傘のアザ
小学生のころ、
柑子色の傘を地面に杖のようにつきながら歩くのが好きだった。
リズム良く、
たん。ぼしゅ、たん。ぼしゅ、たん。ぼしゅ、
特に、雨水やらなんやらが通る側溝の穴にいれて歩くスピードにあわせて抜くのが大好きだった。
時々、
その穴の大きさや側溝の深さで
抜くスピードを間違えると
股を潜るはずだった柑子色の傘が上手く抜けず、
弁慶にぶち当たる。
そんなアザが沢山あった小さい頃の梅雨時。
人間とのコミュニケーションもきっと、それでさ。
タイミングよく、
さっと言って、何かをぽっと残す。
それがさりげなくうまい人は、
心にアザはなく、
タイミングをミスればミスるほど、
自分が気にするアザができる。
時々、
ムカデのように並んだ私たちの、
前の人の傘がすねにあたる。
どちらが悪い、
とも言いがたいアザができる。
赤白橡色のアザ。
雨、
スーツを着て、
満員電車に乗って、
アザを増やして帰ってくる戦士たち。
今日も、みんな。
お疲れ様、ありがとう!
そして、昨日は父の日、
心や体にアザをつくって家族を守ってくれる。
ありがとう。