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実在架空

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誰かの頭の中に存在したもの
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#感想

備忘:少女とシミュレーション

頭に植え付けられ今も逃れられずにいる死への恐怖を克明に描くことに関して、私は『少女終末旅行』を越える作品を知らない。『シメジシミュレーション』もまた、自我の境界を異様な迫力で描いている。

既知の記号

少女と少女の出会い。溶け落ちる世界。メディアの自己言及。馴染み深い記号が並ぶ。しかし懐かしいという表現は不正確かもしれない。それらをつくみず氏のようにまとめ上げることをできる人間が同時代に何人いる

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求恐

The Lighthouse
同監督のThe Witchが程よい温度感の映画だったので、こちらもと。

端的に言って、思っていた以上に観ていて負荷のかかる映画だった。ジャンプスケアに相当する地雷は無かったものの、前振り付きの大仰な演出は多く、気持ちよく見れるシーンよりも疲れるシーンの方が多かった。この作品に限らず、アンタゴニストの目を盗んで鍵を盗む展開って不要では?と昔から思っている。(映画全般が

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百合漫画の感想少し

ネタバレに対する配慮の一切を欠いた文章を提示する前に、冗長なパラグラフを配置しておきたい。一般的にこの際に用いるべきはローレム・イプサムという魔法の呪文のようなものだが、それではパラグラフを配置した意味を一見して理解してもらうことができない問題がある。またこの点で、私はこのパラグラフの頭に"ネタバレ"という語を配置し、この先にネタバレに対する配慮が一切ない文章が続くことを言明しなければならない。こ

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ニューヨーク三部作/ポール・オースター

オースターのニューヨーク三部作を読んでいた。緩やかに繋がった連作というのは好物なもので、事前の期待程には奇妙な小説で無かったものの、満足の行くものだった。大雑把に表すなら、探偵仕事に就いた男が狂気に囚われ、変質していく様を描いた小説だ。自己の探究を主題としているらしい。

この小説は、基本的に探偵と作家しか登場しない。そして、物語が形成する枠内において、二つの職業は重なる部分が多い。『ガラスの街』

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