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関ジャム「プロが選ぶマイベスト10曲」のこと2(後半戦)

 関ジャムの2023年マイベスト10曲の上位、後半戦が放送された。
 自分が知らないだけで、新しい歌手の素晴らしい歌は作られ続けているんだなと思い知った。
 パソコンをいじっているときは、BGMにradikoを流しているから、聞いたことがある曲もいくつかあった。けど、改めて解説付きで示されると、自分がいかに良い曲を聞き流してスルーしていたかを思い知る。「ああ、新曲出たんや」くらいな感じで。


CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN / tradition

まずおもしろかったのは、この人たち。
「名前何て読むの?」と思って調べたら、
「チョコパコチョコキンキン」らしい。

「小学校4年生で結成。全員がギターだったため小学校5年生で解散」
というプロフィールの説明がおもしろすぎて、そんなみんな赤レンジャイみたいなことある?と思いながら、関ジャムのオンエアを見ていた。
番組でも紹介されてたが、路上で楽しそうに曲を作る様子がすごい。

名前の読み方を調べてたら、出てきたこのインタビューもおもしろかった。

彼らはとても楽しそうに音楽をしている。
良い天気の日に散歩するのが心地良いように、
「自転車に乗る」「新しいことを覚える」「料理を作る」「本を読む」といったどんな行動にも、行動そのものに宿る楽しさみたいなものがある。

先週紹介されてたKhakiやラッキーセベンもそうだが、歌を歌うこと、曲を作ること、演奏することがとても楽しそうで。曲の力もあるけれど、その楽しさ自体が聴くものに響いていく感覚があった。
そういう初期衝動みたいな、初々しさ、力強さ、それでいてのびのびした感じがたまらなくいい。出そうと思って出せるものではないし、自分にはないものだから心底うらやましい。

楽譜すらドレミふらないとスッと読めないレベルの人間だけど、音楽やってみたいなという気分になった。そういう音楽へと誘われる魅力みたいなものを持ってる人たちだったな。

Laura day romance / sweet vertigo

この人たちの名前はギリギリ読める。
ローラ デイ ロマンスだ。
イントロはギタードラムベースが引っ張っていくのだが、ボーカルが歌いだした瞬間、雰囲気が一変する。洒脱なかっこいい空気感。
途中で転調し、トンネルに入ったようなダークな暗い感じもある。
気づけばポップなサビに抜けている。
全体的には軽やかで豊かなメロディ。
いろんな味が足されたような。

 テレビで見てた時は気づかなかったけど、ヘッドホンで聞くとその奥深さに気づく。歌声の後ろで、実に多様な音がなっていて、そのどれもが響きあっていて良い。

 都会から少し外れた住宅街を歩く、金曜の夜。
 歩きながら踊りだしそうな、つい口元がゆるむような。
 きらきらしていて、解放感がある。音の数は多いがのびやかで、落ち着きもある。誰もいない夜の公園から、車や人が行きかう道路を見ているくらいの距離感。
 心地よいメロディーに比べて、歌詞は日常の影や孤独を感じるところもあるけれど。聴くものの心を軽くして、一人ぼっちの夜に寄り添って響いてくれる感じがする。

 世代的に、イントロやアレンジはくるりの影がちらついて、歌いだしのあたりでLOVE PSYCHEDELICOのKUMIさんの顔がぼんやり浮かぶ。サビはブリグリやその後のTommyが脳裏によぎる。頭が無意識に自分の知っているものと比べてカテゴライズしようとするのだろう。
 ただ間違いなく言えることは、Laura day romanceが順当に進化を続けている現代の新しい音楽であること。自分の中のいろんな記憶が刺激されているのだろう。
(年を重ねてくると、自分の引き出しにある過去に聞いていたものをすぐに引き合いに出したくなる。新しいものをありのまま聞くということは、実は難しいことなのかもしれない。)

君島大空 / c r a z y

聞いたことがある。なつかしい感じ。
もはやずっと前から知っているように馴染む。
でも冷静に考えてみると、いきなり実家のリビングで見知らぬ人がくつろいでいるような違和感がある。

この間の日曜にはじめて聞いてばかりなのに。
会ったばかりの人が懐かしいなんてことが…
と思ったが、まあ別に悪いことではないのかもしれない。
むしろ、それがこの曲のすごさか。

 この季節になると、あちこちのスキー場でBGMの音楽が鳴り響いている。
くもり空の雪山でこの曲が鳴り響いていたら、めっちゃかっこいいだろうなと思う。リフトに乗りながら聞きたい。

それにしても、芸術系の雰囲気がある曲だ。
映画の下妻物語をはじめて観たとき、
椎名林檎のギブスをはじめて聞いたとき。
(ギブスはダーリンの歌詞から想起されてるのかもな。)
音楽であり、映画であり、絵画であるような不思議な感覚だ。
画面一枚挟んで向こうの世界のような、幻想的な美しさがある。

同時に、グロテスクさというか生々しさみたいなものもある。
焼肉屋ですごいきれいに肉や内臓が盛り付けられて出てきた時の感覚。
「おいしそう」「きれい」というプラスな感情と、牛は殺されてるのだから残酷だよなみたいな負の感情が共存してる感じ。

歌の中の主体は狂いそうなくらい苦しんでいるんだけど、それをガラス一枚隔てて楽しんで眺めている自分がいる。
大雨も雪も自分に降りかからなければ、うつくしい風景として楽しめてしまう。みたいな他人事の世界。
よく考えてみたら映画もそうだ。戦争映画を観ても弾丸は客席に飛んでこないし、恋愛映画を観ても自分の恋人は死なない。
その向こう側のことという安心感があるから、すごいヒリヒリした熱量のある狂気や苦しみを音楽として鑑賞できてしまうんだろうな。

心象風景に訴えかけてくる。
心の奥深くの遠い場所をくすぐられるから、懐かしく感じるのかも。
鏡にずっと話しかけ続けてたら、おかしくなるみたいな話を聞いたことがある。創作活動という自分と向き合い続ける作業をしていると、鏡に話しかけているような不思議な作品が出来上がることもあるのだろう。
すごい才能のある人だ。

クリープハイプ / 真実

ギター一本で歌う曲。いいよね。
機材や楽器をたくさん使った作りこまれた楽曲ももちろんいいのだが、ライブで何曲かやった後でアコースティックギターに持ち替えて、照明を落としてギターとボーカル一本で歌う曲があると、ぐっと引き込まれる。みんなが静かに、でも集中して聴いている感じが良いんだ。

手の込んだ料理もいいけど、とれたてのトマトとか新鮮な刺身とかがやっぱ強いみたいな。たらふく焼肉食べたあとの、ゆずシャーベットがうまいとかさ。小道具ありのコントもいいけど、マイク一本の前に立ってしゃべくりだけで爆笑かっさらう漫才がかっこいいみたいな。
シンプルなものだからこその良さみたいなのを感じる。

もちろん曲の良さと、歌手の魅力あってのもんなんだろうけど。
素材で勝負って感じの曲。
真実と幽霊のはざま。
(関係ないけど、北杜夫の『幽霊』って小説があってさ。なぜか、それが読みたくなった。)
(クリープハイプの曲では、栞が一番好きでさ。それは不動の一位だ。 Radio Bestsellersのバージョンが最高。)

TOMOO / Super Ball

ラジオでよく流れているので、新しい歌手発見ということはなかったけれど。(1位はいつもそんな人たちが来ることが多いよね。)
たしかに最近勢いある感じがする。

番組の中で、丸いスーパーボールと四角いビルの対比の話が出ていた。
それが「丸いままつらぬいて」につながることが絶賛されていた。
たしかにスーパーボールのように躍動感のあるメロディと歌詞が素晴らしい。

賑わいのない 遊具のかげに
砂利を探れば 誰かのBB

歌詞にBB(弾?)という言葉も出てくる。
なつかしい。
人気のない公園でBB弾が落ちている。
エアガンで誰かが遊んでそのままにしているのだろう。
BB弾って色付きのものや透明のものがあって、幼稚園くらいの時にその用途も知らないまま集めてた。丸くてきれいだったから。
(小さい子どもって丸くて小さいもの好きだよね。ダンゴムシとかパチンコ玉とかもそう)
パチンコ玉がギャンブルに、BB弾がエアガンの打ち合いに使われるものだと知るのは、それからだいぶ大きくなってからだ。パチンコ玉は磁石にひっつくし、BB弾は静電気で遊べる。
(なんか落ちてるものの治安の悪い公園だな。近所の公園なんだけど)

丸いものが貫くって意外性があるように感じるけど、そもそも弾丸って漢字に丸が入ってる。映画とかで見る、今の弾丸は円錐形や円柱形で先がとがっているものが多いけど、もともと真ん丸で貫くものはあったんじゃないかとか、ツッコミたくなってしまう。(BB弾も丸いし)
 これは自分の性格が悪くて、ひねくれてるせいかもしれない。

 スーパーボールから連想するものをつないでいって、対比や比喩やイメージの飛躍で遊んでるような印象だった。ボールに等身大の自分を重ねているから、不安とか悩みとか憧れなんてのも乗っかてくる。おしゃれマジカルバナナを音楽にのせて、みたいな。

 スーパーボールって小さいときよく遊んだけど、遊びにくいオモチャだった。カラフルでかわいくて、投げるとめっちゃ跳ねて最高に楽しい。
 でも、めっちゃ跳ねるから、おもいきり投げられない。加減して投げてても、楽しくなってきて調子に乗っちゃうと、コントロールをミスしたり予期せぬものに当たったりして、どっかに跳んでいってしまう。
 じゃあ外だといいのかっていうと、周りの人にぶつかったり、見失う可能性が家より増えたりして、めちゃめちゃ楽しそうなポテンシャルを持っているのに活かしきれないまま遊ばなくなったオモチャだった。
 ばかでかい体育館とかで、大小さまざまなスーパーボールで遊べたら楽しいだろうなとは思う。

そういえば、SONYのBraviaのCMで街でスーパーボール跳ねまくるCMがあったのを思い出して、この曲に合いそうだなと思った。

バルーンのこのCMもいいよね。

ちょっと前にボールが街で跳ねてるCMあったよなと思って探してたらさ。
15年前って書いてあって。
え?と思った。
そんな前なん、こわ。


というわけで、しばらくは関ジャムで紹介された曲を聴いてまわって、あれこれ思いを巡らせながら、楽しく過ごせそう。
感謝、感謝。
過去のマイベストもたまにTVerで配信してほしいな。

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