nakajima

徒然なるままに日常を書き連ねます。言葉と写真。

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最近の記事

海の話-1

海に来た。 初めて来る海だ。 見知ったそれとは違う、青空をそのまま反射したような青い海だ。 イソくさい。 昨日の波が運んできた海藻が浜に打ち上げられている。 海が怖い。 晴れた日の陽気な海が怖い。 黄色く渇いた砂浜と青い海。 シンプルな、馬鹿げた陽気を表現したようなカラーリング。 その暴力的なまでの陽気さの中に所在無げに、しかしはっきりとその存在を横たえているドス黒い藻。 渇いた空気の中、ヌメヌメとした湿り気と臭気を纏うそれは、私に逃れようの無い「死」を連

    • 髪の毛の話

      髪を切った。 トイプードルくらいの大きさの髪の毛の塊が足元に転がっていた。 「ハイライト入れてもいいですか?」 「好きにして下さい」 あれほど時間と金をかけ手入れしていたものが、今はもう只の生ゴミだった。 「長い髪も見てみたいな」 クリームあんみつを食べている私を見ながら、彼は言った。 当時の私の髪は全体にふんわりとパーマをかけ、肩に付かないくらいの位置で揺れていた。 「えーじゃあ、伸ばそうかな」 私はクリームあんみつの美味しさで頭の中が95%ほどいっぱいだった(私の頭は容

      • 生卵の立て方

        まず、生卵を用意する前に用意しなければならないものがある。 それはキミ自身だ。 卵と向き合う前にキミを卵に近づけさせてはならない。 なぜって。 例えば向き合うものが卵でなく、猫でも猿でも取引先の社長でも何でもいい。 一対一で向き合う時、きっとキミはキミ自身をその対象と同じ、またはそれに近い位置に持っていくはずだ。 心構え、というべきだろうか。 そういうことだ。 では対象が生卵の場合はどうするか。 Step1. 腹を満たす もしキミが卵と向き合う時に腹を空か

        • ピアス

          ピアスを開けた。 冷凍庫からありったけの氷を出して、袋に入れ、痛いほど耳を冷やす。 母はソファで寝ている。 耳の感覚がなくなってきた頃、ピアッサーを耳にあてる。 開ける位置に気をつけて、一気にボタンを押す。 「バチン」 という音がテレビの音の間で響いた。 痛みよりも母が起きなかったかということに気を取られ、恐る恐るソファの背中越しから母の方を見た。 母は寝ていた。 鏡で耳を見た。 耳は赤くはなってはいたが、血は出ていなかった。 金色の丸いピアスが光ってい

        海の話-1

          夏の壱 ワンピースとビール

          梅雨も中頃の晴れた日の夜。 湿気と暑さで夏の匂いが充満していた。 汗でぺとぺとするTシャツを脱いで洗濯機に放り込み、仕事着と一緒に回す。 寝巻きと仕事着を一気に放り込まれ、雑に洗われる洗濯機の中は、彼女の日常そのものだ。 ノンワイヤーのブラジャーを付け、キャミソールは着ずに真っ青のワンピースを頭から被る。 四年前に古着屋で購入したワンピース。綿100パーセントのこの青いワンピースは四年という月日を経て、すっかりくたくたになっていた。 ウエストにあったはずの同じ生地

          夏の壱 ワンピースとビール