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vol.19「目の奥が笑っていない。」について

前から、親しい友人に「目の奥が笑っていない。」とふいに言われる事がある。

別にその場がつまらない訳ではない。(そういう場面もたまにはあるが。)
シンプルに目が笑ってくれないのだ。

私は、生まれもっての超・自意識過剰人間で、
自分が周りからどういう風に見られているのか。ということに自然と意識が持っていかれてしまって、人の感情の機微に非常に敏感だ。


色んな飲み会に参加していて、思う。

この人は今、何を考えてさっきの発言をしたのだろう。
あ、この人はこういうことを言われるのが嫌いで、
こういうことを言うと喜ぶのかなぁ…。
なんて事に一番の興味と関心があるからこそ、悲しくなるほど生きづらい。

自分がこのコミュニティの中でどんな立ち振る舞いをしていれば、違和感なく溶け込んでいられるか、
毎日、試されているような気がしてなんだか疲れる。

そんな人間が、一つのコミュニティでプカプカひとりだけ浮かぶことがないようにするには、ひたすら必死に、平泳ぎの動作で下へ下へ、沈んでいくほかない。
そんなやつが決死の思いで取り繕った笑いに光は宿らない。
これが恐らく「目の奥が笑っていない。」の答えになるのだろう。


昔からモノや人との会話を俯瞰で見る癖がある私は、
例えば飲み会に参加すると、

(今日の飲み会は人数が多くて、ガヤガヤしていてちょっとやりにくいなぁ。)

(今日の飲み会はだるい絡みをする奴が多くて、受け身の姿勢で構えておく他ないなぁ。)とか、

早い段階で自分の中でのジャッジが始まってしまって、どこか集中していない。

自分の瞳の奥深くにいる生き物はとにかく他人のギャグやジョークに笑わない。笑ってくれない。
それは自分の生まれながらにして出来てしまったジャッジ気質にあるのではないかと、ふと思った。



およそ一年前、知り合いに呼び出され、とある飲み会に参加した。

歌舞伎町のレンタルスペースに10人~20人くらいはいたと思う。
マンションの一室ということもあってか、狭い居室でまず最初に思ったのは、

(こんな狭い居室に密になって大丈夫なのかなぁ…)

(人が多くてガヤガヤしてて、居心地がよくないなぁ…)

(奥の居室で人目もはばからず大声で笑っているアイツとは関わりたくない!みっともない!)

他にも思うところはあるが、まずそんなことを思う。(普段からこういう事ばかりではなく、その時は特別、そう思った。)

その時点で若干気は乗らないけど、誘われた手前もあるし、とにかく出会いを求めて、ビール片手に果敢に人と喋る。

自己紹介する。

仕事の身の上話をする。
相手を褒める。
自分の趣味の話をする。

自己紹介する。

人数も多いからか、人の流れも激しく、同じ流れの繰り返しに
心の中で(あー疲れる!)と叫ぶ。
ため息が口から漏れそうになって、一旦トイレに逃げる。
(今日は格別につまらないなぁ。)が口から漏れそうになるのをおさえて
結局、居室の隅っこにある椅子に座って、しっぽり飲むというところに落ち着いてしまう。

そんな自分の不器用さ加減にあきれながらも、
同じく隅っこで少人数で喋っているグループを見つけ、その輪の中に入ろうと試みる。
その中にいた肌の黒いチリチリパーマの男が
ビジュアル面で相当気になって、喋りかけてみる。

「ハーフですか?」
そうそう!俺の親、ガーナ人なんだ!

「ガーナ⁉︎ガーナってどこよ?」反射的に驚きと質問が飛び出ていた。

そこから会話はエンドレスで進んでいき、
彼の飄々とした性格と、ミステリアスな気風が自分の中ですごく引っかかって、相手の仕事の話や趣味の話に自然と移る。

そうすると、彼も自分がやっているハウスメーカーの営業と関わりの深い職種であったり、
彼の趣味が「洞窟巡り」というニッチな一面が発覚して盛り上がり、どんどん彼への興味が湧いてきて、質問が止まらなくなる。


私には分かる。この瞬間こそが"目に光を宿す瞬間"なのだ。
他人の不思議な価値観に触れ、
もしくは自分との意外な共通項に触れ、
目の前の人物がどういう人なのか、心の底から気になる瞬間。

自分にはない部分・価値観をその人から探求しようと試みる好奇心は、
少なくともその飲み会の中にいた人の中で一番大きかったと思う。

その人とは、いまだに休みが合えばたまに二人で洞窟巡りをしたり、
お酒を飲んで、あーだこーだ喋る気兼ねない友達だ。

こういうことがたまにあるから、人との集まりはいつまで経ってもやめられない。

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話は逸れたが、「目の奥が笑っていない。」と他人から言われてしまうのは自分のそういう余計なジャッジ気質からくるものであって、
そういう風に、人に余計な気を遣わせてしまっている事を大変情けなく思う。

知らない所で色んな人を傷つけてしまう場面が沢山あるんだろうなと、常々思う。
その正体は、自意識過剰な自分が自己防衛をするために生まれてしまった弱さが全部生み出している。

でも先ほど挙げたような、人とのバチっとくる出会い・円滑な人間関係を望むのであれば、
自分のその気質(アンテナ)を大いに信用してフル活用してみるのも一つ手だと思う。

自分の人生に1ミリでも関与しなさそうな人と
自己紹介→身の上話→趣味の話→LINE交換
の永遠ループを無駄に繰り返すヒマは自分にはない。

もう30代はすぐそこ。

休みの日の自分磨きも、出会いの場を設けるのも、何一つ怠ってはいけないと感じる。
そんな自分の忙しなさが解消されるまで、
私の瞳はずっと笑わないと思っていてください(笑)

私のともだち達よ、今までと同様に、しばらくご迷惑おかけします。
いつまでもお付き合い頂けると嬉しいな。
我儘かな?

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