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モンクレールやパネライのデザイン保護戦略と位置商標 [DESIGN/LAW]

昨年のモンクレールに続き、今年9月にパネライもついに登録に成功した「位置商標」。先日、日清のカップヌードルのデザインの位置商標が話題になったとはいえ、おそらくまだまだ耳慣れない人も多いかと思います。今回は、この位置商標によるデザインの保護戦略についてご紹介します。

・位置商標という特殊な商標がある
・商品の特定部分のデザインがブランドのアイコンとして広く認識されて
 いる場合には、デザインを保護する上で有力な選択肢のひとつになる

デザイン(形状)そのものが商標となるケース

ブランドロゴのような典型的な商標以外にも、あるデザインに接した消費者が「あのブランド(の商品)だ」と識別できるような場合(それほど、そのデザインが広く知られている場合)、そのデザインを商標として登録・保護できる可能性があります(DESIGN/LAWでも繰り返し紹介している通りです)。

代表的な例は、商品の立体的な形状そのものを商標として保護する立体商標です。例えば、エルメスのバーキンやルイス・ポールセンのPH5のデザインは、そのデザインがそれぞれのブランドを示す「アイコン」として日本でも広く知られているとして、立体商標としての登録を認められています。この場合、このデザインを第三者が勝手に自らの商品に使用して製造・販売すると、たとえエルメスやルイス・ポールセンのブランドロゴを使用していなくとも、商標権侵害となってしまいます。

「PH5」の立体商標(登録第5825191号)

位置商標とは?

それに対し、商品全体の形状ではなく、部分的なデザインが、商品の特定の「位置」に取り込まれることでブランドを示す機能を発揮するケースがあります。この場合、これらの部分的なデザインは「位置商標」として登録が認められる可能性が出てきます。言葉だけだとイメージが湧きにくいと思うので、ファッションデザインの分野から、最近の具体例を2点ほど見てみましょう。

モンクレールの位置商標

まずはモンクレールです。画像の左胸にワッペンが付されていることが確認できるかと思います。これが位置商標として登録が認められたということは、「このワッペンのデザイン」が、ダウンジャケットなどの左胸に「位置」した場合、消費者は「モンクレール(の商品)だ」と認識する、言い換えればそれほどまでに「このデザイン×この位置」の組み合わせは、日本でも広く知られている、と特許庁がお墨付きを与えたことになります。

モンクレールのワッペンの位置商標(登録第5995041号)

注意する必要があるのは、位置商標の場合、あくまで特徴となる部分のデザインこそが重要であるため、保護の仕方もそのように工夫されているケースが多いことです。例えば上記のモンクレールの場合、ワッペンの外枠のみが実線で描かれ、それ以外の部分は破線(点線)で描かれています。これは、点線の部分は参考イメージに過ぎず、点線部分が異なるデザインであっても、「このワッペンのデザイン」がダウンジャケット等の「左胸に位置する」場合には商標権侵害となる、ということを示しています。

パネライの位置商標

続いて、位置商標としては最新の登録例である、パネライのリューズカバーのデザインです(2018年9月14日登録)。

パネライのリューズカバーの位置商標(登録第6080187号)

この場合も、この位置商標が登録されたということは、「腕時計のリューズカバーのこのデザイン×この位置」という組み合わせが、パネライを象徴するものとして広く知られていると認められたことを意味します。また、破線(点線)については同様に参考イメージに過ぎないので、たとえ上記点線と異なる腕時計のデザインに今回のリューズカバーが使用された場合でも、今回のパネライの位置商標の侵害となる可能性が高くなります。

まとめ

位置商標の登録例がまだまだ少ないことが物語っているように、「このデザイン×この位置の組み合わせ」がブランドを示す「アイコン」として広く認知されていることを立証するのは、決して簡単なことではありません。

しかし、「商品の特定部分のデザインがブランドのアイコンとなっている」というケースでは、この「位置商標」は、デザインやブランドを保護する上で有力な選択肢のひとつになり得るでしょう。

(2018/11/14 最後の「まとめ」の表現について追記・修正しました。)

Photo by rawpixel

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