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「シャポシュニコワは、いつも哀しい瞳をしていた」Vol.6

~ラジオドラマ風、ボーダーレスなSTORY~
Vol.6 On And On Again @SAIPAN

#創作大賞2023 #恋愛小説部門


Vol.6

 義治クンが、取り皿とポークソテーとライスを頼んだ。

「事実は小説より奇なり、だよね。全く」

「意外と世間は狭いのね❓」
「ホントだ🎵」

 ティオ君はこちらのテーブルに移って来て、自分のロコモコ丼を先割れスプーンで食べながら、告げる。
「 YOSHIHARU had been in this area, at the time of your 2nd visit.
Like that Uncle Taylor’s son.」
 
(義治クンは、このロコビーチ・ロードに来てたんだよ。ミサキさんの2回目の滞在ん時も。)
(テイラーおじさんの息子さんが、最初のの滞在で出会えたみたいに。)
「I didn't know that was true.
Have the uncle and cousin NATSUMI been here both of them with each❓」
(私は知らなかったの。ホントは義治クンが来てたって。)
(ナツミとテイラーおじさんは一緒に来てたの❓)
「No, only NATSUMI and his staff.
And, YOSHIHARU also had been with loneliness、、、いつも」
(いや、仕事のスタッフと来てただけ。)
(義治クンは、独りぼっちで来てたよ、、、いつも。)


「ティオ君は、なんて言ったの❔」
「私が二度目の滞在した時にね、あなたも来てたんだって」
「ホントだよ❔逢わなかったけどね」
「知らなかった。。。」

「ナツミくんは、夫婦旅行なのに、逢ってたんだ❔」

私は頷いた。
「偶然同じ時期に来てただけだし、あちらは仕事の撮影よ❓
特に何事もなく、一緒に食事したりしてただけなのに、旦那よりも仲良くって夫婦みたいだったんだって」
 
私はカシス・グレープフルーツをお代わりした。
 もう、お腹いっぱい。食べられない。

 私の取り皿から、パエリアとカルパッチョを横取りした、義治クン。
 こういう所は、昔から、なぜか憎めなくって微笑ましい。ナツミは、他人の取り皿の食べかけを口にしようとは、しない。
 だけど、男女関係については、どうやら逆みたいだ。
 ナツミは、恋愛感情が本物なら、他の人とデイトしていようが旦那同伴だろうが、元カレになっても逢おうとする。
 義治クンは、もっと相手の気持ち優先で、自分が会いたい想いよりも、私の状況を優先して、受け身でいる。
 外見と同じくらい、似ていないタイプだ。

「性格が違うね❓2度目の滞在は、独りで来てたの、私」
「知ってる。オレも。けど、気づくまで逢わないって、決めてた。
終わってたか。。。と、ガックリして帰った。
ぁ、イヤ。俺とが、ね、終わっちまってたか、、、と」
「あ、ごめん。始まってもいなかったかも。今頃気づいた。
付き合ってはいたけど、まだまだ、恋愛感情というには、エモさがイマイチ足りんかった、私的には」

「オレね、離れてる時思い出してるの、好きなんだ。気持ちが深まるし。
逢えたとき、テンション高いし」
「けど、現実に逢えなさすぎて、ほんとに彼氏彼女でいるつもりなんかな、、、❓って。実感が欲しいんよ、ね。この人を好きだっていう現実の実感。五感ぜーんぶで。
付き合い方は、別に形を変えていけば、好い。でも、もっと肌感覚で感じていたい。仕事とも相乗効果なんだよ❓」
「旦那と、離婚成立したら、改めて、、、言おうとしてたんだ。」



「私も、終われない。フェイドアウトとかって、公認の付き合いが自然消滅するって事でしょ❓終わるというより、やっと始まる気分なの、私。
 なんだかんだこうやって30年繋がって来たよ。男友達以上に大事な信頼関係だし、でも恋愛っていうには物足りなかった。けど一番、しあわせ。
しあわせな時間。一緒に歩いてきた感、あるよ❓」

「今度は、女としても浸れる繋がりにしよう。これから。」
「こうしてまた逢えた縁を大事にする、ね❓」
二人同時に頷いた。


 二人の様子を観て、安心してティオ君がテーブルを離れた。ロコモコ丼を右手に抱えたまま。箸は左手に持つギッチョだ。

「私は、同時に同じだけ二人を愛せない。
けど、いつも一人ずつで、時期がズレてた。
うまい具合に周期的に交代するわけでは、ないし。
でも、ずうっと、今まで他の男性には恋愛感情はないし、付き合ってもいない。でもでも、葛藤はする。
どちらかに決めなくっちゃ、、、って考えると、ね❓」


「、、、ってことは、浮気はなしか。
なんだから、いいじゃん!」
「義治クン、結婚した❓」
「いや。一回も入籍はないよ❔」
「じゃ、消去法であなたに決めても、いいの❓」
「いいよ。急に結婚したくなったの❔」
「そうじゃない。
 仕事辞めて、片道切符でSAIPAN来ちゃったから、on-line英会話や、日本語の教室でも開こうかなと、思って。
 しばらくサイパンで働くから、義治クンの身体が空いてたら、一緒に棲めたらいいなと、思ったわけ。」

「大丈夫❔俺もナツミ君も、不安定な職業だよ❔」
「んでも、今までもこうやって生き延びてきたじゃん❓
3人共大丈夫でしょ。」

「まあね。その点は月金で勤めてる人より、自由が利くしね。」
「ダメ❓ここで一緒に棲むのは❓」
「ダメじゃないよ?だから、ここに来たんだもん」
「、、、そっか。」
「うん。しばらく仕事入れないから」
「、、、ふふふ♬」
「なに?」

「なんだか。私の中から、シャポシュニコワが、消えた」
「えっ(・・? 何それ❔」
「いいから。またこんどゆっくり話す」
「始めからのつもりで、これからもよろしくな❔」
「よろしく、な♪」


ーーーThe End.

ーーー梗概ーーー
 ラジオドラマのシナリオ風に、綴ってみました。サイパン現地での会話は、同時通訳的に和訳も付記しています。
 街中では多言語が氾濫。宗教や民族文化でも、男女間でも年齢や環境でも、個々に多種多様でボーダーレスな社会性。
 現地滞在生活の中で回想を繰り返し、恋愛観結婚観や家族の在り方が嚙み合わない婚姻によって、真実の人生のパートナーを見失っていたと気づく。
 ラストに『謎のMESSAGE』が腑に落ち、永らくの呪縛『シャポシュニコワ』も思い出さなくなっていた。
 二人きりのSWEETS物語ではなく、社会とは切り離せない生活の現実として、読後に何か葛藤や思索が解ければ清々しくって嬉しいです。
                      ーーー 了 ーーー 



Vol.1➡ https://note.com/namorada0707/n/nd32fd6393900


Vol.2➡ https://note.com/namorada0707/n/n49eacd3e4506

Vol.3➡ https://note.com/namorada0707/n/n017ed645caa8

Vol.4➡ https://note.com/namorada0707/n/n0b0b17845d9d

Vol.5➡ https://note.com/namorada0707/n/n589900b4fe22


 





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