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「キャリアウーマン」、嫌いです

「説明がなければ男性(と黙認する)と言うマインドセットは社会の最も基本な部分である言語自体に根付いていると言うことを認識できれば、そういうマインドセットがいかに私たちの考え方に浸透しているかを理解するには驚きはないでしょう」。 

『Invisible women(存在しない女たち)』
キャロライン・クリアド=ペレス

 「フリーランス」になると身近の友人に伝えた時、「残念ですね、
キャリアウーマンを目指しているのに」と言われました。不本意の選択だったことを理解してくれて共感を示してくれることに感謝と思いつつ、違和感を覚えざるをえませんでした。
 「キャリアウーマンを目指していたかな、会社仕事が楽しくて続けていきたいと思っているだけだけど…」と自問自答していました。
 同じことがあったら、「キャリアマン」達はどう向かうのでしょう。
 いや、manはただのman,「キャリア」を無理矢理につけなくてもmanは自然にキャリアのあるmanだという声が聞こえてきました。
 男性はキャリアがついてくるのは自明の事実で、一方、女性には当たり前ではないからこそわざわざ「キャリア」をつけないとキャリアがついてこないような表現で、日本社会の意識をきれいに反映していると言うしかないです。そして、残念なことに中国語にも「职业女性」(zhi ye nv xing)という表現があって、まさに「キャリアウーマン」の直訳そのままです。共通してしまいましたね。
 「女医」、「女性科学者」、「女性宇宙飛行士」、「女性社長」…よく見出しで見るものですが、その裏には「医者」「科学者」「飛行士」「社長」は説明なければ「男性」として捉えられると言う意味が隠れているのではないでしょうか。
 「人類を男性として黙認するのは、人類社会構造の根本だ」と『Invisible women(存在しない女たち)』の作者キャロライン・クリアド=ペレス(Caroline Criado Perez)氏が言います。
 狩猟が人類進化の過程で核心的な役割を果たしているけど、「狩猟者としての人類はほぼ男性のみ」と人類学者が言います。発掘された10世紀のヴァイキングの骸骨が武器と馬と埋葬されていただけで、男性兵士と思われていました(後にDNA判定で女性との結果が出ましたが)。
 「説明がなければ男性(と黙認する)と言うマインドセットは社会の最も基本な部分である言語自体に根付いていると言うことを認識できれば、そういうマインドセットがいかに私たちの考え方に浸透しているかには驚きないでしょう」。 
 それゆえに女性が歴史からもデータからも消え、世界人口の半数を占めるにも関わらず「マイノリティ」になり、「存在しない」人になります。その結果、公共交通道路は仕事、育児、介護、仕事などマルチタスクを抱えて短期多路線の移動をする女性を無視し、家と会社の往復をする「キャリアマン」向けに作られますし、トイレは生理期だったり小さい子供を連れて入ったりして利用時間が増えてしまう女性を無視し、男女同数に設置されて女性用トイレが常に長蛇が並ぶところになりますし、携帯さえ大画面がトレンドになり手のサイズが女性より10%大きい男性のサイズによって設計されています。
 男性視点の語りはもう十分ではないでしょうか。
    もう次から「キャリアウーマン」で呼ばないで、ウーマンです。


Podcast:Nana在日本
個人HP:https://nana-zai-jp.com/

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