NTT,KDDI...和製LLMの必要性 -Chat-GPTではだめなの?【後編】
前編の続きです。
大規模言語モデル(LLM)には、ソースコードが公開されていて無料で使えるオープン系と、ソースコードは公開されていないクローズ系があることをお話ししました。
国産独自LLMの必要性
NTTやKDDIが、独自のLLMを持ちたい、開発したい理由は、日本の特定分野、業界、会社用に、完全カスタマイズしたLLMを構築するには、クローズ系のカスタマイズではできないからです。
前編で説明した通り、プロンプトエンジニアリングや、ファインチューニングにより、Chat-GPTもカスタマイズはある程度できます。
しかし、特定領域に特化したLLMを開発するには、Chat-GPTやGEMINなどの特定ベンダーのクローズ系のLLMを小手先でカスタマイズするだけでは、限界があるのです。
Chat-GPTのカスタマイズは「セミオーダースーツ」のようなもの
クローズ系のChat-GPTをカスタマイズするということは、例えるなら、セミオーダースーツを作るようなものです。
セミオーダースーツは、あらかじめ出来上がっている型のスーツをベースに、肩を1センチ長くしたり、ウエストを3センチ小さくしたりはできますが、しょせんは、原形のスーツの微調整レベルであり、体に完全にフィットはしませんし、どうみても紳士服のスーツです。
スーツでなく、カジュアルなセットアップや、カーディガンを作りたくても、セミオーダースーツでは対応できません。
それと同じように、Chat-GPTを利用をプロンプトなどでカスタマイズしても、内部のAIシステムそのものは変更しないので、オーダーメイドのように、自分の体にピッタリとフィットしたスーツは作れないのです。
仮に、OpenAIがChat-GPTの中身をいじってもいいよ、となったとしても、Chat-GPTのように巨大な言語モデルに対して追加学習するには、多大なパラメーターの計算をすることになり、多大なGPUとコストが必要になります。
LLMの二極化時代の始まり
この先の大規模言語モデルは、
①AGI(汎用人工知能)を目指すメガテック企業の開発するクローズ系LLM
②業界、会社、業務特化型の小規模なオープン系LLM
に二分化されていきます。
日本企業が独自にLLMを持ちたい理由は、
①根本的に特定領域、業界向けにカスタマイズしたいから
②莫大な利用料金を、OpenAIやGoogleに支払いたくないから
と、大きく2つの理由があります。
そして、OpenAIやGoogleはAGIを目指し、NTTやKDDIは、AGIよりも、日本の特定業界やビジネスに精通した生成AIを開発していくことになるでしょう。
日本でAGIは開発されないであろう理由
日本で、OpenAIのような、AGIは開発しないのか?と聞かれそうですが、おそらく、AGIは開発されません。
AGIを開発するには、莫大なコストと、GPUを利用しないといけませんが、日本のUTベンダーには、そのどちらも、米国のメガテック企業に比べると、明らかに不足しているからです。
今後、AGIを目指す生成AIと、特定の用途に使える、局地型の生成AIの2つの方向性に、生成AIの開発は分かれていきます。
そして、日本企業が、生成AIで世界と戦うのであれば、特定領域だけに強い、小型の独自LLMを開発しないといけなくなります。
ですので、KDDIやELYZAを買収し、NTTは独自LLMを開発しているのですね。
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