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新時代の学び 気づいたもん勝ち

 「最近中学校で教科書の全訳が配られている」と聞いた。
訳に至るまでの過程が語学の楽しさ。それをただ配られて試験の準備をするだけなんて。語学の楽しさを伝えたいと思っている私の様な講師にはにわかに信じがたい。そういえば、よく英検の長文とかリスニングの話をすると「そんな会話ありましたっけ?」って言う子がいるけど、内容を味わわずしてテクニックだけで解いたのか、って驚く。
 
 資格試験も受験も必ず攻略法があって、そこだけを知って近道するのが良いと思われている。だから塾選びとか学校選びも「〜大学〇〇人合格」みたいな文言にすぐ飛びつく。受かったのはあなたの知らない誰かさんで、あなたが見るべきはあなた自身。それがあの文言で「自分もいける」「我が子もいける」って思っちゃうのは言葉のマジック。英検など各種試験も然り。
 裏を話すと、あれは延べ人数だったりするから、そこに所属するある英語が得意な子が一人でバンバン取っていたり、大学なんてその年に学年に数人いる勉強得意な子が何校も受けて受かってる。それに、仮にその塾や学校に行きさえすれば誰もがそうなれるのであれば、そんな小手先の何かしらを教わる怖さも同じく覚悟しておかなければならない。結果を出させたい場所の多くが、洗脳をするから要注意。「良い学校に行けばみんなから尊敬される」「良い学校に行けば親は喜び、自分も安定した人生を送れる」「勉強しないヤツ、成績の悪いヤツは馬鹿にされても仕方ない。だって努力しなかったんだから。自分は違う。だってこの塾に通えているんだもの。ここで努力して成功者になるんだ」ビジネスが教育に入り込む結果、このリスクは避けられない。だってビジネスに成功するには手段を選ばない人が多いから。顧客がまだ心も体も成長過程の子どもであろうが、容赦しない。その時は目の前の試験に合格したりと良い様に見えるかも知れないが、思考がここにはまり込んだら、それは後々その子自身を苦しめることになる。

「自分は選ばれしもの」思考は、ややこしい。
特にこれからの時代はそれが通用しなくなるから。

 一方、「点数は取れなかった(時間なかった)けど、あの話めっちゃ良かったですよね」「自然界にそんな仕組みがあるなんて、全然知りませんでしたよ〜」みたいに英語の長文めっちゃ味わってる子もいて、話す相手としたら絶対その方が魅力的だと思う。社会は学校より早めにグローバル化を始めているから、当然人間として魅力的な人を選ぶ。小手先のテクニックでなんとかくぐりぬけてきた子が、ここで大きな壁にぶち当たる。TOEIC900が使えない、というのを何かで見た。以前は資格が大きな意味を持っていたけれど、「で、何に興味があるの?何が出来るの?どんな経験をしてきたの?」ということになるだろう。英語は優れたAIが翻訳も通訳もしてくれる。そこに残るのは人間力。英語力は人間力や思考力の補助的役割でしかない。最早メインではないのだ。

 学校や塾でよく見られる、先生の雑談中に「早く教科書進みましょう」って子。成績を伸ばすことだけに精一杯。同じ様に「時間がもったいない」をセットで言う。きっとそういう大人が周りに多くいるのだろう。
 一方その雑談を自分の知識として取り入れる子もいて、そこから学びを広げる子もいる。彼らが先生の「数学愛」や「学問愛」を取り込んで大学に入っても社会人になっても学び続ける例をたくさん見る。誰かが1から10まで何かを自分に与えてくれることを待たずに、何か一つのきっかけから自分の世界を広げていく、その姿勢は人生を通してその人を豊かにする。

 もう既に「幸せになれる人は状況が安定している人」ではないことは、パンデミックを経験した私たちにはかなり納得出来る事実だろう。この「一寸先はわからない」時代の中で、どんな状況でも常に目の前のことに興味を持ち、考え、味わい学ぶ人の人間力は、日本のみならず世界の人を惹きつける。自分を大きく見せるために何かの力を借りる前に、自分の中にあるものにスポットを当てる学びを。

 とはいえ、それは今の日本の教育の先には無いから、評判だけで何かに頼ったり誰かのせいにする前に、親も一寸立ち止まってそれぞれ自分なりの方法を考える時代が来たのだろう。不登校を特別視してる場合じゃ無い。もっと多くのバラエティ豊かな学び場を国が率先して作らないと。大事な子どもたちがどんどん希望を失っていく。


追記:伝わらない場合のために詳しく↓
 おわかりかとは思いますが、私は学校や塾批判をしているわけではなくて、「ここに行けば〜大学受かるらしい」と評判だけで信じ切るのではなく、実際その場所の特徴や自分の子に合っている学びかどうかを立ち止まって考え、出来るだけいろいろな場所を見て子どもと一緒に決めるという過程があるといいな、ということを話しています。
 「味わう」は単に英語のテストの長文のことだけでなく、学び方全体に向き合う大人と子どもたちのことを表しています。

 私も同じ教育ビジネスの世界の人間ですが、やはり何も考えずに「英語伸ばして!」って飛び込んで来られるよりも、私はちゃんとこの場所を理解して選ばれたいと思っています。そうやって頼ってくださる方とは、良いお付き合いをさせていただいています。

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