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小説感想_不手折家「雨桐さんは人間」

1年ぶりくらいの小説感想。(最近読んでいるweb小説記事は定期的に書いてますが単独の作品の感想記事は久しぶり)


こちらの作品。
作者は最近読んでいるweb小説にもよく出てくるし単独の小説感想記事も書いたことのある不手折家さん。
書籍化されている「亡びの国の征服者~魔王は世界を征服するようです~」も小説家になろうCi-enで現在更新中の「竜亡き星のルシェ・ネル」もすごく面白い。(最近の僕の中での小説家ランキング上位3人には確実に入る作家さん)

で、今回はその不手折家さんが出版社を通さずKindle自費出版で新作を発売するというのを見かけて購入。
noteだとけっこうエッセイ的なのやhow to的なのをKindle出版してる人がたくさんいるような気がしますが小説家が自分でKindle出版するパターンは初めて見たかもしれません。
こうやってあまりリスクを背負わなくても(Kindleは売上から手数料を引かれるが出版自体は無料っぽい)作品を流通に乗せられるというのは良い気がします。(作品がたくさん出てくるので売るのが難しいという部分はありますが)

そしてようやく中身についての感想。
紹介文に中編と書いてあるようにほどほどの長さの作品。(僕は空き時間を見つけて半日くらいで読みました)
舞台はほぼ現代と言っていいくらいの近未来。
主人公は感情が薄く周囲から機械みたいだと言われ続けてきた人間。
そんな主人公のところに突然ある研究所から連絡があり、高額の報酬で1人の少女と同じ部屋で過ごすだけ、という仕事をするようになる。
その少女が研究所で研究対象になっていることは明白で普通でないことは間違いないが正体も事情もわからない。
それでも主人公は特に気にせず少女と日々過ごしていき、少しずつではあるが関係性が変わっていく…という感じの話。

おおざっぱに捉えればよくある設定とも言えるが(突然謎の研究所から連絡が、とか、謎の人物と普通に過ごすだけで報酬が、とか、その研究所や人物には様々な裏の事情があって、とか)、読んでみると新鮮な感じがする。
人間味の薄い主人公と人間味の無い少女、という対比が新鮮に感じるのかもしれない。
1と0では無く、0.01と0のような微妙だが決定的な差をうまく扱っているいるように思う。
あとはAIというものが非常に身近になってきたこの時代だからこそのリアルさがある。
非常に面白い。

またあとがきでは表紙や挿絵がAIによる作画であること、またAIによる作画の長所短所などが詳しく書かれており、作中の世界観と関連性があるような気もして面白い。(作者自身が選定したということもあり、普通の商業書籍より作品と絵の一貫性があって良いと個人的には思った)

この作品は不手折家さんの中ではかなりライトな部類(量的にも内容的にも)に入ると思うので、興味があるけどまだ読んだことが無いという方には特におすすめです。(他の作品の重厚さも良いですがライトなのもまた良い)

というわけで今日はここまで。


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