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メディアが増長する差別 - 6月15日のDearMedia NewsLetter

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日本では、メディアの編集長や上級スタッフが何かしらの問題で辞任する時は、多くの場合セクハラ関連です。
最近は告発も増えましたが、表にもあまり出ないことが多いように感じます。

一方アメリカではここ数日間で、今回のBlack Lives Matter運動に関連して、The New York Times、The Philadelphia Inquirer、BonAppetit、Refinery29などの有名メディアの編集長や創業者が相次いて辞任しました。

The New York Timesの主要コーナーである「オピニオン」の編集長は、軍出動を求める寄稿掲載をして社内から批判を受け辞任。

The Philadelphia Inquirerの編集局長は「建物の問題」という題名の記事を掲載し、黒人の死と物的損傷を同列に見ていると社内でストライキが起こり、辞任。

この2紙以外でも、BLM問題に関する報道方針や掲載された記事に対し社内で反発が起こり、トップが辞任するメディアが相次いでいます。

メディアが差別を助長することは今に始まったことではありません。
今回珍しかったことは、社内ストライキや記者が反発する発信が多く見られたことでした。

メディアによる差別というと、今年1月中旬、サセックス公爵ヘンリー王子とメーガン妃が英国王室離脱を発表した際「イギリスのメディアによる人種差別的報道が原因ではないか」といくつものメディアで報じられました。

メディアは良くも悪くも、拡声器の役割を持っています。
彼らがどのような報道をして、メディアがメディアに対してどのような批判をしているのか、まとめてみたいと思います。

【本日のピックアップニュース】

2020年1月8日、インスタグラムでサセックス公爵夫婦が「高位王族を退く」意向を投稿しました。

それを受けて翌日、The New York Timesは(まさに今回辞任した編集長の「オピニオン」のコーナーで)、「英国の黒人はなぜメーガン妃が出て行きたかったか知っている」というタイトルの記事を出します。

その中で、メーガン妃は英国のメディアからずっと差別的に報道されてきた、と証拠の記事をいくつも列挙しました。

イギリスでもっとも古いタブロイド紙『デイリー・メール』は
「ハリーの恋人は荒廃した地域出身」「エキゾチックなDNAを持っている」という記事を書き続け、

マイケル・オブ・ケント王子妃は 、あからさまな人種差別を連想させるブローチ着けて初対面の挨拶の場に向かったとNBCで報道され、

BBCのキャスターは、サセックス公爵夫婦に生まれた赤ん坊を、チンパンジーと関連づけたツイートをして解雇されました。

メーガン妃が行ってきた公務や革新的な発言なども、批難されたりテロ組織と関連付けられたりしています。
他の王妃や英国王室の報道と比べるとなぜか彼女だけが差別ともとれる報道が相次いでいました。

日本では東洋経済が、この件に関して翻訳記事を掲載しています。

英国のタブロイド紙は、記事には人種的偏見は含まれていないと述べ、夫妻の生活が公的資金で賄われている以上それを報道する権利があると主張しました。

1月9日のNYTの記事をきっかけにして、ほかのメディアも英国王室がいかに差別を行ってきたかの記事を書くようになります。

Voxはメーガン妃に対する差別から「これは政治的な意味合いもある」とし、英国首相の差別的発言や黒人議員への罵倒、英国国民の就職時の面接における人種からくる不平等さなどに言及しました。

ガーディアン紙は、メーガン妃の「否定的な見出しの記事が多い」との主張を調査し、「肯定的な見出しの2倍、否定的な見出しだった」と発表しました。

他にも、INSIDER、NBC news、AP通信、Harper's BAZAAR、The Washington Postなどで、同様の記事が相次いで掲載されました。

ハリー王子は、メーガン妃に対するタブロイド紙の記事や取材方法に対して、故ダイアナ妃と関連付けて批難しています。

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公人をどこまでどのように報道するかというのは、難しい判断をしなければいけない局面もあるのでしょう。
しかし、メーガン妃のロイヤルファミリー離脱にまつわる報道のあれこれを見ていると、私には明らかに差別的な報道と読めて、どれだけ良く解釈したとしても“常識”のアップデートが必要な記者が書いているように思えます。

メディアがその力をよく理解しているのであれば、記者が仕事上で差別行動をしてしまったら解雇される可能性がある、ということは、厳しい措置とは言えません。
それでも、一度過ちをして反省した人とそこを通過していない人のどちらが記者として適任かはは正直わかりません。

差別問題は、対等さの難しさを目の前に突きつけます。

弱いものを守るだけでは対等とは言えませんし、
同じではないものを同じとするのは嘘になりますし、
パワーバランスが違うものをそれが無いように扱うのは、正直ではありません。

自分が差別される側、する側のどちらだとしても
対等さを与えられるようになるには、相手を尊重することが第一歩となります

すべての差別は、相手を尊重できないから生まれるものですが
相手を尊重するということは、自分を尊重し承認することとイコールの行動です。

ロイヤルファミリーで起こったことが近い将来、
天皇家で起こったとしたら、私たちはどのような態度に出るでしょうか?

批判の態度に出る前に
まずは相手を尊重して、
それから自分の意見が言えるように
私も気をつけていきたいと思います。

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