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蛇足(ウソ後編)

(昨日からウソの続き)

 他方、先にお伝えした「脚のフォルムがムカデに酷似したヘビ」が、どのように睡眠をとるのかご存じだろうか?
 もちろん知るはずないだろう。なにせ本稿は、概ねわたしのでっち上げなんだから。

 この多足のヘビは見た目同様に行動も変わっており、睡眠をとるときや休むときには、とぐろを巻かない。多数の脚が邪魔で巻けない。疲れ切った我々がパタリと布団に倒れこむのとほとんど同じような、一直線の体勢になる。
 しかし我々と違うところは、ムカデさながらその胴体からみっちりと生えたあまりにも多すぎる脚である。すべての脚を、やはり疲れ切った我々が両腕を下に投げ出すように、だらんと尾の方へと伸ばすのだ。
 するとヘビは、いったいどういうシルエットになるか?
 頭は細く、胴体はぐっと太く見えることだろう。ただし尻尾の方には脚はないから、尻尾は頭同様に細い


 そういうシルエットの、ヘビに似た生き物を、我々は知っているではないか。


 見た者に幸運が訪れるという都市伝説を持つUMA(Unidentified Mysterious Animals)・ツチノコである。
 この「脚のフォルムがムカデに酷似したヘビ」が休憩しているのを茂みで遠目から見た人が(蛇に近づくことは通常避けるはずだ)、なにやら太いヘビに似た生き物がいるぞと勘違いしたのが、昭和に起こったツチノコ騒動だったのだ。

 水晶の埋まる幸運の土地・山梨県に、この見つけると幸運が訪れるという言い伝えを持つツチノコは、いいや、ツチノコ然とした「脚のフォルムがムカデに酷似したヘビ」は、ひっそりと隠れ住んでいたのに違いない。

 余談だが、ツチノコにそっくりな生き物としてアオジタトカゲが挙げられることも多いが、こちらが我が国に輸入され始めたのが20世紀。
 18、19世紀の江戸時代の古典にツチノコの記述があることを考えると、アオジタトカゲの線は無いかと思われる。

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