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フグ田ナマガツオ
2023年8月21日 00:04
お題:さよならを言う前にさよならとまだ言いたくなくて、宛もないのにモタモタと公園に寄ったり、解けてもいない靴紐を結び直したりしていた。悠はぴょこぴょことついてきて、いつも通りのたわいもない話をしていた。歩き慣れた帰り道のアスファルトが、別人のようでいつもより靴底が馴染まない気がした。私は悠と違って地元に残らないから、この道を歩くことはもうしばらくない。春風が散らせた桜が足元で舞って
2023年4月11日 18:09
お題:春爛漫ここに来るのは、10年ぶりだ。季節はうるさいくらいに春めいて、桜の花を爛漫に光らせる。桜の元に集う群衆はどれも、陽光に勝るとも劣らない笑顔をさんざめかせ、馬鹿騒ぎをしている。10年前に見たときはこれほど人が集まるような場所ではなかったけれど、随分と出世したものだ。ここは山の深いところで、道路も通っていなかったのだが、観光の目玉にしようと目をつけた行政が、道路を開拓し、公園を