかな設定、それらを練りに練って挑む。
こんな不誠実な事は出来ればしたくない。
けれど、こうでもしないと辞められても、心が死ぬ。


しかし、さすがモンスターは一味違った。

「お休みならあげるからさ、そんな急に辞めなくてもいいんじゃない?」 

ハァ?!
私は動揺した。 
どうしようもない理由付をしたつもりだった。
親は離れた所に住んでいること、私が車の運転が出来ない事、電車で二時間通うようになる事(親が倒れたこと以外に嘘はない)を伝えて、その返答とは恐れ入る。

私は次の策を練らなくてはならなかった。 
因みに親が倒れた作戦で辞めたいといったとき、お局は私にハッキリ「嘘つき」といった。
別に親が倒れたことの嘘がバレたわけではなく、契約時に1年契約だとあれほど言ったのにという意味だ。
いや、親が倒れるのは予測できんがな。

彼女は面接時にOJTをしてやったのにすぐ辞めるとか、こっちも人件費使って時間も使ってるのにさと、私に言った。
凄いこと言うな、事実だとしても。と私は思ったが、言動が完璧なパワハラ気質である。

そんな彼女を崩せる気がせず、代行サービスの画面を見つめ続けた。
もう、使ってしまおうか。でも、、、 
代行サービスは最後の切り札。
いざとなれば頼ってもいいのだ。

私は、やはり辞めたいと言おうと、一度言ってから1ヶ月後に再トライした。
我ながら強めだと思う。私は震えながらも自己主張していく方だ。
これが、もっと考え込んで、耐性がなくて、嘘もつけない人だったら、倒れている。

お局の彼女は気持ち悪いくらい子供信者。子供を産むことは女の最大の喜び。子供に尽くすことは女として当たり前の使命。というくらい、子供が好きな人だった。
もう、この手しかない。
その時はそんな事考えてもいなかったが、親が倒れたにプラスして妊活に励みたいと訴えよう。 

凄いコンビ。
親の介護と妊活。
アホか。

しかし、彼女には効果テキメン。
親の方はなんとかなりそうだが、夫と話し合う中で妊活に集中したいという話も出て、親を気にしつつ仕事をこなしつつ、子供を望むのは難しいと思ったと、よくもまぁ口から出まかせが出ると自分に思いながら話した。 
それでも、恐怖心から震えていたので、恐怖は根が深いのだ。

彼女はそんな私に理解を示した。
さすが、子供が全ての女。
堂々と夜の営みについて聞いてきては、子供はいいとゴリ押ししてくる女。
彼女はブレていない。

結果として2ヶ月後に辞めさせてもらえる手はずが整った。
しかも、2ヶ月もいてくれるなんてと喜ばれたし、彼女の中で私は円満退社の人間として手厚くあつかわれた。
…そらそうや。喧嘩して、次の日から来てくれなくなる人、親が出てきて即日退社などが普通の状態で、彼女を慮る言葉を述べつつ、彼女の納得の理由を提示し、彼女が希望する月まで残って働く私は超優良なパートである。 

私は半年で、地獄から自力の脱出が出来たのだった。



ここまで真面目に読んだあなたは、どう思ったろうか。
嘘をつくなんてよくないと、やめるのは当然の権利なんだから真正面からいけと、正論をぶちかましたくなったろうか。

そういう意見がないわけじゃない。
それに、正論だけあって、本来はそうであるべきなのだろう。
しかし、ボロっボロの精神状態でそれを受け取ることは
死に繋がる。

私みたいに、嘘をつくことも生存戦略として許せる性格ならいいが、そんな事は出来ないと思っている人も多いだろう。

だから、代行サービスなのだ。
明確な意思表示をして戦略的撤退をしている。
嘘がつけないから、責任感があるから、飛ぶこともできず、なんとか絞り出しての代行サービスかもしれない。
お金を払っても辞めたい会社が、沢山ある。
勿論、全てが会社側の悪ではないだろう。
その人のメンタルが悪い方向に向き過ぎなこともある。

けれど、なんにしたって、その時に距離をとるべきならば
どんな手段でも使って距離をとるとは
私はいいと思うんだ。

「自分で死ぬ」のが最終切符だとして、その手前に使える切符はたくさんある。
その切符を握ることさえ難しくなる前に、えいやっと使ってしまえばいい。

それで、なんとかやっていけたらいい。
なんとかやっていけると、思える心が残せたらいい。
 

私はそう思うよ。







 











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