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虎穴に入らずんば虎子を得ず(ゆるい解説 & 雑記)

『虎穴に入らずんば虎子を得ず』=危険を冒さなければ成功は無い

 人口に膾炙した(←お、こっちも故事成語です)、とても有名な故事成語です。
 しかしこれは『古典あるある』なのですが、現代語訳を読んだって、状況がわからないとまるで筋がつかめない。原文が短かくったって、理解できるとも限らない。
 まず原文イントロで「超曰」って言われてもさ、しゃべってる超ってダレよ? 鄯善(ぜんぜん)ってナニさ?
 まずはざっくりした状況説明を

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 漢の班超という武将が、少人数の部下を引き連れて鄯善の国に使者として向かった際の話です。
 行った当初は歓待を受けたのですが、そのうちに煙たがられるようになってしまった。
 不思議に思ってよくよく調べると、どうやら北方の匈奴(きょうど)の国からも、ここ鄯善に使者が来ているとのことだ。
 漢と匈奴は、敵対関係にありました。
 鄯善が、漢と匈奴のどちらの味方になるのか。これはこのときの関心事だったのです。

 ということは、自分たちが煙たがられ始めたのは、匈奴と鄯善が手を結んだためだろう。調べた結果、超はそのように判断しました。ならば、いまや自身の身も危うい。なにせ超の連れた40人にも満たない部下では太刀打ちできないほど、匈奴の使者群は大人数だったから。
 やらねば、やられる。そこで部下たちに向けて、かの有名な「虎穴」のたとえ話を使い、気持ちを奮い立たせます。

 けっきょく超たちは、たかだか40人にも満たない人数で匈奴の使者群を奇襲し(なんとなくスパルタ王レオニダスを彷彿とさせます)、焼き討ちにし、これを見て震え上がった鄯善国は漢に従うことにしたのだとか。

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 わたしは性格的に、対義語である『君子危うきに近寄らず』なタイプなので、こういう苛烈な話は苦手です。
 なお『石橋を叩いて渡る』とも。『命を知る者は巌牆(がんしょう=高い壁)の下に立たず』でも。

 国語の受験問題で「対義語を選べ」はしょっちゅう目にしたものですが、ずいぶん昔にどこかの学校の問題で、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』の対義語を、『棚からぼたもち』にしているものがありました。
  『棚からぼたもち』≒危険を冒していないのにうまくいった。
 そういう把握で対義語にしているのでしょう。ちょっと面白いなと思いました。
 お決まりのパターンを暗記することはテストの得点には必須ですが、お決まり以外の答えを用意できるほうが実は賢いよなぁと感心した一件です。

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