見出し画像

ファッションデザインの模倣と「色違い」 [DESIGN/LAW]

Photo by Etienne Girardet

・ファッションデザインの模倣に関する裁判例が増えている・「模倣」か否かの境界線は曖昧だが、一定の傾向がある・2018年4月の判決は、女性服の「色違い」は一般に「模倣」の判断に 強い影響を与えないと整理しており、参考になる

 不正競争防止法では、他人の商品の形態を模倣して販売等する行為が不正競争であると定められていますが、2018年に入り、ファッションデザインについて「模倣」かどうかが争われた裁判例が続いています。

「模倣」の限界はどこか

 この「模倣」につき、法は「他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと」と定義していますが、どこまで似ていたら「実質的に同一」なのか、境界線は曖昧です。ただ、過去の裁判例を見ると以下のような一定の傾向があります(参考:Fashion Lawセミナー)。

【A】相違点が色や柄だけである場合   → 実質的同一性を肯定する傾向【B】需要者に異なる印象を与える場合   → 実質的同一性を否定する傾向【C】相違点が同業者にとって容易な変更である場合   → 実質的同一性を肯定する傾向【D】創作的な要素がそのまま利用されている場合   → 実質的同一性を肯定する傾向

色が違っても「実質的に同一」か?

 そして、約1億4000万円の損害賠償を認めて話題となった冒頭の2018年4月の東京地裁判決では、上記の傾向A・Bに関連して、女性服の色違いと実質的同一性について正面から取り上げて、以下のとおり論じています。

 法において,「商品の形態」とは,「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう」(法2条4項)とされており,色彩も,商品の形態の一部を構成するものである。 したがって,色彩の違いが商品の形態の実質的同一性の判断に影響を与えないとする原告の主位的な主張は採用できない。 しかし,他方で,婦人服において,形状が同じで色彩だけ異なるいわゆる「色違い」の商品が広く存在していることは公知の事実であるから,婦人服の需要者も,当然に,形状が同じで色彩だけが違う婦人服が存在することを認識しているし,また,婦人服の形態の開発において資金・労力を投下する主な対象は色彩以外の点であると解される。そうである以上,婦人服における色彩の相違は,それが顕著に異なる印象を与えるようなものである場合はともかく,そうでない限り,一般には,形態の実質的同一性の判断に強い影響を与えないというべきである。

 このように、東京地裁は「色の違いがおよそ実質的同一性の判断に影響を与えない」という極端な立場は採用せず、しかし同時に、法の趣旨(先行開発者の投下資本の回収機会の確保)に立ち返りながら、(例外的なケースを除いて)一般的には、色の違いは実質的同一性の判断に強い影響を与えないと整理しています。従来の傾向Aを改めて確認するとともに、結論としてもバランスのよいところに落ち着いている判決といえるでしょう。

右:原告商品 左:被告商品(裁判所HPより)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?