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大学院の経験によって、本当に大変な仕事でも乗り切れたこと|田村薬品工業 植田侑希さん

学生にうちに研究に没頭することが社会人になってから大いに役立つことを奈良先端科学技術大学院大学(以下、奈良先端大)での植田さんご自身の経験から伝えられています。また、現在の職場はとても楽しく、やりがいを持って仕事をされているという印象も強く受けました。どのように就職活動で苦労を乗り越えて入社に至ったのか、大学院の研究生活において、どんな経験が社会に出て役に立つのかを含めて、詳しくお話を伺いました。

植田 侑希
奈良先端科学技術大学院大学では、細胞老化に関する研究に取り組む。博士前期課程修了後、田村薬品工業株式会社に入社。入社後、新入社員研修期間を経て、固形製剤の開発を担当。

内定までの経緯と入社の決め手

就活はM1の12月頃から始めていたと思います。最初は業界も絞らずに、食品、化粧品、化学、医薬品も含めて、BtoBもBtoCも手当たり次第、色々と見ていった中で、段々と業界を絞り、近畿圏中心に化粧品と医薬品業界の研究職か品質管理で迷っていました。そして、弊社の人事担当と話をする機会をいただき、ご縁があり、夏頃に内定が出ました。最終的な決め手としては、実際に開発や品質管理、工場を見学し、普段どんな風に業務されているかを見させていただいて、やりたい仕事ができる会社だと判断して、入社に至りました。

苦労していた時期を脱出するためにやったこと

就活が解禁になった瞬間は、エントリーシートを大量に書きますが、そこが一番苦労していました。テンプレートはあっても、会社に合わせて、ホームページを見て企業研究をして、その会社風にアレンジしていくことに時間を使っていました。それをしながら研究を進めていたので、夕方頃までラボにいて、その後に就活の準備をしていましたね。

そして、最初は自力でずっと書いていましたが、途中からは大学のキャリア支援室に行くようになって、文章の添削や個別相談などのサポートをしていただき、ようやく波に乗ってきた感じになりました。

入社してから現在までのキャリア変遷

2019年の4月に新卒で入社させていただいて、最初の半年は新入社員研修期間で、様々な部署に行きました。具体的には、製造部、品質管理、研究開発、営業、生産管理、購買、総務の各部署を回って、その人の適正と会社としての全体の業務を把握するための研修です。そして、半年後に、錠剤のような固形製剤を開発する研究開発部に正式に配属されました。組織編成が少しありつつも、現在まで同じ部署で固形製剤の開発業務に従事しています。

新入社員研修と今に活かされていること

元々、品質管理も希望していたので、新入社員研修を通して、品質管理も興味深いと思う部署でした。できる範囲で試験もさせていただいて、日々の業務の内容も確認、やりがいのある部署だと思いました。他に、瓶のドリンク製剤を作る製造部の部門での研修では、包装工程において、機械でラベルを瓶に直接貼りますが、最終的にノリがはみ出していたり、ラベルがめくれていたりしていないかを人が目で確認する作業があります。そこで実際にラベルの目視検査をさせていただくこともありました。

そういう経験を経て、小さいラボスケールでの試作後に、実際に工場に上げていく作業がある時は、新入社員研修の時にお世話になっていた先輩方に声をかけて、進めてさせていただいているので、あの半年がなければ、そこまでスムーズにいかなかったと思っています。そういうところは円滑にできるようにも心がけています。

雰囲気の良い職場と会社の強み

職場は和気あいあいとしていて、楽しい雰囲気という感じですね。上司はストレスを溜めていないか、何か困っていることはないかと、声をかけてくれますし、距離感はとても近いです。 

会社としては、やりたいことが見つけられる場所だと思っています。私は基本的に医療用やドラッグストアに販売している一般用の薬を開発する仕事がメインですが、健康食品や生薬の研究、産官学の共同開発、商品企画など、研究開発を一つ取っても、色々と手広いため、できることは多く、「こんなことはやりたくなかった」とはならないと思いますね。開発に限ったところでは、そこは強みですし、データもたくさんあるので、過去の検討を見るだけでも凄くて楽しいです。

製薬業界ならではのやりがいや面白さ

最終的に、製品になった時に、患者様の元に届いて治療に貢献できることはもちろんやりがいがありますし、ドラッグストアで販売しているような一般薬であれば、自分が作った薬を店頭で見られることもやりがいですね。また、製薬技術者の学会や勉強会が開催される際は、参加させていただいたり、他社の技術も聞いたりできることは楽しいですし、面白いです。

日々、大切にしていて重要な2つのこと

普段の研究結果で出てきたデータに対しては、もちろん数字は絶対にごまかさない、あるデータでトライアンドエラーをしていくことが重要です。出てきたデータに対して、実直に判断するところは常に気にしています。 

それから、コミュニケーションは絶対に重要だと思っています。もちろん、開発の中において、みんな同じようなバックグラウンドを持っている方達とのやり取りも、もちろん大事ですが、普段関わらない工場の人や社外の人に対しても、分かりやすく話す、円滑に業務を遂行できるように、日々、心がけています。

乗り越えるべき目の前の課題とこれからの目標

まだ入社5年ほどで、製薬技術者としては経験も浅いですし、知識もまだ少ないので、そういったところで、つまずいたり、ミスをしたりするので、経験を積んで知識をもっと吸収して、ミスを減らすことが、今の私の課題だと考えています。学会誌やセミナーで新しい情報、既存の基礎的な知識も含めて、情報収集をするようには努めています。 

そして、一つでも多く開発して、一つでも多く市場に出して、患者様の役に立てるようになりたいです。今は仕事が忙しいタイミングのため、もう少しオフのタイミングで色々と趣味を見つけて楽しくすることも良いかなとも思っています。弊社は仕事の外はとても自由で、定時後は帰りやすいですし、私の部署は有給も取りやすいですね。私は今度3連休をいただいて、旅行に行ってきます。

現役の奈良先端大生へのメッセージ

奈良先端大は、とにかく色々と設備も充実していますし、様々な専門の先生方がいらっしゃるので、そのリソースをフルに使って、学生のうちにしかできない研究に集中し、没頭してください。そういう没頭した先に、その研究で取り組んでいたことが、業種業界に関わらず、やっぱり社会人になってからのトライアンドエラー、そういう考え方も含めて、活かせると思います。決して無駄ではないですし、本当に一言に尽きると思いますが、研究に没頭していただいて、失敗しても良いし、学生だからできることを大事にしていただけたらと思います。

奈良先端大を目指す学生へのメッセージ

修士で卒業するのであれば、たった2年です。本当に環境が整っているので、充実した学生生活を過ごせるし、色々と知識も学べる場所です。奈良先端大に来て満足した、良い進路だったと思っています。奈良先端大に入学していただけるのであれば、ぜひ好きな研究をして、学んでいただければと思います。

奈良先端大の研究生活で印象に残っていること

研究室はアジア系の留学生の方がとても多いラボで、歓迎会や送別会以外にも、バーベキューなど、和気あいあいとした感じでしたね。コアタイム的なものはあまりなかったですが、朝から夕方頃までみんな研究していて、私も夜中まで研究していた日はそこまで多くなかったですし、あまり体に悪いことはしていなくて、健康的な研究室でした。もちろん先生方も先輩方も、試験に詰まっていたり、分からないことがあったりすれば、色々とサポートしていただきました。

奈良先端大で経験して、今も仕事で役に立っていること

現在、会社では製剤を作る開発者として、仕事をさせていただいていますが、日々、実験を行う中で、トライアンドエラーの考え方自体は奈良先端大でずっと研究していた時のトライアンドエラーとよく似たことなので、そういったところは凄く活かされています。 

また、ラボでは言葉が通じないような方達とも、コミュニケーションを取っていた経験は、社会人になって社内や社外の方と打ち合わせする時のコミュニケーションに活かしています。それに、工場の方達とお話しさせていただく機会が頻繁にありますが、そういう方達はやっぱりバックグラウンドがバラバラなため、共通認識がない方達とコミュニケーションを取る時にも経験は活かされています。

※この記事に記載した内容は取材当時の情報になり、会社名や役職名等は現在と異なる場合があります。

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