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『乞ふ』~恋ふ:闇夜のカラスさん「乞ひ」スピンオフ

これは闇夜のからすさん作:「乞ひ」のスピンオフ作品です。
↓こちらを先にお読みください。

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【乞ふ~(恋ふ)】



彼女の瞳をこんなにも輝かせるのは
今も これからも
自分ではないと
痛いほど分かっている。

でも、この瞳を
ずっと見ていたいと そう思わずにはいられない。

◇◇◇


『…まちゃん? あまちゃんってば!』
ハッとすると、膨れ顔でワンピースを両手に揺らすトーコが目に飛び込んできた。
『もうあまちゃん、またどこかに飛んでたでしょう?』
膨れ顔を崩し、ふふっと笑う。
『ご、ごめん。また…飛んでた。』
このシチュエーションへの笑顔は、もう反射的に出るようになっていた。戸惑う事も、言い訳を考える事もしなくていい。飛んでいた…ただ「何処に」をぐっと押し込めてさえいれば 笑顔が何とかしてくれた。

『平間君…どっちの方が好き…かな?』
鏡にくるっと振り返り 首をかしげるトーコに笑みがこぼれる。
「どっちを着ても可愛いよ」言おうと思えば言える言葉。何の変哲もない女同士の会話にしか聞こえない…でも、だからこそ 私には言えない。押し込めているものがひょいと顔を覗かせてしまうようで、喉の奥から出たがっている言葉達を無理やり奥へと押し込める。
彼女を愛おしいとで、一方で彼女にこんな表情をさせられるのが決して自分ではない事に…私の心がせわしなく安らぎとうれいを行き来する。それでも、トーコのこの笑顔をずっと守る…守る事しか出来ない自分には これが唯一の選択肢なのだと自分に言い聞かせている。
『右!』
そう言うと、トーコの眉は跳ね上がり『やっぱり!あまちゃんもそう思う?!』罪だよな…膨らみを帯びた唇をこれまでかというくらい引き伸ばしてトーコが笑った。


トーコと出会ったのは中学の入学式だった。ふわりと巻のある茶のかかった髪を揺らしながら、鞄を抱えて廊下を歩く。すれ違った瞬間に女の子のいい匂いが鼻をかすめた。「可愛らしさ」そのもののトーコが同じクラスだと知ったその時は、自分との差に何故か苦笑いが出たくらいで、今の自分の気持ちなど微塵も感じなかった…ううん、感じてなかっただけで もうそこに存在していたのかも知れない。
外見も中身も全く違う彼女に何となく興味を持ち始めると、なんでも両手を広げて受け入れる純粋なトーコは、笑顔で私を「友達」として迎えてくれた。何もかも違うからこそ お互いの長所が見えてくる。そんな凸凹の関係が心地よかった。「埋め合える」…それが「埋め合いたい」であるのだと気づいた時には…すでに確立されてしまっていた「友人関係」を壊す事の方が怖くなっていた程に手遅れだった。徐々に変わりゆく自分たちの身体。トーコが私の腕にしがみ付く度に、ふくらみを帯びた胸があたり、ささやかな女同士の喜び合いに 少しくびれたウエストを抱き寄せると、私の心臓は速度をあげた。『あまちゃんスタイルいいよね』私の身体をまじまじと見ながらそういうトーコの視線にどう答えて良いのかも分からずに、私は必死に自分の気持ちに蓋をした。溢れそうになる気持ちを押し込めるのには痛みが伴う…それでもトーコの無邪気な微笑みを真っすぐに見つめながらいられる事が嬉しかった。
 
なのに…高校二年目のこの夏…私は彼女のほのかに染まる頬を じっと”横”から見る事しかできないでいた。トーコが笑顔を向ける人は私ではない…心が締め付けられる思いなのに…。もう身についてしまった「友人の笑顔」は皮肉にも私の痛みを油性絵の具の様にしっかりと分厚く隠していた。それは、皮肉であると同時に、、、救いでもあるのだと…分かっている。
何度も彼女と一緒に見上げた花火…今年どんな風に私の目に映るのだろうか。


『お待たせ!ごめんね、待った?』トーコは結局私が選んだワンピースを身に纏った。彼氏と会うために選んだ服には他でもない”私”が反映されている…何とも言えない優越感がこみ上げて、嬉しそうなトーコの表情に添える自分の笑顔がいつもよりあからさまになってしまった。
『いや、俺たちも少し前についたところだよ』
笑顔で答えたのは健史たけしだ。その横で柔らかく微笑むのが平間…トーコの彼氏だ。物静かで決して目立つタイプではないが、いつも人の中心にいる親友の健史を、いつ時もさりげなく支えている。そんな平間には私も好感が持てた。たまに窓の外をぼっーと眺めているかと思うと、ふいにクスクスと笑い出す…確かにトーコの様な女子の心に矢を放つタイプではある。でも…最近トーコの話を聞いているうちに、平間のこの歪みのない微笑みが本物かどうか…疑念を持つようになっていた。トーコの心にじゃない…平間の心に何か引っかかるものがある。

『何か食べ物買ってくるね!あまちゃんいこう』
咄嗟に掴まれた左手に少しだけ汗が滲む。この蒸し暑い気候が今は有難く感じられた。高校に上がってからというもの、女同士とは言え 以前の様に手を繋ぐことも じゃれ合うことも少なくなっていた。だから突然伸びてきた手が一段と柔らかく心に印を押した。
『健史君に平間君が好きそうなもの聞いてあるんだ!って言っても、はっきりこれって分からなかったんだけど』
『健史に…聞いたの?』未だ繋がれている手が熱い。
『うん!健史君は平間君の幼馴染で、平間君の事すごく良く知っているから』
健史がトーコに想いを寄せているのは一目瞭然だった。けれど とうのトーコは彼の気持ちに全く気づいていない。健史の事が自分に重なり苦笑いがでる。
『デート…してるんでしょ?好きな物知らないの?』
『うーん、私が好きな物をいつも一緒に食べてくれるから。だからちょっと最近体重増えちゃって…』ちょこんと舌を出し笑う。
『実は今ダイエット中なんだ。ほら、平間君って線が細いというか、しなやかじゃない?隣にいて可笑しくない様にって』
「綺麗になろう」…女だったら恋をすれば誰だってそう思う。でも…そう放つトーコがとても幸せそうで…込みあげた何かが口の中でギリッと奥歯を鳴らした。
こんな自分…嫌だ。トーコの笑顔を守るという自分を裏切っている様で 必死に作った笑顔がどことなく歪んだ。暗くなってきた空を仰ぎながら未だ幸せそうに笑うトーコが隣にいる…「良かった、見られて…ない。」
ふっと笑顔の電源が途切れ、自分の顔を地面に落とした。

出店を何軒か周り歩き食料を手に二人の元に帰ると、合流予定だった他の男子二人の姿もあった。
『食べ物、多めに買っておいて良かっ…』
そんな私の言葉はトーコの耳には届かぬまま、彼女は私の隣から飛び出る形で平間の元に足を出した。トーコの香りが、生ぬるい空気に混ざり私の横を螺旋を描きながら遠ざかる。ふいに彼女の後を追うように伸ばされた左手を 右手が「だめだよ」とぎゅっと押さえた。

4人はトーコを中心にして笑い合っている。私はあの中で 嬉しそうに笑顔でいられる?自分自身に何度問いかけても答えは一つしか出なかった。
雨宮あまみやも食ってきたの?』合流した井上が大声を張り上げながらこっちを向くと、皆の視線が一斉に私に向いた…。
いや、、、ほぼ全員…
平間を除いては。
『あっ、うん!トーコとさっきアツアツの食べてきちゃったよ!』
それを聞いたトーコの顔に安堵が広がり、自分のとっさの口合わせが間違っていなかったと確信した。
でも…なんで…平間はあんなに優しい目で”アイツ”を見つめていたの?
平間の瞳は、トーコを見つめる時のそれとは全く違う 安らぎともいえる程の安心感を醸し出していた。

私の中のもやが更にその濃さを増して行く。

『やっ、やっぱりたこ焼き買ってくる!平間!手伝って!』
私は平間を立たせると彼をやや強引に引っ張り出した。突然の出来事に戸惑っていたであろうトーコとはあえて目線を合わせずにいた。

たこ焼きの列に並ぶ間、平間は私たちが先ほど買ってきた鯛焼きの中から選んだチーズトマトを口に運んでいた。いや、正確に言えば、“アイツ”に え・ら・ん・で・も・ら・っ・た鯛焼きだ。
『トーコ、本当は鯛焼き食べてないの。ダイエットするんだって…口に出さないけど不安なんじゃないのかな。ちょっと元気ないしね』
嘘だった。トーコの笑顔には悔しいほどに幸せだけが満ち溢れ、不安なんて少しも感じた事はない。それでも、平間が何を考えているのか どうしてもこの手の中につかみ取りたかった。
『外野がどうこう言うのも違うかなって思うけど…』一息置いて私は続けた。
『平間の事トーコから相談された時「いーんじゃない?頑張りなよ」ってそう後押しっていうか、しちゃったから…さ。平間は全く持って何考えているのか分からないけど、さりげなく健史の事をサポートしてて、私もそんな平間見ていい奴だって好印象持ってたの。でも、、、トーコと一緒にいるのを見てて、あれって思うようになってさ。。。平間、トーコの事ちゃんと大事にしているの?』
表情一つ変えない平間からは何も読み取れない。ため息に似た一息をついた後、
『僕なりにベストを尽くしているつもりだけど』
そう言った平間の瞳は何故か氷の様に冷たいものだった。
『じゃあ聞き方を変えるわ。平間、トーコに「恋」してる?』
無性に腹が立ってくる自分を制御する暇もなく自分の口をついて出た言葉はワントーン低めの、刺々しいものになっていた。
『答える義務ないよね』
私の方を向こうともせず、どこか遠くを見ながら吐かれた言葉だったのにも関わらず、平間のそれには突き放す強い力が籠っていた。今までもやのかかっていた何かを 今自分たちが立っている空間から取り払ってやりたくなった。
『これは私の勝手な妄想だと思って聞いて欲しいんだけどさ…平間トーコを健史に向けさせようとしてる?』
これは私の安全な方の仮説だった。平間がこうしてトーコとイベントに参加する時には、必ず健史も一緒だ。トーコとの会話はほとんど健史に委ね、平間はただ傍で笑っているだけなのだ。なにより…どうしても平間のトーコに向ける微笑みが本物だとは思えない。それは、トーコを想う自分の微笑を知っているから…でもあった。
そんな私の質問に 大ブレしたファウルボールを食らったバッターの様な顔をしたかと思うと、
『健史のこと知ってんだ』と鼻先で笑いながらそう言った。
『健史がトーコのこと好きなのはバレバレだから。肝心のトーコは平間以外、眼中にないけどね』

順番が巡りたこ焼きを三船頼むと 私はさっとトーコの分も手に取った。無意識にこいつにトーコの分を持たせたくはないと そう思った。
どう次の仮説を切り出して良いものか。これはあまりにも自分の直感に頼りすぎている説で、自分の今まで築き上げたものまでも危険に冒しかねない物だった。何も言い出せずにいると、その沈黙を破ったのは平間だった。
桜井トーコはいい友達がいるねぇ…』
その顔には何か私の弱みを握ったかのような不穏な笑みが乗っていた。
『な、なにそれ。話をそらすつもり?』
『違うよ、ほんとに感心してる』
どう考えても 平間の薄笑いに感心の「か」の字も見当たらない。綺麗な顔立ちが何故かとても憎く感じ、自分を抑えきれなくなっていた。
『…ねぇ、もう一つ…妄想があるんだけど!』
強く出始めたものの、聞き方を一歩間違えれば自滅する。でも、平間がさっき“アイツ”に向けた無防備な笑顔が頭からどうしても離れずにいた。
『平間の目的は、もしかして…トーコじゃなくて、、、たけ…』
そこまで言ったところで、ハタッと平間が立ち止まった。かと思うと、周りの空気だけがグンと冷気に変わり、不気味に思えるほどの笑顔で平間がグンと近づき私を見下ろした。
『雨宮…もう少し気を付けてモノをいった方がいい。桜井にとって僕がどういう存在か分かっているはずだよね?…つまり僕はさ、その気になれば桜井のこと、いつでも好きな時に、好きなだけ傷つけられる立ち位置にいるってこと。ねっ、下手なことして機嫌を損ねない方がベターだって思わない?』
一瞬にして背筋が凍った。
こいつが健史のことが好きだって事にじゃない。
こいつにとってトーコが、どうにもならない気持ちをぶつけるための…健史に傷を作る為だけの「道具」でしかないという事に。

『たこ焼き、落とすよ』
私の両手が平間の真の姿に震えていた。トーコの喜ぶ姿、染められた頬、照れる仕草に、一途な想い…全部が全部 こいつにとっては健史に向けての ただの演出でしかない。
『あんたの本命は健史なんだ!じゃあ、どういうつもりで…!!』
『口に気をつけろって言ってるんだ。健史におかしなこと吹き込んだら…桜井どうなるかな。手始めにこれ』平間は右手を掲げ アツアツのたこ焼きに視線をやった。
『頭からぶっかけるとかどう?今日、桜井おしゃれしてるよね?初めて見るワンピース着てるし。彼氏と友達と夏休みに花火、って素敵な思い出が台無しになっちゃうかも』
くすっと笑いながら言う。
ワンピースを揺らし鏡の前に笑顔で姿を映したトーコが…こいつの冷たい笑みの前で崩れ落ちてゆく。心がパリンと割れた時…修復しようのない程に散りばめられた鋭利な破片達がとめどなくトーコに降り注いでは 深い傷をつけて行く…。そんな姿が脳裏に浮かぶ。
『雨宮…君が余計な事を言ったりしなけりゃ、僕から彼女に何もしない。それは約束する。ねぇ、せっかくの花火大会なんだから、楽しもうよ。このたこ焼きも、少しでも桜井に食べて欲しいって気持ちなんだろ?”い・い・友・達” だ…ほんとに』
顔から血の気が引いていった…。平間は…私を脅しているの?私のトーコへの想いがボロリとこいつの手の中で握りつぶされたような気がした。
トーコの笑顔を人質にとって、壊されたくなきゃ騙されているトーコを笑って見てろ。水のない花瓶に花を飾れ…私の大切なトーコという花を。。。そう聞こえた。

『なんか、遅いから心配になって。どうしたの?』トーコが私達を見つけ駆けつけてきた。平間は私に目をくれる事もなくトーコに微笑んだ。
あぁこの微笑み…私は疑っていたんじゃない…心の何処かで見抜いていたんだ。腑に落ちなかった靄が晴れたと同時に、真っ暗闇に突き落とされた。

◇◇◇


その後の事は何も覚えていなかった…。
何処か遠くで花火が上がる音がする。
トーコの幸せは本物で、それを守りたいと強く思う。と同時にトーコの向ける幸せが、アイツをすり抜けてどぶ底に溜まって行くのを知ってしまった今、私はどうしたらいいか分からなくなっていた。
どんなに頑張っても報われない恋だから…自分にできる事はトーコを支える事だとずっと自分に言い聞かせてきた。好き勝手に人の想いを操り人形のごとく手の上で転がして、好きな人も 好きでいてくれる人も皆傷つける…そんな平間をどうしても許すことが出来ない。悔しくて悔しくて…たまらなかった。。。

ひゅるるる~…… ……ドン!ドン!パッ、パパッ、パララララ……

『あまちゃん…大丈夫?なんだか顔色悪いよ?』
大きな打ち上げ花火が夜空に舞っているのにも関わらず、トーコが私をじっと見つめながら心配そうに尋ねた。
『ん…うん。ちょっと…花火の音にびっくりしちゃった…のかな』
トーコは目を細めながら ぎゅっと私の腕に絡みついてきた。
『これで大丈夫!私がちゃんと支えているから!』
小柄で私を支える事なんて無理なくせに…でも、この時トーコの腕の温もりが私にとって何よりも必要だった…。絡みつくトーコの左手にそっと自分の左手を乗せる…それを感じたトーコはもう一度私を見上げて言った。
『大丈夫!』
ぎゅっと力を込めたトーコの手を腕に感じながら、私の大好きなこの笑顔は この瞬間…ただ真っすぐに、私にだけへと向けられていた。



私はこの時、今まで心の何処かにあった小さな希望の光を消した。



トーコをいつまでも支えたい。。。そんな綺麗事に自分の心がいつまでも耐えられない事を悟ってしまったからだった。
平間の本当の顔を知ってしまった事…それは引き金ではあったかもしれない。けれど、それが理由なんかじゃない。

平間を汚いと思った。憎いと思った。
でも、そうしないと崩れてしまう事を彼自身分かっているからだと思う。
恋の形は違えど、お互い永遠に…絶対に叶わぬ恋だから…。
どんな汚い手を使っても、例え相手に残るのが愛ではなく、「傷跡」だったとしても…
相手にありのままの自分を刻みこみたいと願う事は罪なのだろうか?



私には分かる。

封じ込めたトーコへの想いが ずっと心の奥で悲鳴を上げていた事も、

痛めつける事でしか想いをぶつけられない悲しい平間の痛みも、


私には分かるのだ。


◇◇◇

『俺と桜井は別ルートで帰るんで』

花火が終わると平間は誰にともなく見せつけるかのようにそう言った。
誰にともなく…なはずなんてない。
そう、私と…健史に向けて。
『雨宮、大丈夫だよ。桜井に悪い事なんて起こらない。ちゃんと気をつけるからさ』
意味深な笑みを浮かべる平間のその言葉に 私は偽りはないと知っていた。
トーコの恥ずかしそうなはにかむ顔にふと目をやる。
それは…平間によってのみ生み出される 心の底から描かれたトーコの幸せの形だった。私が…いつまでも眺めていたいと そう思う程の
最高の表情だった。
『うん…本当に、頼んだよ』
しっかりと平間の目を真っすぐに見据えてそう言った。


二人が手を繋ぎ遠ざかってゆく姿を見ながら、私は平間の背中が語る言葉をしっかりと聞いた。
それは私に向けての物ではなく、健史に向けての物だったに違いない。
「痛いんだね…平間も…」口元が少し緩むのを感じながら、誰にも聞こえない様に心の中で呟いた。




平間…
刻んで、刻んで 深い傷を思いのままに刻み込めばいいよ。
平間も、平間の愛する人もズタズタになるしかないけどね。
それでもそれが自分の愛の形だっていうのなら
私は良いって思うんだよ。

でも私はね、
もう傷つくことはないと思う。
平間のおかげで気づいたよ。
トーコが平間に恋をしている限り、
トーコの愛は誰の物にもならないって。

平間はさ、大事な舞台道具のトーコを絶対に傷つけない…
傷つけられないはずだもんね。
大事な健史を繋ぎ止めて置くために..。

でも もしもね、
平間がトーコまでをも傷つけた時には
その時には
私が必ずトーコを受け止める。
傷ついたトーコを私が癒す。

これでいいんでしょ?
平間の恋の形も、私の恋の形も崩さずに…
Give and Takeでお互い様よね?

汚いよ。平間と同じくらい汚いよ。
私はトーコを自らの手で傷つけずに、笑顔だけを見れるから。
誰にも取られず、痛むトーコを優しく包み込むことだって許される。
汚いけど、でもこれが本当の私だよ。


ほら、笑って言えるんだよ…

…私はぎゅっとトーコに握りしめられた右腕を掴んだ。


平間がトーコを笑顔にしてくれている限り…

トーコは「誰の物にもなれない」んだ

ってさ。



*恋ふ:ある一人の人に気持ちも身も引かれ、その相手の魂を乞うこと。

(完)



生まれて初めてのGL(百合)は、闇夜のカラスさんの この素晴らしいBL作品によって感化されたものです。ふふふ。

私…BLは大好きなのに、まったくもってGLの知識もないし、実は読んだこともないのです…が、闇夜さんの文章力と感情の渦には、いてもたってもいられなくなりました。(笑)
BLでも、GLでも、どんな形の恋愛でも…人を「恋ふ」気持ちは全く同じで、人は喜び、悲しみ、時には傷つく。それでも「恋」がなくならないのは、多分誰にも「想う権利」が与えられているからだって。歪んでいても、まぁるくなくても…「想い」があれば届けたい。
届けたいよなぁ~。。。と未だ闇夜さんの作品に浸る私です。
力不足ではありますが、でも初めての挑戦…頂きました!ふふふ。

こちらの企画への闇夜のカラスさんの作品でした。

七田 苗子












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