子どもは持つべきか

　ふと目に留まったインターネットの記事に「子どもがいない女性の幸福度が上がり、子どもがいる女性の幸福度が下がっている」旨の言葉があった。思わず「ふふっ」と笑ってしまった。私は3児の母。もう3人とも大人だけど。でも今子育て中の方の心労・ご苦労と思うと十分理解出来る言葉だな、って思う。社会が凄まじく悪くなってる。

　そもそも子どもを持つことがこれ程までにリスキーになるとは、という感じ。今までの歴史の中で人は、子どもを持つことの目的（リターン）をいろいろ勝手に作ってきた。ある時は「取引の手段」ある時は「働き手」そして今、子どもを持たないと決めている人に「将来淋しくない？」とか「老後の面倒誰に観てもらうの？」と尋ねる人がいるから、そういう目的も生まれているのだと思うけど。最近年配の方との関わりが増えてよく耳にする話題は「我が子が都会から帰ってこない」「心細いけど老老介護するしかない」などなど。嘆く様に自虐ネタの様に言い合う年配者は少なくない。となると、もう最終的なリターン（とされていること）は叶わないケースが多い、というのも事実。

　生まれてからは、親のキャリアとの両立で悩みの種になることもあり、学校だけでなく塾にも通わせなければならない、教育費の悩みや成績のこと友だち関係、スマホの使い方、ゲームやお手伝い…と悩みは尽きない。子どもたち同士だけでなく親同士や学校同士が成績を比べたり争ったりする中で、その中のどの辺りに位置するか、これもまた悩み。進学先で悩み、就職が出来るかどうかで悩む。いつまでも結婚しない、孫の顔はいつ見られるの…と子どもを持つことの不安や悩みが尽きない昨今で、果たして「子どもを持つことの幸せ」ってなんだろう。

　最初に書いたけど、社会がかなり悪くなってる、と言うのは上記の中の「競争」の部分。子どもたちを巡るあらゆる競争は私たちを慌ただしくする。心を失わせる。いつしかそんな風にあやふやなゴールに向かってみんなが競争を始める。競争ありきの人間関係は脆く、儚い。結果が出れば喜び結果が出ないと焦る。その繰り返し。そんな中、私は子どもを持って良かったと思う。私が子どもを巡る不安や悩みから離脱したくて選んだ道は「競争を降りること」だった。

　子どもの人生と私の人生を分けておくことを常に心に留めたのだ。

　子どもの人生は私の人生と少し重なるけれど、その先はフォークの様に大きく分かれているイメージを最初から描いていた。それこそ老後まで子どもが私の世話をしなければいけないと決め込んでしまったら、私たちの人生はずっと重なっているか、どこかで子どもがその人生を私のために方向転換しなければいけない。それを生まれた時点で私が決めるのなんて、おかしいと私は判断したのだ。一人に一つずつ与えられた人生というチャンス。それはただ私を通して3人の人に届けられただけで、私自身がそれを自分のものにして良い理由は何もない。まだ幼い子どもたち。食べるのも排泄するのも助けが必要な人たちをサポートし、彼らが自立して自分の道を歩める様に付かず離れず見守るのが私の仕事だと思っている。
　もちろん母性や自分のエゴが出てしまう時期もある。でも常に心に留めている「いつか自立する人を育てているのだ」という事実で立ち止まりながら、自制しながら反省しながら。子育てはそんな道のり。

　自分が歩んできた道を子どもを通して見る事で、新たな発見もあるし今の自分の心を豊かにする出来事もたくさんある。子どもたちのために何かをしている様で、人生の復習をしている様でもあった。そして私の思考も人生もより深みを増していった。

　私にとって子どもたちと過ごした20年間は実り多い豊かな季節で、私自身の人生にとって3人の素敵な友人が出来た、そんな時間だった。その実りをまたこれからの人生に活かしつつ私も豊かに自分の人生を生きていきたいと思う。
　
　私が政治に望むのは、子どもたちを無闇に競争させない豊かな人間教育を軸とした教育。そして親が焦らず安心して子育てできるための医療・教育の無償化。親のキャリアと子育てを天秤に乗せる様なことをさせない労働環境。今行われていることの間違いが一つ一つ積み重なって、この生きづらい社会を作っているということを知って改めていただきたい。
　もっとシンプルに、競争を強いて誰かを選んで富ませるのではなく、ここに暮らす人が取り敢えず安心して子育て出来る様に、それを軸にしたらきっと雇用や老後、多くの人の不安も取り除かれていくのだと思う。
　全ては繋がっているのに、まるで対立関係にあるかの様に断絶して戦わせる。世界の歴史の縮小版の様なこの心休まらない社会を、どうかシンプルにただ安心できる場所にして欲しい。そう願ってならない。

　子どもは全ての始まり。社会の始まり。世界の始まり。