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「白紙」を育てる危険性〜これからの教育〜

 「バイタリティ」とは活力とか生命力とかいう意味で、日本語で使う時にもエネルギッシュな人に使うことが多い。これがダメならあれ、あれがダメなら...と自分に合うものを探し求めて動き続ける人にもよく使っている。
 そう、見た目が「いかにもエネルギッシュ」というよりは、淡々と黙々と自分の道を切り開いていく人に使うことが多い気がするのだ。だから「バイタリティのある人になって欲しい」という願いは、見た目バリバリ元気な人を育てるというよりは、諦めない人、可能性を求め続ける人を育てたいという気持ちに繋がっているのだと思う。 
 即ち、もっと掘り下げると「失敗したと思ってもまた立ち上がり歩む人」「いやまだまだ出来る、と諦めない人」イコール「自分を信じる人」だ。
自分はこれには合わなかったけど、他に合う場所があるはずだ、と求めるその力は『自分を認めている人』からしか出てこないことを、どのくらいの人が理解しているだろうか。

 だから子どもには「できた、という達成感」や「自分で考えた、という満足感」「可能性」を見せる必要がある。子どもが自分で考え動くことを見守る環境が今の日本にあるだろうか。
 大人の都合か省エネなのか。手取り足取りこれはこうして出来たものをこっちに運んで...その際には私語厳禁。靴下の色は...と一挙手一投足見た目まで全て大人に管理されてはいないか。先生に従い、先輩に従い、自分は黒だと思っても先輩が白だと言ったら白だと思え、と教えられてはいないか。
 
 学校社会では大人になるまでそれが続く。18歳は高校卒業程度だ。間もなく(2021年時点)成人となる。大人になるギリギリまでは学校、部活、塾での時間が長くそこでどっぷり浸かっているのは「管理された環境」なのだ。もし家庭でのわずかな時間、対話も無く親に指導されっぱなしの子どもがいるとしたら、実に生活の100%が「管理された自分」なのだ。移動時間にSNSを眺め、好きな音楽を聴く。そんなわずかな自由時間の中に、自分と対話する時間はあるのだろうか。自分の声は誰にも、自分自身にも聴かれることがなく、日々消されていく。そしていつの間にか自分自身がなくなってしまう。
 周りの大人たちが「ここがゴールだよ」と旗を立てて待っているその場所まで走り抜け、そこからどうする?

 そんな風に大人に言われた通りに真面目に生きてきた子たちが苦悩する時代がやってくる。日本はもはや自力では立っていられず、海外との関わりの中で生きることとなる。海外から流れ込む若者たちは、自力で海外に出ようというエネルギーと可能性を持っている。日本でもいわゆる「バイタリティーのある人」たちはより良い条件を求めて海外に出て行くかも知れない。
言われた通りにしてきたゴールが自分じゃない誰かを求めていたら、それしか知らない人は、そこで行き止まり。

 英会話のレッスンで、面接のシチュエーションがあった。使っているイギリスの教科書では「良い質問は、自分のやる気を見せる良いチャンスになるから、質問はすべきだ」という流れで記事が書いてある。これは正しいか否か、という話の中で私が「日本では質問は好まれない」と言うと、イギリス人の先生が不思議そうな顔をした。「日本では被雇用者は『従う人』と認識されていることが多く、上下関係もあるので質問をする人は好まれない傾向にある」と言うと「あ、blank slateを求めているんだね。新卒を多く求めて教え込みたい...みたいな」と理解された。私はそこで、新しい言葉 "blank slate"(白紙)を学んだ。
 私は性格上疑問があると前に進めないので、人に聞いてしまう。ドラマの様にそれに興味を持たれることは、ほんのわずか。若い社長やベンチャー企業の上司などでは、そんな好印象を持たれることも多い。が、やはり大多数の場所ではその質問が無かったかの様に無視されたり、誤魔化されたりすることが多い。また返事があったとしても「決まりは決まりなんですから」と叱られる様な口調で言われることも多い。そこでふと思い出す。「中学校の靴下の色と一緒だな」私はそういう場所では働けない。だったら、自分で会社を作る。そうして自分で小さなスクールを開いた。

 これから国際化が進むと、きっとイギリスのテキストの様な「自発的な発信」は少なからず必要になってくる。「白紙」の状態ではいられないのだ。今、人に言われた通りに日々をこなす「白紙」の人を育てた先を考えてみて欲しい。その子が白紙のまま人生を過ごすとなったら、路頭に迷って「聞いてたのと違う」となったら、それは幸せな人生なのか。

 怖がらせる様だが、そんな例をたくさん見てきた。だからあなたのお子さんには、そうなって欲しくない。もう大人が知っている世界とは違う世界が待っているのだから。一旦立ち止まって教育を見直す時にきている。いつの間にか人が言う通りに生きてきた私たち大人自身がもっと社会を、世界を見て変わっていく必要がある。

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