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私の旅路

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#時間

私の旅路No.8

私の旅路No.8

それからも、お日様の話しとお月様の話しを交合に聞いては夜更かしをしていた。こんなに面白い会話を逃すなんて勿体ないと正直思ってしまったから。

時々、ふらっとやって来るコウモリに翼を借りて眠りにつければ満足と考えるようになった。その満足感は旅人にとって眠りの深さと時間が丁度良かった。けれど、たまに色鮮やかな夢を見るようになった。

そういう日は、旅人はお日様に起こされないと起きられないくらい深い海に

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私の旅路 No.7

私の旅路 No.7

そんなある日、お日様とお月様が愉快な仲間がいると紹介してくれた。

その方は、大きな黒い翼を持ったコウモリだった。彼は、そっと呟いた。「そろそろ、眠った方が良さそうだから僕の大事な翼の中で眠るといいよ。君がびっくりするくらいぐっすり眠れるはずだから」と言った。

旅人は素直に応じ、何日かぶりの眠りについた。大きな翼は旅人を囲むかのように広げ、お日様とお月様の話し声はピタリッと聞こえなくなった。

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私の旅路 No.6

私の旅路 No.6

逆にお月様は、天空のはなし。あやかしのはなし。静かな音のはなし。をお日様に優しげに話していた。

それは、冒険家になったかのように勇ましさを背負って語っている。

お月様は「春の夜は、目を疑うほど綺麗なものがあるの。特にオススメなのが夜桜よ。昼間の温かい母のぬくもりを感じさせる景色が、夜になると途端に妖艶な雰囲気を放ち、あやかしを招くの。

星たちが桜をライトアップし、風が花びらをちらつかせ、風と

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私の旅路 No.5

私の旅路 No.5

次に訪れた部屋は、時計の針を気にせず喋り続けるお日様とお月様がいる場所だった。私は、お日様とお月様が互いの話題の重さでシーソーをしているように感じた。

また、なんて不思議な空間なのだろうか。徐々に明るさが変わるわけでもなく、彼らの話すタイミングによって傾く外界。

旅人には、ひっそりと魔のタイムサイクルが近づいていた。旅人の規則正しい軸は崩れ、たちまち一風変わった生活がやってきた。旅人は、お日様

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