Ryutaro Nakagawa

弁護士、Fashion Law Institute Japan研究員。noteではファ…

Ryutaro Nakagawa

弁護士、Fashion Law Institute Japan研究員。noteではファッションを中心に、デザインと法について発信していこうかと思います(試験運用中)。 DESIGN/LAW https://ryutaronakagawa.tumblr.com/

最近の記事

結合商標の分離観察をめぐる区別説と例示説

前回も紹介しましたが、図形や文字などの複数の要素を組み合わせた結合商標の類否判断の場面で、その一部を分離して観察することが許されるのはどのような場合かについて論じた拙稿「商標登録に向けて何を検討すべきか――結合商標の分離観察の基本と応用」が、ジュリスト2023年10月号に掲載されました。 その中で、「リラ宝塚事件最高裁判決とつつみのおひなっこや事件最高裁判決の関係をどのように理解するか」という問題について、これまでは区別説が代表的な見解であったものの、近年の知財高裁判決の中

    • 結合商標の分離観察の可否に関する裁判例整理表(2023年8月まで)

      すこし前の話になりますが、結合商標の分離観察の可否について論じた拙稿がジュリスト2023年10月号に掲載されたのですが、その注28で、 と予告していたにもかかわらずサボっていたところ、 という事態に先日陥りました・・・。 ということで、重い腰を上げて資料を公開します。 これは、結合商標の分離観察の可否について判断した平成21年以降の知財高裁判決のうち、裁判所ウェブサイトに掲載されている146件を表の形式で整理した資料です。裁判所ウェブサイトへのリンク付きです。 あく

      • 『デザイン保護法』分担執筆時に考えていた3つのこと [DESIGN/LAW]

        こんにちは、弁護士の中川です。 先日、共著として参加した『デザイン保護法』(茶園成樹=上野達弘編著)が勁草書房さんから出版されました。 今日は、担当部分(第4章 空間デザイン)の執筆時に考えていた3つのことについて、書き残しておきたいと思います。 1. オーダーに応える まず一番に考えたのは、「なるべく依頼の本旨に沿って書き上げよう、期待に応えよう」ということでした。 勁草書房編集部の中東さんに執筆依頼をいただいた時の出版企画の概要は、このような内容でした。 な

        • 日英EPAの気になる点① --「商品の登録されていない外観」の保護 [DESIGN/LAW]

          こんにちは、弁護士の中川です。 今日は、10月23日に締結された日英EPA(包括的経済連携協定)の中の知的財産に関するルールについて気になっている点2つのうち、まずはデザインに関するポイントを取り上げたいと思います(もうひとつは「悪意の商標」問題です)。 締結されたばかりでまだ掘り下げられていないのですが(なので、全く見当はずれの可能性もあります)、現時点での疑問点をnoteにメモしておきたいと思います。 知的財産の保護と内国民待遇上記のとおり、10月23日に日英EPA

        結合商標の分離観察をめぐる区別説と例示説

          デザインの保護の4象限マトリクス [DESIGN/LAW]

          こんにちは、弁護士の中川です。 今日は、「デザインの保護の4象限マトリクス」について簡単に紹介したいと思います。 今年の7月に、一橋大学の長塚真琴先生のお声がけで、弁護士の海老澤さんと一緒に一橋大学・中央大学学生セミナー「ファッションロー入門」に登壇しました。私からは、「ファッションデザインの保護の難しさ : 不競法・商標法・意匠法」と題して学部生・院生の方々にファッションデザインの法律による保護について、実務上の難しさも含めてお話ししました(そのときのレジュメはこちら)

          デザインの保護の4象限マトリクス [DESIGN/LAW]

          「デザイナーが自らの名をブランド化する自由とその危機」の続き

          こんにちは、弁護士の中川です。 「ファッション業界では、国内外を問わず、デザイナーの名前を冠したブランドは数多く存在します。しかし、日本では今、新たなブランドがデザイナーの氏名をブランドネームとすることが商標法により阻まれてしまうという状況が本格的に到来しています。」 先日、このような書き出しで、コラムを書きました。 詳しくはぜひお読み頂ければと思いますが、ごくごく大雑把に言うと ・日本では「他人の氏名」を含む商標の登録を原則として認めていない(商標法4条1項8号、当

          「デザイナーが自らの名をブランド化する自由とその危機」の続き

          3つのニュースで振り返る2019年のデザインと法 [DESIGN/LAW]

          2019年も、デザインと法に関するニュースがたくさんありましたね。その中から印象的だったものを、独断と偏見で、3つだけピックアップしてみました。 1.  adidasの3本ライン商標がEUで無効に?🇪🇺数多くあったデザインと法関連のニュースの中で、おそらく一番広く話題になったのではないか、と僕が思うのは、adidasの3本ライン商標を巡るEUの判決のニュースです。 ただ、このEU一般裁判所の判決は、事案や法律論がやや複雑であったこともあり、残念ながら「EUではadidas

          3つのニュースで振り返る2019年のデザインと法 [DESIGN/LAW]

          モンクレールやパネライのデザイン保護戦略と位置商標 [DESIGN/LAW]

          昨年のモンクレールに続き、今年9月にパネライもついに登録に成功した「位置商標」。先日、日清のカップヌードルのデザインの位置商標が話題になったとはいえ、おそらくまだまだ耳慣れない人も多いかと思います。今回は、この位置商標によるデザインの保護戦略についてご紹介します。 ・位置商標という特殊な商標がある ・商品の特定部分のデザインがブランドのアイコンとして広く認識されて  いる場合には、デザインを保護する上で有力な選択肢のひとつになる デザイン(形状)そのものが商標となるケ

          モンクレールやパネライのデザイン保護戦略と位置商標 [DESIGN/LAW]

          ファッションデザインの模倣と「色違い」 [DESIGN/LAW]

          Photo by Etienne Girardet ・ファッションデザインの模倣に関する裁判例が増えている・「模倣」か否かの境界線は曖昧だが、一定の傾向がある・2018年4月の判決は、女性服の「色違い」は一般に「模倣」の判断に 強い影響を与えないと整理しており、参考になる  不正競争防止法では、他人の商品の形態を模倣して販売等する行為が不正競争であると定められていますが、2018年に入り、ファッションデザインについて「模倣」かどうかが争われた裁判例が続いています。

          ファッションデザインの模倣と「色違い」 [DESIGN/LAW]