海に来た。 初めて来る海だ。 見知ったそれとは違う、青空をそのまま反射したような青い海だ。 イソくさい。 昨日の波が運んできた海藻が浜に打ち上げられている。 海…
髪を切った。 トイプードルくらいの大きさの髪の毛の塊が足元に転がっていた。 「ハイライト入れてもいいですか?」 「好きにして下さい」 あれほど時間と金をかけ手入れし…
まず、生卵を用意する前に用意しなければならないものがある。 それはキミ自身だ。 卵と向き合う前にキミを卵に近づけさせてはならない。 なぜって。 例えば向き合うも…
ピアスを開けた。 冷凍庫からありったけの氷を出して、袋に入れ、痛いほど耳を冷やす。 母はソファで寝ている。 耳の感覚がなくなってきた頃、ピアッサーを耳にあてる。…
梅雨も中頃の晴れた日の夜。 湿気と暑さで夏の匂いが充満していた。 汗でぺとぺとするTシャツを脱いで洗濯機に放り込み、仕事着と一緒に回す。 寝巻きと仕事着を一気に…
nakajima
2019年5月9日 02:02
海に来た。初めて来る海だ。見知ったそれとは違う、青空をそのまま反射したような青い海だ。イソくさい。昨日の波が運んできた海藻が浜に打ち上げられている。海が怖い。晴れた日の陽気な海が怖い。黄色く渇いた砂浜と青い海。シンプルな、馬鹿げた陽気を表現したようなカラーリング。その暴力的なまでの陽気さの中に所在無げに、しかしはっきりとその存在を横たえているドス黒い藻。渇い
2018年12月29日 04:44
髪を切った。トイプードルくらいの大きさの髪の毛の塊が足元に転がっていた。「ハイライト入れてもいいですか?」「好きにして下さい」あれほど時間と金をかけ手入れしていたものが、今はもう只の生ゴミだった。「長い髪も見てみたいな」クリームあんみつを食べている私を見ながら、彼は言った。当時の私の髪は全体にふんわりとパーマをかけ、肩に付かないくらいの位置で揺れていた。「えーじゃあ、伸ばそうかな
2018年12月1日 00:31
まず、生卵を用意する前に用意しなければならないものがある。それはキミ自身だ。卵と向き合う前にキミを卵に近づけさせてはならない。なぜって。例えば向き合うものが卵でなく、猫でも猿でも取引先の社長でも何でもいい。一対一で向き合う時、きっとキミはキミ自身をその対象と同じ、またはそれに近い位置に持っていくはずだ。心構え、というべきだろうか。そういうことだ。では対象が生卵の場合
2018年12月1日 00:29
ピアスを開けた。冷凍庫からありったけの氷を出して、袋に入れ、痛いほど耳を冷やす。母はソファで寝ている。耳の感覚がなくなってきた頃、ピアッサーを耳にあてる。開ける位置に気をつけて、一気にボタンを押す。「バチン」という音がテレビの音の間で響いた。痛みよりも母が起きなかったかということに気を取られ、恐る恐るソファの背中越しから母の方を見た。母は寝ていた。鏡で耳を見た。
2018年12月1日 00:24
梅雨も中頃の晴れた日の夜。湿気と暑さで夏の匂いが充満していた。汗でぺとぺとするTシャツを脱いで洗濯機に放り込み、仕事着と一緒に回す。寝巻きと仕事着を一気に放り込まれ、雑に洗われる洗濯機の中は、彼女の日常そのものだ。ノンワイヤーのブラジャーを付け、キャミソールは着ずに真っ青のワンピースを頭から被る。四年前に古着屋で購入したワンピース。綿100パーセントのこの青いワンピースは四年と